【Jリーガーの移籍】J2藤枝の主力選手移籍は良いニュース?悪いニュース?

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「Jリーガーの移籍」。先生役は静岡新聞運動部専任部長の寺田拓馬です。
※SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」で放送したものを編集しています。

(寺田)サッカーJ2の藤枝MYFCは、フォワードの渡辺りょう選手がJ1セレッソ大阪に、ミッドフィルダーの久保藤次郎選手がJ1名古屋に、それぞれ完全移籍すると発表しました。渡辺選手は、今季13得点を挙げていたチームの得点王、久保選手も今季5得点8アシストを記録していた中心選手でした。

山田さんは、これを良いニュースだと思いますか、悪いニュースだと思いますか?

(山田)とらえ方はいろいろあると思っています。僕は今年の4月に久保選手にインタビューしたことがあります。まだ2年目で期待もあったので、正直悲しいニュースでしたね。

(寺田)いろんな面があるよということを今日はお話したいと思います。

渡辺選手は東京出身で、学生時代に目立った実績はなかったんですが、昨季途中にJ3アスルクラロ沼津からJ3だった藤枝に加入して、J2昇格に貢献。今季まさに才能が開花しました。今季は超攻撃的的サッカーを掲げる藤枝でJ2日本人トップとなる13得点。チームの総得点が40点なので、3割以上が渡辺選手のゴールなんですよね。

久保選手は地元愛知県の中京大から藤枝に入りました。学生時代にジュビロ磐田の練習に参加したそうですが声が掛からず、J3だった藤枝に加入。1年目からレギュラーをつかみました。右ウイングバックで、スピードを武器にした突破、正確なクロスやシュートが持ち味です。今季は5得点、リーグトップの8アシストをマークしていました。

無名だった2人の選手がJ3からJ2、そしてJ1の上位チームに移籍する。まさにサクセスストーリーなんですね。

(山田)夢がありますね。

(寺田)一方、山田さんがおっしゃったように、藤枝MYFCにとっては飛車角が抜けるようなもので当然痛手です。シーズン途中で裏切られたと思うサポーターの方もいらっしゃるかもしれません。

ただ、こういうことはプロの世界では日常茶飯事です。Jリーガーって個人事業主なんですよ。Jリーグの新人選手向けの研修では、高卒でも大卒でも確定申告の講義などあります。

渡辺選手は22日の試合が藤枝でのラストゲームでした。その翌日には、もうロッカーを片付けてチームを離れました。

サッカーの世界では、30代でもプロでいられる選手はごく一握りで、たいがいは20代で見切りをつける選手が多い。他のスポーツよりも選手寿命が短くて、選手にとっては本当に1年1年が勝負なんですよね。

選手も上を目指している


(寺田)藤枝MYFCは現在10位。真ん中ぐらいで頑張っているところですが、ちょっと開幕前を思い出していただきたい。サッカーを知っている人ほど、藤枝を最下位予想する人が多かったです。

藤枝MYFCにはJ1、J2の経験がある選手ってほぼいない。前の所属先から「0円提示」を受けた選手もいて、選手の能力だけを足し算すると、最下位という予想はしょうがないかもしれません。

(山田)今10位にいるってすごいことなんですよね。

(寺田)須藤大輔監督は「弱点に目をつぶって、長所を伸ばす」ということを常に口にしています。要するに「思い切ってやってくれ」と。1回ミスしても、長所を出す姿勢があれば次も起用する。ただ、挑戦しない選手は使わない。

(山田)僕も何回か練習を見に行きましたが、須藤監督は、監督というよりも兄貴みたいな感じ。熱い男なんですよねえ。

(寺田)藤枝MYFCは、チームとしても選手を大切にする方針を示していて、「移籍先で活躍できるのであれば気持ちよく送り出す。ただ、その先のJ1で飼い殺しになるんだったら出さない」と。

(山田)良いクラブですねえ。

(寺田)今回2人の主力選手が移籍することになり、周りの選手たちに話を聞いてみたんです。どういう反応が多いと思いますか?

(山田)「もうちょっと、チームにいてくれ」っていう選手が多いでしょう。

(寺田)そういう声もあるとは思うんですけど、「悔しい」って選手が多いんですよ。要するに「先を越された」と。「自分にもそれぐらいの価値があるのに、まだ認めてもらえない」っていう悔しさ。

(山田)みんな上を目指してるんですね。

今後の好循環に期待

(寺田)結論的な部分を申し上げるとすれば、プロの選手は「自分の価値を上げること」、「チームの勝利」。2つのことを目指してるんですよね。この2つが一致してるチームは強い。

皆さんの職場でもそうじゃないかと思います。組織としての目的だけでなく、個人の目的も大事にしてくれるか。これが一緒になっている組織って強い組織。成績も上がる組織だと思うんです。

藤枝は発展途上のクラブ。選手を育てながら勝つことを目指しています。藤枝からステップアップしてJ1クラブにも行けるんだとなってくれば、どんどん新しい良い選手が来てくれる。

最近は、静岡学園高時代に全国高校サッカー選手権の優勝に貢献した、拓殖大の浅倉廉選手の来季加入が内定しました。良い循環が生まれてるんですよね。

そう考えると、渡辺選手と久保選手の移籍、まさに良いニュース。

(山田)今回の移籍で、藤枝MYFCはどうなっていくんですか?

(寺田)今後は控えだった選手にとっては大チャンスですね。チームは補強もしているので、競争が活性化します

J1クラブに移籍する渡辺選手、久保選手にとってもここからが勝負。1年後に「行かなければよかった」なんていうふうに悪いニュースになってほしくないですね。

(山田)今後の活躍を期待したいですね。今日の勉強はこれでおしまい!
シズサカ シズサカ

SBSラジオで月〜木曜日、13:00〜16:00で生放送中。「静岡生まれ・静岡育ち・静岡在住」生粋の静岡人・山田門努があなたに“新しい午後の夜明け=ゴゴボラケ”をお届けします。“今知っておくべき静岡トピックス”を学ぶコーナー「3時のドリル」は毎回午後3時から。番組公式X(旧Twitter)もチェック!

あなたにおすすめの記事

人気記事ランキング

ライターから記事を探す

エリアの記事を探す

stat_1