J1残留を超えてトップハーフへ。清水エスパルスで期待される新戦力、そして現有戦力の奮起

サッカージャーナリスト河治良幸


【サッカージャーナリスト・河治良幸】
清水エスパルスは3シーズンぶりとなるJ1の舞台で、26試合を終えて8勝7分11敗の勝ち点31。現在13位となっている。前節1-3で敗れた、現在18位の横浜F・マリノスとは勝ち点7差。昇格クラブとして最低限の目標となるJ1残留は見えてきているものの、まだ予断は許さない状況だ。

その一方で10位のファジアーノ岡山からも勝ち点5しか離されておらず、反町康治GMも掲げる“トップハーフ”入りのチャンスは十分に残されている。週末のアビスパ福岡戦をはじめとした、残るリーグ戦12試合でチームを浮上に導くキーマンは誰なのか。

やはり、まず期待したいのが夏の移籍期間に加入した新戦力の選手たちだ。清水は7月に“カルロス”ことFW髙橋利樹を完全移籍で獲得。早くも2試合にスタメン起用されており、秋葉忠宏監督の評価の高さが伝わる。守備では高い位置からプレッシャーをかけ、プレスバックでもハードワークを見せられる。攻撃では幅広いポストワークからゴール前に飛び込んでいくダイナミックさは大きな強みだ。

秋葉監督も認めるように、北川航也にも長いシーズンの疲れが出ていると見られる中で、髙橋の存在は大きい。ただ、ここまで2試合でシュートは3本。広島戦では嶋本悠大から受けたボールを決めきれないなど、新天地での初ゴールは記録できていない。これまで横浜FCや浦和レッズでも課題としてきた決定力のところはここから示していく必要はある。

一方で、ここ2試合リーグ戦でスタメンを外れている北川はマリノス戦で0-3から後半45分に、意地の一発を決めた。これでシーズン9得点目となり、2018年に13得点を挙げて以来のJ1二桁得点が目前となった。そのマリノス戦は後半からの投入で、短い時間ながら髙橋と2トップを組んだ。37歳の乾貴士のフル稼働が難しくなっている状況で、この2トップは有効なオプションだろう。秋葉監督は4バックだと守備に問題が出やすく、3バックだと攻撃に物足りなさが出やすい現状を問題視するが、どちらの形でも2トップは可能だ。

新戦力に話を戻すと、8月に加入したばかりのパナマ代表FWアルフレド・ステファンスも、マリノス戦の終盤に、髙橋に代わり初めてJリーグのピッチに立った。181センチと外国人FWとしては特別大柄ではないが、身体能力が高く、背後に飛び出す動きを得意としている。まだ新しい環境になれる最中と見られるが、守備に対する要求が厳しい秋葉監督が、この時点で公式戦に起用しているように、真面目なキャラクターが伝わってくる。

やはりドウグラス・タンキが契約解除となり、前線にパワーが必要になる中でステファンスは躍進のキーマンになってくるはず。ただ、ここに来てブルガリア人FWのアフメド・アフメドフが3ヶ月ぶりに、全体練習に復帰した。これまで9試合で得点は無いが、離脱前の柏レイソル戦では2本の惜しいシュートを放っており、タイミングの悪い怪我だった。おそらくフィジカル、フィーリング、コンビネーションともに、すぐ試合復帰とはいかないだろうが、前線でバトルできるタイプのFWだけに、終盤戦で心強い存在になってくるのではないか。

もう一人、期待の新戦力となるのが、湘南ベルマーレから加入したセンターバックのキム・ミンテだ。韓国出身だが、ベガルタ仙台でプロデビュー。これまで鹿島アントラーズなど、Jリーグでプレーし続けており、来日10年を過ぎた。清水の加入会見も全て日本語で対応しており、ディフェンスの統率面でもコミュニケーションに不安はない。

どちらかと言えば3バックの経験が長いものの、対人戦に自信を持っており、4バックでも安定した守備を見せてくれるだろう。さらにビルドアップやロングフィードで、清水の攻撃にプラス効果を与えられるか注目したい。もちろん、住吉ジェラニレシーンや蓮川壮大など、これまで主力として支えてきたディフェンス陣の選手たちにも、良い危機感を与える存在になりそうだ。

現有戦力は上記の北川に加えて、やはり山原怜音の奮起に期待したい。鹿児島キャンプでは練習試合でゲームキャプテンを務めるなど、今シーズンにかける意欲が感じられたが、第5節のガンバ大阪戦で足を捻り、そこから本人が想定していたより長引く形で復帰に1ヶ月半を要した。そこから試合には出ているものの“これぞ山原”というパフォーマンスがなかなか見られていない。

しかし、チームが1-3と敗れた中で前節のマリノス戦で、途中出場から北川にクロスを合わせて、今シーズン初となるアシストを記録した。3バックと4バックを使い分けるチームで、本来の本職である左サイドバックだけでなく、左右のウイングバックなどもこなすが、ゴールに直結するキックを多く繰り出すためにも、守備のタスクをこなしながら、新戦力も含めた周りの選手たちとの関係をさらに構築していきたい。

そのほか、ここに来てボランチでの出場時間が増えている18歳の嶋本悠大など、若手の突き上げが夏場やシーズン終盤戦にもたらすエネルギーは間違いなく大きい。ここから良い意味で驚きを与えるような選手の活躍が、清水をさらに引き上げていくはずだ。
シズサカ シズサカ

タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。

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