一緒にNIE

県内アドバイザー講座
=天文現象工夫して紹介

2014年01月19日(日)付 朝刊


 明治43年5月4日付の静岡民友新聞には、「ハレー(ハレー彗星)見ゆ」の見出しがあります。新聞の天文関連記事は明治時代からあり、天文雑誌よりも親しみやすい文章表現が用いられており、子どもたちには理解しやすいと思います。現代の子どもたちの多くも、星に興味を持っています。授業で天文記事を紹介し、学習への関心・意欲を高めたいものです。
 昨年、本欄で、ロシアのチェリャビンスク州への隕石[いんせき]落下(2013年2月15日)を報じる新聞記事を取り上げました。その後、日本の大学も含む国際研究チームにより、隕石について分析が行われ、新たな事実が明らかになりました(記事①)。

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 自然現象が人々の暮らしに影響を与えるとき、まず、人や建物への被害、交通への影響、その時点でわかる科学メカニズムも掲載されます。詳細な分析結果は後日、記事になることがあります。毎日、新聞を開いていないとこのような興味深い記事を見逃してしまうことがあります。記事の内容を生徒に紹介してみましょう。

 隕石は最大で秒速19・1キロ(時速6万8760キロ)、音速の56倍の超高速で落下し、隕石の直径はわずか19・8メートルと小さいものの、放出エネルギーは広島型原爆の30倍、直下では太陽の30倍の明るさだったことが分かりました。日本の探査機はやぶさが地球に持ち帰った小惑星「イトカワ」と化学成分が同じで、小惑星帯がふるさとであることも解明されました。
 小惑星は高校地学基礎の学習内容ですから、教科書を開いて復習すると良いでしょう。探査機はやぶさのニュースは生徒の関心も高く、当時、小惑星も話題になりました。その時は、自分たちの生活とかけ離れた天体である、と感じていたと思います。ところが、小惑星のかけらが地球に飛んできて大きな影響を与えたのですから、人ごとではありません。
 「秒速19・1キロ」の速さを実感するために、ひと工夫。生徒は体力テストで50メートル走のタイムを測ることがあるので、その時の秒速を計算してみます。秒速7~5メートルの範囲でしょう。教室内で、「5メートル」を巻き尺で確認し、「秒速5メートル」で走る風景を思い描いてもらいます。次に、学校と最寄りの、生徒がよく知る目標物までの距離を紹介します。例えば静岡中央高校と、学校から見える日本平山頂付近との間の距離が約8キロです。隕石は、その2倍以上の距離をわずか1秒間で通過した、と説明します。現地の人たちは、一瞬の出来事にどんなに驚いただろう、と問いかけます。
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記事の内容を身近に感じさせたところで次の記事を提示(記事②)。危険な隕石落下の回避対策を国際協力する構想が国連総会で承認されたのです。科学者はさまざまな面で国際協力することがあると、生徒に紹介します。費用面などの課題はありますが、今後の展開に注目したいところです。
 自然は不思議に満ちています。生徒たちが、そのことに魅力を感じ、自然を直接観察して、新しい発見がたくさんある1年になるよう、願っています。

(吉川契子/静岡中央高)
 (「アドバイザー講座」は隔週掲載します)