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これが世界一!日本一!静岡県勢の受賞~食の分野 2023年まとめ~

 この1年、さまざまな分野で静岡県内の企業、団体、個人が活躍し、それぞれ高い評価を得てきました。中には世界一、世界トップクラスや、また、日本一というものがありました。素晴らしい栄誉に輝いた功績を改めて称えるとともに、この1年を振り返ってみます。ここでは「食」に関連するものの一部をまとめました。

全国茶品評会「大臣賞」 深蒸し煎茶の部に山東茶業組合(掛川)、普通煎茶4キロの部に小沢晃さん(静岡)

 福岡県八女市で開かれた第77回全国茶品評会(全国茶生産団体連合会など主催)の最終日の25日、審査結果が発表され、静岡県勢は普通煎茶4キロの部で静岡本山茶の小沢晃さん(静岡市葵区)、深蒸し煎茶の部で山東茶業組合(掛川市)が各部門最高位の農林水産大臣賞を獲得した。

 小沢さんは初の受賞、山東茶業組合は2年連続の栄誉に輝いた。県勢の2部門受賞も2年連続となった。冬場の温暖な気候を受けて進んだ生育が、4月以降の冷え込みで一転鈍化し、記録的な減産となった2023年産シーズンだったが、施肥などの対策を徹底した本県生産者の技量が光る結果となった。
 入賞者が多い成績優秀な自治体に贈られる「産地賞」は、普通煎茶4キロの部で川根本町が3年ぶり、深蒸し煎茶の部で掛川市が4年連続でそれぞれ受賞した。普通煎茶4キロと深蒸し煎茶の2部門は、県勢が1等1席から同等3席の入選を独占した。
 17都府県から8部門に計832点が出品された。このうち本県は6部門に計155点を出品し、22日から4日間にわたり審査が行われた。表彰式は10月28日、八女市で開催される「第77回全国お茶まつり」の記念式典で行われる。  深蒸し煎茶の部 山東茶業組合(掛川市) 「今年も」団結力強め連覇
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大臣賞受賞を喜ぶ山東茶業組合の伊藤智章代表理事(左)ら=25日午後、掛川市東山

 世界農業遺産に登録されている「静岡の茶草場農法」を多くの農家が採用する掛川市東山の山東茶業組合は、全国茶品評会で2年連続7回目の農水大臣賞に輝いた。大切にしていることは茶工場の人間関係といい、「今年も大臣賞を取りたい」と共通の目標を持って強めた団結力が連覇を手繰り寄せた。
 受賞の一報を聞き、「ほっとしたよ」と話すのは、同組合の伊藤智章代表理事(55)。「一緒に地域の茶産業を盛り上げよう」と、別の品評会で大臣賞を連続受賞している同地域の茶商と話していたという。
 出品茶は14人の組合員全員の畑から葉を持ち寄って製造し、伊藤代表理事の名前で出品した。今年の茶葉はもんでみるとつぶれやすかったため、工場長がふかし具合などを調整して対応したという。30~40代の若手のもみ手も貢献した。伊藤代表理事は「来年も頑張りたい」と意気込みを語った。   普通煎茶4キロの部 小沢晃さん(静岡市) 初の栄冠 産地に感謝
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大臣賞の受賞を喜ぶ小沢晃さん=25日午後、静岡市葵区有東木

 「いつかは取りたいと思い続けてきた賞だった」。安倍川のせせらぎが響く静岡市葵区有東木の山あいの茶畑で、小沢晃さん(69)は初の農水大臣賞受賞の喜びをかみしめた。
 茶栽培を始めて約半世紀。林業とワサビ栽培の傍ら、ひたむきに茶と向き合ってきた。「本山茶の歴史と文化を受け継ぎたい」と、手もみ茶の製造にも注力してきた。
 「今回の受賞はこの茶園と出合ったことが大きい」と語る小沢さん。7年ほど前、栽培放棄地となっていた茶園を買い取り、自らが理想とする茶作りを追い求めてきた。
 標高約500メートルの傾斜地に立ち、朝晩の寒暖差と霧が多い環境をどう生かすか。試行錯誤を重ね、茶葉の変化に応じた施肥に自信が付いてきた。小沢さんは「大臣賞が本山茶の活性化の後押しになれば一番うれしい」と未来を見据える。
(経済部・垣内健吾)
〈2023.8.26 あなたの静岡新聞〉

「一度は取ってみたかった賞をまさに『ワンチーム』で手にすることができた」 小沢晃さん(静岡市葵区)
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第77回全国茶品評会の普通煎茶4キロの部で農林水産大臣賞を受賞した 小沢晃さん(静岡市葵区)

