戦後80年…静岡市の書店員が選んだ「親子で読みたい絵本」3選!平和の尊さを伝える感動の実話と写真絵本【店長さーん!お薦めの本、教えてください】


静岡新聞社出版部のアッキーこと秋田です。8月に入り、暑い日が続きますね。

8月15日は「終戦の日」です。今年は太平洋戦争終戦から80年の節目の年になります。この夏、お子さんやお孫さんと一緒に「戦争と平和」について考える時間を設けてみてはいかがでしょうか?

今回の「書店員さーん!お薦めの本、教えてください」は、平和のありがたみを感じながらお子さんやお孫さんと一緒に読んでもらいたいお薦めの絵本3冊と、恒例の子育て世代に是非読んでもらいたい1冊を、谷島屋パルシェ店の井澤真以子さんに教えていただきました。※価格は税込

「一郎くんの写真 日章旗の持ち主をさがして」 木原育子(文)、沢野ひとし(絵)、福音館書店

A4変判 40頁 1430円

【ストーリー】
80年前、日本はアメリカと戦争をしました。2014年、アメリカで「一郎君へ」と書かれた日章旗が見つかります。こうした日章旗は兵隊に行く人のお守り代わりに、周囲の人たちが日の丸の旗に名前を寄せ書きしたもの。戦場に残された旗をアメリカ兵が持ち帰り、遺品として出てくることが多いのです。その日章旗に書かれた59人の名前を手がかりに、「一郎くん」がどんな人だったのかを探るため、新聞記者(作者)が静岡の町を走り回ります。

【井澤さんのお薦めポイント】
作者の熱心な取材によって、日章旗の持ち主は静岡市の一郎君であることが分かりました。日章旗に名前を書いた人を訪ね、話を聞いていくと、私たち読者も当時のことをだんだんと知ることができます。旗には、「戦地で無事でいられるように」と見送る人たちの願いが込められていることや旗がお守りになるように寄せ書きがされていること。戦地へ出征することは国の役に立てるめでたい日であり、万歳をして見送りをすること。そして、国のために死ぬことが当たり前と考えられていたこと。

今では考えられないようなことがこの当時は起きていたのだと知ることとなり、これが戦争というものだと知らされます。

アメリカで発見された一枚の旗は、新聞記者へつながり、静岡の町を通して持ち主の一郎君とお母さんにつながりました。そして絵本になった今、私たち書店員が、たくさんの方へお届けし、平和な未来を目指す子供たちへとつなげていきたいと思います。

「字のないはがき」 向田邦子(原作)、角田光代(文)、西加奈子(絵)、小学館

A4変型 32頁 1650円

【ストーリー】
戦争が激しくなると、幼い子供たちは、家族と離れ少しでも安全な場所へ疎開をしなくてはいけませんでした。ちいさな妹が疎開するとき、父は「元気な日ははがきに『〇』を書いてポストへいれなさい」と、たくさんのはがきを渡しました。ちいさな妹が書いた『〇』は、しだいに小さくなっていき、とうとう『×』が書かれたはがきが届きます。

脚本家、エッセイスト、直木賞作家である故・向田邦子の作品の中でもとりわけ愛され続ける名作「字のない葉書」(『眠る盃』所収、1979年講談社)が原作。戦争中の、向田さん一家のちいさな妹と、いつも怖いお父さんのエピソードを綴った感動の実話です。向田邦子さんのちいさな妹・和子さんが主人公。

【井澤さんのお薦めポイント】
まだ自分で字を書くこともできない幼い子が、毎日辛く苦しい生活を送っていることが伝わってきます。大好きな家族に会えず、さびしい暮らしをしなければならなかったこの時代の子供たちの苦しみや、愛しいわが子を遠くへ手放さなければいけなかった家族の辛い気持ちは、今の時代を生きる子供たちにも想像できる絵本ではないでしょうか。

「さがしています」 アーサー・ビナード(作)、岡倉禎志 (写真)、童心社

B5判 32頁 1540円

【ストーリー】
「おはよう」「がんばれ」「いただきます」「いってきます」「ただいま」「あそぼ」、その言葉を交わすことができる、みんなの生活は、どこへいったのか?

1945年8月6日の朝、ウランの核分裂が広島で引き起こしたことは、どこまで広がるのか?

ピカドンを体験したカタリベたちは、「さがしています」─たいせつな人びとを、未来につづく道を。ヒロシマから今をみつめる写真絵本。

【井澤さんのお薦めポイント】
8時15分で止まったままの時計。焼け焦げた靴、帽子、めがね、お弁当箱。そして、誰かが座っていただろうと想像できる階段に残る黒い影…。この写真の中の「もの」たちは、8月6日の朝、持ち主を失いました。遺された「もの」たちから当時の様子が語られ、原爆による被害が写真を通して伝わってきます。写真とともに、子供たちにも伝わりやすいやわらかな言葉で語られているので、当時のことが子供たちの心に深く染みわたるような絵本ではないかと思います。

恒例!今月の「子育て世代にお薦めの1冊」は?

続いて本コラム恒例!子育て真っ只中の世代にぜひ手に取ってほしい、店長お薦めの本を紹介してもらいました。

「生活図鑑 『生きる力』を楽しくみがく」 おち とよこ(文)、平野 恵理子 (絵)、福音館書店

B6判 384頁 1760円

【ストーリー】
このシリーズも7冊目。手順などを描いたカット数の多さではシリーズ屈指、知識よりもその手順を見せることを念頭に置いた本作りで、読みやすさ、分かりやすさを第一に考えています。子どもたちばかりでなく、一人暮らしを始めようとする人、家事が苦手な人にも役立つガイブックです。

【井澤さんのお薦めポイント】
料理、洗濯、掃除に加え、防犯対策なども取り上げた、私たちの毎日の暮らしの教科書のような本です。

目次から、何気なく気になっているページを探してみてください。もしかしたら今困っていることが解決するヒントが書かれているページに出会うかもしれません。

ちょっとした合間にこの本を開いてみてください。みんなの生活がいつもよりちょっぴり心地よいものになるかもしれません。家族みんなの手が届くところに常備しておくのはいかがでしょうか。

今回紹介してくれた井澤真以子さん

<DATA>
■谷島屋パルシェ店
静岡市葵区黒金町49 パルシェ5階
電話:054-204-5505
X:https://x.com/parche_yajimaya

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