フラメンコのギターデュオ徳永兄弟、7月5日に静岡県内初公演!超絶技巧と編曲の妙を聴いてほしい

7月5日、静岡音楽館AOIで静岡県内初公演を行うフラメンコのギターデュオ「徳永兄弟」。フラメンコギタリストの父、フラメンコダンサーの母の間に生まれた健太郎と康次郎の兄弟は、それぞれ本場スペインで腕を磨き、2012年から2人のユニットで活動を続ける。昨年秋に出したメジャーデビューアルバム(自主制作も含めるとオリジナルアルバムは4作目)や、フラメンコギターに特有の奏法を聞いた。
(教育文化部・橋爪充/写真部・久保田竜平)

新作「NEO FRAMENCO」は、彼らの父武昭の曲を二人がアレンジした「ブレリア・デ・パドレ」で幕を開け、手拍子とステップがたたみかけるアストル・ピアソラの「リベルタンゴ」、パーカッションが強調されたサンバの名曲「トリステーザ」、チック・コリアのジャズ曲を彼らなりに解釈した「スペイン」、おなじみの「コーヒールンバ」と続く。

康次郎:フラメンコってリズムが特徴的なんですよ。皆さんの知っている曲を通した時に、それがどう聴こえるか。

健太郎:われわれが持つフラメンコフィルターを通して、他のジャンルの音楽がどう変化していくのか。

康次郎:広く知られている曲のイメージがまずあることが重要。(それをカバーすることによって)フラメンコとは何かが理解されやすい。

健太郎:トラディショナルな(フラメンコの)曲をやるより、曲とかメロディーがあらかじめ分かっている曲の方が伝わりやすいと思ったんです。「フラメンコってこういうものか」ってね。

サンバやオペラを「フラメンコの土俵に」

健太郎


アルバムにはスティング「シェイプ・オブ・マイ・ハート」やオペラ「カルメン」なども収録。多くの人の耳に親しみがある曲をあえて収録しているが、フラメンコへの編曲は難しそうだ。


康次郎:これまでもアニメソングや童謡をアレンジしてきました。シンプルな物を複雑に、超絶にする編曲でした。でも、今回は完成された楽曲のカバーだったから、複雑なリズムに当てはめるという手法が使えない。変にカバーするとチープになってしまう。正直、かなりびびっていました。

健太郎:他の音楽に触れたことがなかったからね。フラメンコだけを追求してきたから。今回は全て「勉強」から始まりました。

康次郎:とにかくチープにならないように。楽曲をフラメンコの土俵に持ってきて、まずはフラメンコのリズムを引用する。ギターの奏法もフラメンコ曲として弾く。いつもより時間をかけて、慎重に編曲しましたね。

進化形フラメンコ「アンダルシア」

康次郎


アルバムの中程に置いた「アンダルシア」は彼ら二人のオリジナル。オープンチューニングの開放弦の響きが美しい。主従の関係が読み取れない自在なフレーズの受け渡し、超絶技巧の小気味いいソロワーク、音の塊が押し寄せる和音のストローク-。フラメンコが絶え間なく進化している音楽であることを、はっきり示す楽曲だ。

康次郎:(フラメンコの)「ブレリア」という曲種にそもそも規則性がないんですよ。それをそのまんまやっている。

健太郎:フラメンコって、スタンダード曲がなくて。「ブレリア」で言えば、リズムなどの大枠が決まっているけれど、ある程度のルールの中で何を弾いてもいい。キー、スピードは何でもいい。もともとギターは踊りの伴奏楽器なんですが、そんな中でもギタリストが一人で弾く瞬間があるんですよ。それをファルセータと言います。「アンダルシア」はそのファルセータの集合体ですね。

「きれいな音を出していればいいというものではない」 

ギターがパーカッション的に鳴っている。弦へのアタックが強い。意識して弾いているのだろうか。

康次郎:弦をたたく奏法がありますからね。上から、下から。クラシックギターだと、ある弦が上の弦に当たることはないと思いますが、フラメンコの場合はそういう音も入っている。親指を思いっきり落としてパワーで弾くということもある。

健太郎:きれいな音を出していればいいというものではないんです。ビリつきも必要。そもそも、ギターの弦高が低いんです。クラシックギターより薄いし。バチンという音もフラメンコではいい音とされるんです。

瞬間接着剤が欠かせないのは…


繊細かつ豪快な演奏で重要なのが手の爪だという。

健太郎:すぐ割れます。僕は水に強い瞬間接着剤を常に用意している。釣り用なんですよ、この接着剤。ほとんどギタリストが買っているんじゃないかな(笑)。スペインから日本に来た人は、釣具店で箱買いしていく。

康次郎:向こう(スペイン)のギター店で売っていましたよ。5ユーロぐらいで転売している。カポタストや弦の横に、釣り用の接着剤が置いてある。

健太郎:あれが廃番になったりしたら、本当に困る。ギターをやめなきゃならないかもしれない。

康次郎:爪に関してはやすりで最適な長さを探っていますね。伸びるので、最適が分からなくなる。「きょう、めっちゃいい」みたいな日があれば、「よくないな」という日もある。

健太郎:爪ってね。伸びるんですよ(笑)。だから毎日感覚が違う。ピックで弾くのとはそこが違う。

(奏法の多くは指の腹より爪を使う?)

健太郎:腹に当てるけれど、爪の音も同時に鳴る。

康次郎:だから難しいんです。指に偏るとよくない。でも爪の音が出すぎてもよくない。爪が強すぎるとバチバチした音になる。

健太郎:爪が長い方が引っかかるので、音量は出るんです。でも速弾きはしにくくなる。

康次郎:一方で、指の音が強すぎると、フラメンコならではの歯切れが悪くなる。

健太郎:音量が出ない。

康次郎:難しいんですよね。爪の長さって。

<DATA>
徳永兄弟 フラメンコギターデュオ アコースティック・コンサート NEO FLAMENCO
会場:静岡音楽館AOI 8階ホール
開催日:2023年7月5日(水)
開催時間:18:30開演(18:00開場)
料金:全席指定 5,000円(税込)
チケット:コンビニエンスストア、蔦屋書店 静岡本店ほか

静岡県内の音楽、美術、文学、演劇、パフォーミングアーツなど、さまざまな表現活動を追いかけます。教育分野の動きもフォロー。最新情報は公式X(旧Twitter)で。

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