暮らしに関わる「物流の2024年問題」

今回は、「物流の2024年問題」について、物流分野を中心にコンサルティング活動へ従事され、中小企業大学校でトラック運送業向けの指導もされている、物流コンサルタントでサプライチェーン・ロジスティクス研究所 代表の久保田精一さんに、SBSアナウンサーの牧野克彦がお話をうかがいました。
※2023年4月17日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。

ドライバーの過度な残業時間を改善

牧野:「物流の2024年問題」について教えて下さい。

久保田:ドライバーの残業時間を減らそうという規制強化の問題です。以前からドライバーの残業時間が非常に長いことが問題でした。そこで2024年4月から残業時間を減らす取り組みが行われます。働ける時間が減りますので、運べる物の数も当然減ります。そのため「企業が物を運べない」という物流危機が懸念されています。

牧野:規制に違反すると、罰則があるのですか。

久保田:過労運転に繋がるような長時間労働をドライバーにさせた場合には、トラック運送業者に行政処分が科される場合があります。悪質な場合には、トラック運送業の許認可を取り消されるなど厳しい処分が科せられます。

牧野:現場からは、どのような声が聞こえてきますか。

久保田:みなさん非常に課題だと思っていますが、トラック運送業者だけでは対応できません。

牧野:周辺業界の理解も必要になってきますね。長時間労働だけでなく、物流業界には様々な課題があるようですね。

久保田:トラック会社に聞くと、人手不足の問題が挙げられます。給料が必ずしも相対的に高いわけではありません。また若い人の車離れが進み、免許の取得率は下がっています。そのため若い人が集まりにくいところも問題点です。

物流業界の対応は

写真提供:久保田精一さん


牧野:現状、物流業界では、どういう対応をしようとしているんですか。

久保田:事例としては2つあげます。

1つ目は、トラックを大型車に変えていこうという取り組みです。例えば、今まで10トン車で運んでいたものを、大型トレーラーに入れ替えることで、だいたい1.6倍の荷物を運べるようになります。そうすることで、ドライバーが4割減っても大丈夫になります。

2つ目は、長距離輸送の中間地点に、中継輸送の拠点を設ける取り組みです。1人のドライバーで運転するのではなく、リレー方式で乗り継いでいったり、バトン方式で荷物を渡していったりして、各人の労働時間を減らします。

私たちの生活にどんな影響があるのか

牧野:今後、私たちの生活には、どういった影響が出てきそうですか。

久保田:通販など一般の家庭への配送の持続可能性が懸念されています。いろいろ高度なサービスが提供されていますが、その維持が難しくなっています。また配送料金の値上がりは確実だと思います。

牧野:通販の中には無料配送をうたっているところもありますが、難しくなりそうですね。今後、私たちにできる対応はありますか。

久保田:再配達をなるべく減らしていくための取り組みを行政もやっています。ぜひ消費者には、なるべく再配達が多くならないように「配達時間の指定」「宅配ボックスの配置」などをしてもらえると、ドライバーの負担は減ると思います。

牧野:できることは積極的にやっていきます。最後にリスナーのみなさんへメッセージをお願いします。

久保田:日々のこの便利な生活は、ドライバーの働きがあって支えられているものですので、ぜひご協力ください。運賃も多少値上がりになると思いますが、そちらもご理解ください。

牧野:どうもありがとうございました。
今回、お話をうかがったのは……久保田精一さん
1971年生まれ。熊本県生まれ。物流分野を中心にコンサルティング活動に従事。著書として、「物流コストの算定・管理」のすべて(創成社刊、共著)ほか。城西大学非常勤講師のほか、中小企業大学校でトラック運送業向けの指導にも当たる。日本物流学会正会員。

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