【プロ野球2軍戦に静岡から新チーム参入】選手はどう集める? 将来の1軍進出の可能性は? 「ハヤテ223」への期待と課題を解説!

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「プロ野球2軍戦に静岡から新チーム参入」です。先生役は静岡新聞ニュースセンター専任部長の市川雄一です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2023年10月2日放送)

(山田)きょうは来シーズンからのプロ野球2軍戦に静岡市に本拠地を置く「ハヤテ223(ふじさん)」が参入するという話題ですね。

(市川)そうなんです。降って湧いたような話だと思われる方も多いと思いますが、静岡市のプロ野球新球団構想は、12年前、2011年に初当選した前静岡市長の田辺信宏さんが市長選の公約に掲げて当選して以来、静岡市政の重要課題の一つだったんです。

(山田)そんな前からあった話だったんですね。

(市川)静岡市は清水区を中心とした「サッカーのまち」としてのイメージが強いですが、高校野球を中心に昔から野球熱が高いとされています。

(山田)高校野球の強豪校の野球部OBが集まるとすごい話が盛り上がりますもんね。

(市川)今回は2軍のみ参加のプロ野球チームという前例のない取り組みなので、どういう仕組みなのか、少し説明しますね。

プロ野球は1958年シーズンからセ・リーグ6球団、パ・リーグ6球団の計12球団になりました。その枠組みはずっと変わっていません。営業面と育成を目的に、2軍(ファーム)のリーグもあります。遠征費も大変ですから、2軍のリーグ戦は、セ・リーグ・パ・リーグではなく地域で日本を東と西に分け、イースタンリーグとウエスタンリーグという形で試合をしています。

昔は6球団ずつだったんですが、2004年に近鉄とオリックスが合併し、楽天が新規参入するという球界再編があって以降、イースタンが7球団(楽天、巨人、西武、DeNA、日本ハム、ヤクルト、ロッテ)、ウエスタンが5球団(ソフトバンク、オリックス、広島、阪神、中日)といういびつな形になりました。

今回、2軍のリーグを2チーム増やし、ウエスタンリーグにハヤテふじさん、イースタンリーグに新潟アルビレックスベースボールクラブが参加することになりました。ちょうど、偶数の6チーム、8チームになってリーグ戦は組みやすくなりました。ハヤテは静岡市清水区の清水庵原球場を本拠地とします。

ドラフト会議には参加できず! チーム編成は入団テスト

(山田)ハヤテはどういうチームになるんですか。

(市川)プロ野球チームは、毎年10月に行われるドラフト会議でアマチュア選手を獲得し、チームづくりを進めています。このほか、他球団を戦力外となって自由契約になった選手を獲得したり、外国人を獲得したりすることもあります。あとはトレードやFA選手の獲得などもあります。

今回参加が認められた2球団はドラフト会議への参加は認められていません。つまり、プロ野球を自由契約になった選手や、ドラフトにかからなかった選手で、チームづくりをしなくてはいけないんです。

(山田)なかなかチームを作るのは難しいですね。

(市川)新潟はBCリーグという独立リーグに参加していましたから、既にチームがあります。ハヤテふじさんは、母体のチームがないため、選手獲得からチームづくりを始めなければならないんです。11月に入団テストを行うことが発表されていますが、どのくらいの選手が集まるかは未知数な部分があります。一方で、今のNPB(日本野球機構)は育成選手という制度があるので、NPBの12球団から育成枠の選手を新規チームに派遣する構想もあるようです。

(山田)逆に言えばハヤテ出身で巨人とかソフトバンクで活躍する選手が出てくる可能性もあるってことですか。

(市川)ハヤテの選手が1軍のある12球団のチームに行くにはドラフトで指名されるしかないんです。NPBに一度所属した選手を除き、移籍やトレードで阪神や巨人に行くということは認められていません。

(山田)そう思うと、NPBは特殊な組織ですね。

かつてはプロ野球16球団構想も

(市川)静岡市は田辺市長時代に新球団構想を掲げたことを最初にお話ししましたが、その後、でてきたのが、プロ野球16球団構想です。覚えている人もいるかと思いますが、2014年に自民党が地域活性化策の一環として構想を打ち出しました。

