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今こそ読んでほしい!感動の実話絵本『戦争をやめた人たち ~1914年のクリスマス休戦~』

100年前の戦場であった奇跡のような実話

今回は、ぜひ家族で読んでほしい絵本を紹介したいと思います。タイトルは『戦争をやめた人たち ~1914年のクリスマス休戦~』、あすなろ書房から5月に発売されました。この絵本の作者、下田市在住の絵本作家の鈴木まもるさんに、SBSアナウンサー牧野克彦がお話をうかがいました。
※2022年6月7日にSBSラジオ、IPPOで放送したものを再編集しています。
戦争をやめた人たち

今こそ読んでほしい

牧野:昨年の8月に「親子で読んでほしい絵本大賞」を受賞した『あるヘラジカの物語』という作品をIPPOでも紹介させていただきました。鈴木さんは、現在下田市にお住まいで「鳥の巣研究家」としても、展示会や講演会などの活動をされていらっしゃいます。

鈴木さんの根本にあるのは、生き物がたくさん出てきて心あたたまるような作品が多いんですが、今回は戦争をテーマにされたんですか?

鈴木:生きものにとって、命は一番大事なはずなのに、世の中には戦争というものがあります。その現実をふまえた上で、命の延長線上にある戦争を扱った絵本をかきたい!でも戦争をテーマにした絵本というと、過去に経験された人が悲惨な体験を絵本にすることが多く、戦後生まれの自分にはかけないと思っていたんです。一方で「戦争反対、平和大切」といった絵本もありますが、そういったものでもなく、自分らしい内容の絵本をかきたいなと思っていました。

ちょうど昨年の夏に、100年前の第一次世界大戦時に起こった「クリスマス休戦」の史実を知り、これはいい話だなと思いました。そして、自然に絵本の絵が浮かんできて、うまく1冊にまとまりました。

牧野:みなさんにもイメージしていただけるように、私が物語の一部を朗読させていただきます。

物語は、イギリス軍の兵士たちが一日中続いたドイツ軍との戦いの後、疲れ果て、塹壕で休んでいるシーンからになります。

「うん? なんだ?」そのとき、若い兵士は、
なにか、人の声が、きこえたような気がしました。

「なにかきこえる。なんの音だろう」
若い兵士は、ざんごうから顔を出しました。

それは、むこうのドイツ軍のざんごうからきこえる歌声でした。
ドイツ語なので、なんといっているのか、わかりません。
でも、そのメロディはわかります。
クリスマスの歌、「きよし このよる」です。
ドイツ軍のざんごうを見ると、たきびのまわりで、
ドイツ軍の兵士が歌っているようです。

「きょうは12月24日、クリスマス・イブなんだね」
「そうだったな。ドイツにもクリスマスがあるんだな」

「こっちも、歌おうか」
「いいのか? そんなことして」

「かまうもんか」
若い兵士は、空にむかって歌いはじめました。
「きーよーし こーのよーる……」

「ほーしはー ひーかーりー……」 
ひげの兵士も、まわりの兵士たちも歌いはじめ、
声は、しだいに大きくなっていきました。

ドイツ軍のほうも、こちらが歌っているのがわかったようで、
パチパチと、はくしゅの音がきこえてきました。
つぎに「もろびと こぞりて」を、ドイツ軍が歌いはじめました。
若い兵士たちは、はくしゅをして、じぶんたちも歌いはじめました。
言葉はちがいますが、おなじメロディーなので、いっしょに歌えます。
声は大きくなり、おわると、はくしゅも大きくなっていきました。
こんどは「みつかい うたいて」を、若い兵士が歌いはじめ、
みなが歌いだすと、ドイツがわから、ドイツ語の「みつかい うたいて」が
きこえてきました。

両方のざんごうから、くらい夜空に、いろいろなクリスマスの歌がながれていきました……。       


戦争というのはニュースで100人、1000人が亡くなったというような伝え方をされますが、この本を読んでみて、ひとりの人間を感じた瞬間にまったく見方が変わってくると思いました。

鈴木:朗読していただいた内容のあと、さらにイギリス軍とドイツ軍にすごいことが起きて、その一日が終わります。それは絵本を読んでのお楽しみなんですが、国や言葉を越えて感じられることというのがあり、そういうことを感じあえれば、お互い同じ人間だとわかって、戦争よりも大切なものがあるとわかる。そうなると、その人たちはもうそのあと戦争ができなくなるんです。100年前のことなんですが、今に通じることだと思うし、一番大事なものは何かを教えてくれるんじゃないかと思います。

牧野:想像力があれば戦争はなくなるのかなという気がしました。戦場や兵士などの描き方では、どんなことを意識されたんですか?

鈴木:いつも絵具で描くことが多いので、今回も絵具で描き始めたのですが、どこか生々しいような感じがしてしまいました。ちょっと違うと思い色えんぴつで描いてみたらしっくりきたので、最終的に色えんぴつで描きました。

牧野:子どもたちが読んでも怖い!という印象にはならずに、すごく温かみを感じるような作品になっていますね。 

鈴木:子どもたちは好きなものを何度も見ると思うんです。自分が好きなものは何か、自分て何?というのを確認しているんだと。怖いものはあまり見ないと思います。本は何度も、見て、楽しめて、心の中で育っていく良さがあると思うので、そういう形で伝わればいいなと思います。

牧野:鈴木さんはこの絵本を通してどのようなことを伝えたかったんですか?

鈴木:国や言葉などいろいろ違いがあっても、同じ生き物だと。それがわかるのは、自分が好きなことをやり続けること。歌を歌う、スポーツをする、食事をするとか、何気ないことをやっていくことが自分らしく生きることにつながって、想像力と創造力の両方が育って、戦争をしない人につながるのではないかと思います。

牧野:すごいことが起きるとおっしゃった部分を読んだら、戦争にも生活と繋がっている部分があるなと感じました。戦争というと、ものすごく遠くにあるものという気がしていましたが、この絵本を読んで、戦っている人たちも私たちと同じ人間なんだと感じ、子どもたちに読ませたときにもすごく伝わりやすいなと思いました。

鈴木:今の世の中につながることだと思うんです。例えば、なぜ歌を歌うのか、なぜサッカーをするのかなども含めて、自分たちがどういう風に生きていくのがいいのかを教えてくれる話なんじゃないかなと思います。

牧野:今の生活にも繋がる話なので、ぜひ一読してみて下さい。また、鳥の巣研究家としての一面もお持ちの鈴木さんですが、そちらの活動はいかがですか?

鈴木:今年は、栃木県の方で展覧会をやったり、7月になると鳥の巣が恐竜絶滅に関わっていたという新しい絵本もできる予定です。

牧野:鳥と恐竜は何か関係があるのですか?

鈴木:ものすごく関係があります。恐竜は絶滅して、恐竜から進化した鳥は生き残っている。その理由が「鳥の巣を作る」という全く新しい解釈なんです。きっとすごく面白いし、お子さんでもわかるようにかいたので、こちらも読んでいただければと思います。
今回、お話をうかがったのは……鈴木まもるさん
1952年、東京都生まれ。赤い鳥さし絵賞、講談社出版文化賞【絵本賞】、産経児童出版文化賞【JR賞】など数々の賞を受賞。2021年3月、『あるヘラジカの物語』(あすなろ書房)で第2回親子で読んでほしい絵本大賞を受賞。主な絵本作品に『ピン・ポン・バス』『がんばれ!パトカー』(偕成社(かいせいしゃ))、『せんろはつづく』『つみきでとんとん』(金の星社)などがある。下田市在住。

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