【藤枝MYFC 昇格1年目の挑戦】戦前の予想覆す“12位”!現場、フロント、サポーターの一体感がJ2に新風吹き込んだ!

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「藤枝MYFC J2昇格1年目の挑戦」です。先生役は静岡新聞運動部専任部長の寺田拓馬、聞き手はSBSアナウンサーの滝澤悠希です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2023年11月23日放送)

(寺田)Jリーグ2部の藤枝MYFCが12位で今季を終えました。超攻撃的エンターテインメントサッカーを掲げる須藤監督の下、チームが結束。困難を乗り越え、難しいとされる初昇格1年目で残留を果たしました。今日は今季の戦いの軌跡を振り返ります。

(滝澤)私個人の感覚で言うと、須藤監督の存在感がすごく大きかった。須藤監督はどんな監督ですか。

(寺田)情熱家で、かつ理論もしっかりある。自分の言葉で選手を鼓舞しながらチームを引っ張っていける指揮官。

(滝澤)J2初めてのシーズンを12位で終えたというのは、お見事と言っていいですか。

(寺田)チームはプレーオフ圏の6位以内を目指していましたが、客観的に見れば大健闘と言えると思います。

シーズン前、ネット上でサッカー解説者や専門誌の14人が今季の成績を予想したページがありました。藤枝に対する予想はどれぐらいだったと思いますか。

14人中11人が、藤枝を21位か22位と予想。つまり十中八九、J3に降格するという予想でした。ちなみに優勝予想で一番多かったのは清水エスパルスで10人。ジュビロ磐田の昇格を当てたのは14人中6人でした。

藤枝の予想については、J3で戦った選手をベースに今季開幕に臨んだので、仕方がない部分はあります。サッカーに詳しい人たちが藤枝の降格を予想したのは無理もない。実際に藤枝の選手に話を聞いても「J3の時と比べて、J2は相対する選手の能力が高くて、1試合の疲労度が違った」と話していました。

今季の失点数を見ると、藤枝はリーグワーストの72点でした。全部で42試合ありましたから、1試合平均で1.7点以上。降格してもおかしくなかったんですけどね。

下馬評覆し、残留できたのは…


この藤枝がなぜ残留できたのか。先に結論を言うと、やっぱり現場、フロント、サポーターの一体感。これに尽きると思います。超攻撃的エンターテインメントサッカーという須藤監督の理想のもとで、みんなが同じ方向を向いていた。シーズン途中には空中分解しかけた時期があったんですが、この信頼関係は崩れなかった。

サッカーは個々の選手の能力を単純に足して高い方が必ずしも勝つってことじゃない。1+1が2にも3にもなるところが面白さだと思います。

(滝澤)チームが勝てない、どうしようという苦しい時期もあったのに、崩れなかったんですね。

相手に研究され、飛車角を引き抜かれ…

(寺田)今季をざっと振り返ると、開幕2連勝、4月には3連勝もあって、ゴールデンウイーク前までの12試合だと、6位でプレーオフ圏にいました。

前年から同じスタイルを継続してきたので、戦術の成熟度が高く、チームの一体感もすでに出来上がっていた。ただ、その後はJ2のレベルが高い上に戦い方を研究され、弱点を突かれると勝てなくなってきました。

藤枝の強みは前線からボールを奪いにいくハイプレスと、キーパーも含めて最終ラインからボールをつなぐビルドアップでした。ところがハイプレスがはまらなくなってきて、体力を消耗して、ビルドアップのミスを狙われて失点する。こういうケースが目立ってきちゃった。

5月中旬のアウエー清水戦は0対5。前半の早い時間に先制を許し、立て直せずに立て続けに失点。こういう試合がほかにもありました。それでも点を取られたら取り返す攻撃的スタイルを貫いて中位を保っていたんですが、夏の移籍期間にチームに激震が走った。

チームの得点王だったフォワードの渡辺選手、アシスト王だったミッドフィルダー久保選手がそれぞれJ1のセレッソ大阪と名古屋にシーズン途中で引き抜かれ、移籍しちゃったんですね。主将で攻守の要だったミッドフィルダー杉田選手は今季絶望のケガで長期離脱。将棋でいえば、飛車角に金も欠くような状況に陥りました。

7月からは8戦勝ちなし、4連敗。一度どん底まで、この時は17位まで落ちてしまい残留争いがちらついたんですね。

「ここから新しい競争が始まる」


この窮地からどうやって脱出したか。要因の一つはチーム内の競争力を高めて、新たに獲得した5人の新戦力を融合させたことでした。

一つ幸運だったのは、新戦力5人中4人をスタメンに入れた8月下旬のホーム群馬戦が試合直前の雷雨で中止になったこと。藤枝の戦術は独特なので、シーズン途中で加入した選手がすぐに馴染めるわけではない。翌日、同じメンバーで紅白戦をやったら連係がバラバラで、サブ組に惨敗してしまいました。

ただ、新加入選手をいきなり使おうとしたことには、「ここから新しい競争が始まる」という指揮官のメッセージが込められていました。ここから、元からいた選手の目の色が変わったんですね。

ここに最終節のスタメンがあります。開幕戦と比べて、11人中7人が入れ替わっている。こんなに変わることも珍しいと思います。

ちなみに8月下旬に中止になった群馬戦は、10月中旬に行われて藤枝が5対1で勝ちました。開幕当初の戦力では多分降格圏だったと思いますが、1年かけて成長し、まさにチームが生まれ変わったからこそ残留できたんだと思います。

(滝澤)なぜ藤枝がこの結果を残せたのかが伝わってきました。寺田さんによると、ほかにも残留できた要因はあるとのこと。続きは次回に。今日の勉強はこれでおしまい!
シズサカ シズサカ

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