
札幌に活躍の場を求めた長谷川竜也
新シーズンに向けたキャンプが本格化してきているJリーグ。2年ぶりにJ1で戦うジュビロ磐田や悲願のJ1昇格を目指す清水エスパルスなど、静岡県にホームタウンのあるクラブの動向も気になるが、今回は新天地で活躍が期待される静岡県勢の選手たちをピックアップする。
<新天地に移籍した主な静岡県勢>
長谷川竜也(横浜FC→北海道コンサドーレ札幌)
袴田裕太郎(大宮アルディージャ→東京ヴェルディ)
青嶋佑弥(栃木SC→ ジェフ千葉)
薩川淳貴(鹿児島ユナイテッド→大分トリニータ)
村松航太(ギラヴァンツ北九州→ブラウブリッツ秋田)
河井陽介(ファジアーノ岡山→カターレ富山)
三木直土(福島ユナイテッド→ガイナーレ鳥取)
札幌加入の長谷川竜也(静岡学園高校出身) “ミシャ式”に早くもフィット

静岡学園高校時代の長谷川竜也
第一に注目したいのが長谷川竜也だ。沼津市の出身で、中学、高校と静岡学園でスキルを磨いた気鋭のアタッカーだ。順天堂大学から川崎フロンターレに加入すると、2年目の2017年にクラブ初のタイトルとなるJ1優勝に貢献した。6年間の在籍で、4度のリーグ優勝、さらにルヴァンカップと天皇杯の優勝も経験している。
その後、長谷川は横浜FC、東京ヴェルディでプレーしており、2022年にはJ2のベスト11にも輝いていた。そんな長谷川が、シーズン中に30歳の誕生日を迎える今年の活躍場所として選んだのが、攻撃的なサッカーの信望者として知られる”ミシャ”こと、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督が率いる札幌だ。
「やりたいサッカーは外から観て分かってたし、僕も横浜FCでヨモさん(札幌でコーチを経験した四方田修平監督)から、こんなサッカーをやってたよというのを聞いていた。戦術的な理解ではそこまで時間はかからないかなと思います」
そう語っていた長谷川はなるほど、トレーニングを見ていても素早く札幌の環境に溶け込んで、攻守両面で激しく流動する”ミシャ式”とも呼ばれるスタイルにフィットしている。
3−4−2−1の”2”に当たるシャドーが、新天地での長谷川の定位置になりそうだ。かつてはドリブル突破が武器だった長谷川だが、年輪を重ねる中で、どちらかというと少ないタッチで”守備のポケット”に潜り込むプレーが強みになっている。
長谷川も、シャドーは従来のメーンポジションだったウイングよりもドリブルの機会が少なく、そのかわり瞬間的な動き出しで、周りの味方からパスを引き出したりする動きが鍵になることを認める。
「シャドーってそんなにドリブルをガーっとする時間がそれほどあるわけではないので、良いポジションを取ってターンして、前の選手にボールを供給したり、決定的なパスを出したり、チャンスメークしたりするところが大事になってくる」。そうした役回りを理解した上で長谷川がどういった輝きを見せていくのか楽しみだ。
東京V加入の袴田裕太郎(浜松開誠館高校出身)はJ1で輝けるか
大宮時代の袴田裕太郎
袴田裕太郎は静岡県の浜松市で生まれ育ち、中学時代はジュビロ磐田の下部組織で学び、浜松開誠館でプレー。同期には松原后がいる。明治大学から横浜FCでプロのキャリアをスタートすると、メキメキと頭角を現して、2022年には念願のジュビロ磐田に加入した。
しかし、当時の伊藤彰監督のもと、なかなか出番を得られず、夏には大宮に期限付き移籍した。昨年は大宮に完全移籍して飛躍を誓ったが、無念のJ3降格を経験。
しかし、非凡な能力を認められて、J1に昇格したヴェルディに”個人昇格”を果たした。組織的な守備から素早い攻撃を目指す城福浩監督から信頼を勝ち取ることができるか。
J2千葉加入で守護神の座を争うのは…
袴田と同じ浜松開誠館の出身であるGKの青嶋佑弥は、ジュビロ磐田の前身であるヤマハや清水エスパルスでプレーした青嶋文明氏を父に持つ。明治大学からJ2の栃木SCに加入したが、リーグ戦で出番を得ることはできなかった。しかし、才能が認められる形で、同じJ2ながら伝統のあるジェフ千葉に期限付き移籍した。「J1昇格のために、強い覚悟と責任感を持ち、熱いプレーで皆様にいち早く認めていただけるように精一杯、毎日のトレーニングから頑張りたい」と語る。
栃木でポジションを争ったパリ五輪世代の藤田和樹がそのままライバルになるが、新天地で守護神の座を勝ち取り、悲願の昇格に導くことができるか。
元エスパルス河井陽介はJ3富山へ
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清水時代の河井陽介
そのほか、富士宮市のFC芝川で育ち、静岡学園でスキルを磨いた左利きのDF薩川淳貴が、J2に昇格した鹿児島ユナイテッドから大分トリニータに活躍の場を求めた。
清水エスパルスのアカデミー育ちであるDF村松航太はV・ファーレン長崎から期限付き移籍していた、J3のギラヴァンツ北九州でのパフォーマンスが認められて、堅守速攻のスタイルで知られるブラウブルリッツ秋田でさらなる飛躍を目指す。
藤枝市の出身で、清水エスパルスに10シーズン在籍した”レジェンド”であるMF河井陽介も、ファジアーノ岡山での2年間のプレーを終えて、J3のカターレ富山に移籍した。34歳になったが、「自分の経験や力をチームに還元できるように日々努力します」と語る河井が富山をJ2昇格に導けるか注目される。
また三重県の生まれだが、磐田の下部組織育ちで、藤枝MYFCに在籍していたFW三木直土は福島ユナイテッドへの半年間の期限付き移籍を終えて、ガイナーレ鳥取に完全移籍した。磐田、藤枝、福島に続く4クラブ目となるが、まだ22歳。鳥取の地から大いに羽ばたいて、また静岡のクラブに舞い戻ってくることを願いたい。
<河治良幸>
タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。 サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。著書は「ジャイアントキリングはキセキじゃない」(東邦出版)「勝負のスイッチ」(白夜書房)「解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る」(内外出版社)など。