NIE関連記事

大震災教材、NIEに意義 課題や悩み、活発論議-徳島で学会

2011年12月25日(日)付 朝刊


 学校で新聞を生かすNIE(教育に新聞を)を研究する日本NIE学会第8回大会がこのほど、徳島県鳴門市で開かれた。新聞活用の充実を掲げた新学習指導要領が小学校で今春から完全実施。中学、高校も来春以降順次、実施されるため活発な論議が広がった。

 中でも注目を集めたのは東日本大震災を取り上げた授業。起きたばかりの大災害を教材にすることにこそNIEの意義がある、と教員や研究者が意見を交わした。
 「NIEの新たな展開に向けて」と題したシンポジウムで、神奈川県横須賀市立田戸小の臼井淑子教諭は「新聞の向こう側にはいろんな他者がいる。理解することで力が付く」と強調。教科書への登場で「これからさまざまな実践が出てくるだろう」と期待した。
 なぜ新聞を使うのかを問い続けてきたという東京の私立吉祥女子中・高の黒川孝広教諭は「教科書に限界を感じたときに新聞を使う。新聞には刺激がある」と話した。
 立命館大の柳沢伸司教授(ジャーナリズム論)は「現在起きている出来事を教室に持ち込むことに意味がある。ただそこに難しさもある」と課題を指摘した。
 会場からは「震災を教えることは避けて通れない」といった発言が相次いだ。被災地の復興や原発事故、防災の取り組みをどう扱えばいいかを悩む声も聞かれた。
 柳沢教授は、震災を報じる紙面は写真や図表が多用され、ビジュアル化しているとして「教室に張り出すだけでも効果がある」と提案。臼井教諭は「被災地の子どもと協力して生きる道を学ぶことが大切。正解のないことから逃げず、自分で考える。新聞を通じて前向きに生きる力を付けてほしい」と話した。

               ◇……………………◇

 【日本NIE学会】
 新聞を活用した教育を発展させようと2005年に発足した。研究活動や会報発行、大会の開催などをしている。会長は小原友行広島大教授。小中高校の教員や報道関係者も参加している。