2011年12月25日(日)付 朝刊
新聞にはさまざまな地域の人々のさまざまな出来事が、ワンサカと掲載されている。これらの事象を、自分とは無関係な他人事だと思って読んではいないだろうか。
この軽く読み流してしまう閲覧方法は、実は国語の小説問題対策としては最悪の読文スタイルだ。何故ならば小説問題とはスナワチ、登場人物の心理とその変容を把握することに本質がある。人数は3人以下、会話の前後で各人の心理状態が変化する場面が、出題に好都合として狙われるだろう。その際、喜怒哀楽の心情語そのものが問題になることはあり得ない。つまり、周辺表現から人物の心理を推理し、変遷を把握することが読解ということになる。すると、必然的にその処方箋としては語彙[ごい]を獲得しつつ、常日頃から、人はどのような心理状況の際にどう表現されるのか。この書かれ方のときはこの心象風景になる、という法則性を想定しつつ、文章を読む練習をしていかなければならない。これを筆者は「共感力の育て読み」と称している。
特に小説では、登場人物の周囲の状況描写はその人間の心理を表している場合が多い。故に、いつも「このような時、この人物の心理状態は如何[いか]なるものなのか?」という想像をしながら読む訓練が必要である。新聞に掲載されているさまざまな人間模様の全てについて、当事者や関係者の身になって、つまり感情移入をしながら読んでみよう。他人の感情を想像しながら読む力こそが「共感力」なのであり、このような心理分析こそが、小説を味わう醍醐味[だいごみ]でもあるのだ。
(静岡市立高・実石克巳)