アメリカの大リーグは拡大路線をひいていて、16球団から30球団まで増やしたんですね。日本も地域に根ざしたプロ野球球団を増やせば、地域が活性化するという考えです。そのとき、例に出されたのが、静岡県、北信越、四国、沖縄県だったんですね。当時、田辺市長は「3年間の働きかけが実った」と語り、自民党にロビー活動、要望活動をしてきたことを明かしています。

しかし、この16球団構想が日の目をみることはありませんでした。プロ野球は12球団のオーナー会議が最高意思決定機関なんですが、12球団にしてみれば、球団が増えれば巨人や阪神といった人気球団との試合がその分減りますから、収益が落ちます。そうした既得権益を手放すことに反対したんですね。

ただ、プロ野球のあり方も昔とは随分変わりました。僕のこどものころは、静岡ではテレビでは巨人戦しか見られませんでした。いまは、巨人戦すら、地上波ではほとんど放送していませんよね。その代わり、お金さえ出せば、12球団、どのチームの試合もDAZNなどのネット放送で見られるようになりました。それぐらいプロ野球の置かれている環境は変化しています。

また、それぞれのチームの企業努力もあって、ヤクルトやロッテなどの試合は、いまはチケットをとることもなかなか難しいです。球団格差が縮まったといえるかもしれません。そういう流れの中、今回、2軍のみというかなり限定的ではありますが、2チームに新たな門戸が開かれることになったというわけです。

(山田)ハヤテがいつの日か、セ・リーグやパ・リーグに1軍のチームとして入っていく可能性はあるんですか?

(市川)今のところはその可能性は限りなく低いと言わざるを得ないですね。NPB側は、今後の1軍の拡大については議論にもなっていない、と明確に否定しています。一方で、この新たな2軍チームが地域活性化や、リーグ全体にメリットを与えるということが証明されれば、今後、1軍の球団が増えることがあるかもしれません。

(山田)今のところはないということですね。

本拠地の駐車場が足りない!?


(市川)ハヤテは課題も山積しています。本拠地である清水庵原球場は1万人収容できますが、駐車場が狭いんです。隣接する駐車場は200台分しかなく、第2球場に400台分のスペースを確保したとしても計600台分しかありません。

ハヤテ側は静岡から参入するのに際し、新幹線駅もあって全国的に見ればものすごい地の利があるという言い方をしたんですが、地元の人間からすると静岡駅から清水庵原球場に行くのはなかなか大変だと思いますよね。

(山田)僕もそう思いました。草薙球場じゃないんだって。

(市川)草薙球場は県営で、高校野球の聖地的な位置づけでもあるのでプロ野球の試合を多く開催するのは難しいと思います。

清水庵原球場に行くには公共交通機関はバスしかありませんが、路線バスはそこまで本数は多くありません。じゃあ、サッカーの清水エスパルスのようにシャトルバスを出すのかというと、来場者数が不透明な状況ではなかなかそうもいかないです。

ハヤテ側は駐車場の拡張や屋内練習場の整備などを静岡市に要請しているとされています。ただ、これまでこのコーナーで話してきたように、静岡市は東静岡のアリーナ、清水駅前のスタジアム、清水港の水族館と、大型ハコモノ事業を抱えてますから、今回の新球団の誕生に対して、税金で支援できるかは、難しい課題になりそうです。

(山田)なるほど。リスナーさんからは「子供の頃からプロ野球を見てきたファンからすると、静岡にプロ野球チームという言葉はすごく魅力を感じます」というメッセージもきています。応援はしていきたいですね。

(市川)応援はしたいですね。ただ、整備に関する資金の話になると難しい部分は出てくると思います。

(山田)そこが大事なポイントですね。ハヤテふじさんが今後どうなっていくのか見守っていきましょう。今日の勉強はこれでおしまい!

SBSラジオで月〜木曜日、13:00〜16:00で生放送中。「静岡生まれ・静岡育ち・静岡在住」生粋の静岡人・山田門努があなたに“新しい午後の夜明け=ゴゴボラケ”をお届けします。“今知っておくべき静岡トピックス”を学ぶコーナー「3時のドリル」は毎回午後3時から。番組公式X(旧Twitter)もチェック!

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