
「カメムシが多いのは2年連続。飛来を防ぐ有効な対策はなく、手の施しようがなかった」。全国有数のミカン産地、浜松市浜名区三ケ日町で20年以上栽培に取り組む山崎仁也さん(45)は、今期をこう振り返る。
山崎さんの畑では、23年シーズンもカメムシ被害が多発し、全体の収穫量は約2割減った。今期は畑の見回りを増やして警戒を強めたが、早生(わせ)ミカンの収穫量は平年を大きく下回った。山崎さんは「カメムシをより多くの園地で見かけ、数も増えていた。防除を優先せざるを得ず、摘果作業が遅れたのも痛かった」と嘆く。
県病害虫防除所の24年8~10月の調査によると、発生数の目安となる予察灯で誘殺した果樹カメムシ類の数は、平年比10・7倍に上った。暖冬による越冬に加え、カメムシの餌となるヒノキの球果が多かったことが増加の要因とみられる。
収量減の影響は量販店や消費者にも及んだ。3月上旬の遠鉄ストア三ケ日店(同町)に並んだ県産温州ミカンの「濃蜜青島」や「西浦みかん寿太郎」、中晩柑類のせとかなどは、小売価格が卸売単価の高騰を受けて例年より1割以上高かった。
売り場を訪れた60代主婦は「毎年知り合いからもらうミカンが少なかったので、農家は大変だったはず」と気遣いながらも、「全体的にいつもより(価格が)高くなかなか手が出せない」と本音を漏らした。高値で販売数量が伸び悩む中、同店の古瀬勉店長は「お客さまに納得して選んでもらえるよう、試食販売を強化しておいしさを伝えていく」と話した。
JAなど指導機関は、貯蔵中の腐敗が少ない県の新品種「春しずか」への改植を農家に促すなどし、対策を急ぐ。経済連の担当者は「改植支援や営農指導を通じて、環境変化に強い栽培環境の整備を進めていきたい」と話す。
■静岡県病害虫防除所が注意報 今年も大量発生の恐れ
ミカン農家を悩ますカメムシが今年も大量発生する恐れがある。県病害虫防除所は28日、2~3月に県内20地点で行った調査で、果樹カメムシ類の越冬成虫数が過去10年で最多だったことを受け、発生予察注意報を発表した。
越冬成虫数は平年の2.9倍に上った。特に中西部地域での発生が多かった。越冬したカメムシは4~8月にかけて果樹園に飛来し、花や果実に被害を及ぼすという。県担当者は「農地で少数でも発生を確認したら、直ちに薬剤防除を行ってほしい」と呼びかけている。