
静岡県西部の山あいで、空き家の解消に取り組む女性を取材しました。空き家の持ち主や活用を望む人に寄り添い、町の姿が少しずつ変わっています。
浜松市天竜区水窪町です。人口は現在約1500人で7割が65歳以上の高齢者。町には空き家が点在します。ここで50年営業する「スーパーまきうち」の牧内真美社長(35)は、店の経営を担う傍ら、約3年前から町の空き家の解消に取り組んでいます。
<スーパーまきうち 牧内真美さん>
「付いた」
この家は持ち主が町の外に引っ越し、約7年前から無人の状態です。
<牧内さん>
「持ち主は、この家を手放したいと言っている方なので、合う方をいま探している。田舎に来る人って古民家を求めてくる人が多いから。水窪って『ザ・古民家』みたいな物は意外と少なくて。できる限り両者にとって良かったなって条件でマッチするために連絡したりしてますね」
真美さんは、これまでに10軒の空き家の持ち主を見つけて、無償で家の管理を請け負ったり、借り手を探したりしています。藤枝市出身の真美さんは、20歳で夫・基さんと結婚。基さんの実家水窪での生活は、16年目を迎えました。
<牧内さん>
「住人のあったかさというか。(水窪が)本当に大好きです。ここで生まれ育った方たちが大したことないって思っていることを私は宝だと思っていて。おうちもそう」
真美さんの取り組みは、町に新しい風を吹き込んでいます。浜松に住む建築士の澤井一慶さんは、2023年に引き継いだ空き家を自ら改修して、飲食店を開きます。
<澤井一慶さん>
「『この空き家いいな』って言ったら(真美さんが)『欲しいですか?(持ち主に)聞いてみますよ!』。そこからとんとん拍子だったよね」
<牧内さん>
「その言葉待ってた!って思ったよね」
<澤井さん>
「完全なる熱意だよね。真美ちゃんの」
澤井さんの店は、2025年4月にオープン。多くの住民が訪れました。
<住民>
「おいしい」
<住民>
「どうしても高齢者とかが多くて、なかなか新しいことが始まりにくい所なので。こうやって何か新しいことが始まるっていうことがうれしい」
<住民>
「ほっとくとなくなっちゃうからね、水窪」
<住民>
「何かやらなければなくなっちゃう」
町の外に引っ越した元の持ち主の姿もありました。
<横村雄司さん>
「直接自分たちの手は離れてはいるけど、主なところはしっかり残っているから。新しい形で発展的につながっていくというのは、すごくうれしいですよ」
<牧内さん>
「きょう来ていた人たちが『なんかすごく水窪変わりそうだね』みたいに言ってて、そうやって思ってくれるような空気感が流れているんだって思うとうれしいなって思うよね」
地域の課題を解決し、町を次の世代につなぎます。

<社会部 野田栞里記者>
全国でも、空き家の数は増加の一途で、2023年に900万戸と過去最多を更新しています。空き家は、周りの衛生環境の悪化など、さまざまなトラブルの原因になります。その一方で、移住を希望する人の受け皿になるなど、町を形づくる大切な一部とも考えられると取材を通して気が付きました。