科学と人間じっくり考察

 中学校3年生の理科学習の締めくくりとして、自然と人間の関係・科学技術の在り方について学び、持続可能な社会について考える単元が設けられています。中学校3年生から高等学校の生徒たちは、社会に対する関心が高まり、大人と同じように自分と社会の関わりを見ることができるようになっています。理科の知識をどのように社会に役立てるべきかを考える機会をつくると、学習に広がりが出てきます。新聞を使った展開例を考えてみます。
 まず、「自然のめぐみ」「自然災害」「くらしを支える科学技術」「エネルギー資源」「環境問題」のいずれかに関連する新聞記事のスクラップの課題を出します。授業の進度に応じて課題をひとつに絞ってもよいでしょう。課題を限定してしまうと該当する記事を探せなくなってしまうこともありますので、複数の課題の中から選択させるよう柔軟性を持たせると良いようです。
 夏休みの課題でも良いでしょうし、生徒に新聞を持参させたり学校にある1カ月以上たった、回収に出す前の古い新聞を使って授業内で取り組んでも良いと思います。
 あらかじめ、教師が複数のスクラップ例を用意しておき、提示した方が、生徒の作業はスムーズに進むと思います。
 次に、スクラップ記事を読み込みます。図のようなワークシート(以下「記事シート」と呼びます)を用意し、記事の概要を記入させます。分からない言葉や興味を持った言葉に線を引き、調べさせましょう。
 作業が終わったら、各生徒の感想とともに記事を紹介させます。小グループ内で順番に発表させたり、クラスの代表1~2人に発表させるなど授業計画の時間配分により工夫します。
 さらに、生徒がスクラップした記事シートを集めて、「自然災害」「エネルギー資源」などの小テーマごとに分類します。これらを模造紙や画用紙に貼り付けて壁新聞を作ります。壁新聞のタイトルをつけ、シートの隙間に生徒の感想を色紙に書いて追加して貼り付けたり絵を描くのが得意な生徒がいれば感想をイラストで表現させても良いと思います。作品は、教室や廊下に掲示して、しばらく皆に見てもらいます。
 これらの作業には少々時間が必要です。しかし、その過程で、生徒たちが感じたり考えたりすることがきっと深まっていくと思います。ひととおり作業を終えたところで、あらためて、科学と人間生活について考え、話し合い、文章にして投書欄に投稿してみてはいかがでしょうか。
 科学と人間生活の関わりについて考えることは、今後ますます大切になっていくことでしょう。新聞には、関連する記事が連日多く掲載されています。この課題に向き合い、じっくり読んで考える経験は、将来、子どもたちが社会に出るときの準備にもなります。中学校3年生でなくとも、内容を子どもたちの発達段階に応じて工夫し、小学校から高等学校までのあらゆる段階の授業で取り上げることが可能だと思います。
(吉川契子/静岡中央高)
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 【図表】イラスト=壁新聞