 本山茶の産地として知られる静岡市葵区有東木で、茶栽培に取り組み約半世紀。8月に福岡県で開かれた全国茶品評会(全品)で、最高賞の農林水産大臣賞を初受賞した。69歳。
 -受賞の喜びを。
 「茶を作るものとして、一度は取ってみたい賞だった。これまで普通煎茶4キロの部では、1等5席が最高順位だったが、念願がかなった。また、地元JAの職員も摘採や製茶で非常に熱心に協力してくれた。彼らの後押しがあり、まさに『ワンチーム』で手にした賞だと思っている」
 -栽培の工夫は。
 「出品茶は7年前に放任茶園になりそうだった畑を借り受けて作ったもの。この茶園が放置されていくのはもったいないと思い、栽培に乗り出した。徐々に畑の状態が分かるようになり、特に今期は必要な時に適当な施肥ができた。毎年やることは変わらないが、こつこつ地道に続けてきたことが結果につながった」
 -本山茶の魅力と産地の課題は。
 「山あいの、霧が濃く朝晩の気温差がある土地が滋味深い茶を育む。気品がある茶とも評される。ただそうした栽培環境のため、大型の機械での収穫が難しい。近年では後継者不足が深刻になり、離農する人も年々増えてきている。こうした問題は農家だけで解決できない。JAや行政を含めて、茶のまち静岡を存続させるための知恵を絞りたい」
 -今後の抱負を。
 「受賞で自分の栽培に自信がついた。今年も昨年と同じような茶園の状態を保っており、次回の全品でも大臣賞を取りたい。仕事ができなくなるまでお茶と向き合うつもりだ」
(経済部・垣内健吾)
〈2023.11.18 あなたの静岡新聞〉

袋井発スパークリングティー 世界が称賛 「乾杯」を変える

 しずおか生まれのスパークリングティー(発泡性茶飲料)が世界から絶賛された。開発したのは、袋井市の茶業関係者らでつくる晩茶研究会。茶の新たな可能性の発掘を目指して試行錯誤を重ね、乳酸発酵茶を原料とした「bodhi(ボーディー)」を生み出した。「このノンアルコール飲料は世界の『乾杯』を変えられる」―。審査員からの賛辞に押され8月下旬、シンガポールで開かれた「にっぽんの宝物 世界大会2023」の「日本と海外の融合部門」でグランプリに輝いた。

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世界大会で披露されたスパークリングティー「bodhi(ボーディー)」

晩茶研究会にグランプリ「可能性示せた」
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世界大会グランプリ受賞の報告に訪れた晩茶研究会メンバーら=9月上旬、袋井市役所

 晩茶研究会が活動を始めたのは2019年。安間製茶(袋井市)の安間孝介さん(44)、池田園(同市)の池田佳正さん(51)、長峰製茶(焼津市)の多々良高行さん(51)が中心となって新しい茶商品の開発を続け、ついに、世界の料理人らに認められる「ボーディー」にたどり着いた。
 ボーディーは袋井市豊沢の茶を天然乳酸発酵した後発酵茶「菩提(ぼだい)酸茶」のノンアルコール炭酸飲料。健康効果が期待できる茶の特性はそのまま、華やかな香りと爽やかな酸味が楽しめる。世界大会に向け、香りを保ちつつ晩茶の渋みは抑え、幅広い国、世代で楽しんでもらえるように改良を重ねてきた。
 日本各地の優れた食品を世界に発信するため4年ぶりに開催された「にっぽんの宝物 世界大会」には、業界改革部門、最新スイーツ部門など5部門に、19~22年度に国内で開催された全国大会で優秀な成績を残した計19組26社が出場。シンガポールを中心に海外の著名なシェフ、レストランオーナー、起業家ら計18人が審査した。晩茶研究会は法多山などで撮影した動画でボーディーの魅力を表現し、付け合わせにチーズとおかかのもなかや、クラウンメロンを使用したカクテルの案を紹介。「健康的でいろんな食べ物と相性が良い」「世界に通じる将来性がある」と評価され、グランプリを受賞した。
 安間さんらは9月上旬、袋井市役所を訪ね、大場規之市長に受賞を報告した。大場市長は「伝統的な茶から、まったく新しいトレンドを世界に生み出した。これからも改良を重ねてほしい」と激励。安間さんは「茶の需要が落ち込む中で海外から高評価を受け、茶にまだまだ可能性があることを示すことができた」と喜びをかみしめた。
(袋井支局・北井寛人)
〈2023.9.18 あなたの静岡新聞〉

反射炉ビヤ ケルシュビール部門で世界の頂点 「伝統と革新を表現」

 伊豆の国市中の醸造所「反射炉ビヤ」が作るビール「ニューワールドケルシュ」が、本年度世界一のビールを決める大会「ワールド・ビア・アワード」のケルシュビール部門で最高金賞を受賞した。同醸造所が今年初めて生産した新作で、山田隼平醸造長(30)は「反射炉ビヤの『伝統と革新』を表現できた」と自信をのぞかせる。

醸造所「反射炉ビヤ」で生産している「ニューワールドケルシュ」を勧める山田醸造長=伊豆の国市内
醸造所「反射炉ビヤ」で生産している「ニューワールドケルシュ」を勧める山田醸造長=伊豆の国市内
 同ビールは同醸造所の季節限定ビールで、「ケルシュ」はドイツのケルン地方で伝統的に醸造されているビールのスタイルのこと。エール酵母を使いながら低温で発酵、熟成させることで、すっきりとした味わいになっている。米国の最新ホップ品種を使用していることから、華やかな印象に仕上がった。
 同大会審査員は「甘さがあり、際だったコーンのような味」「強いホップからなるグレープフルーツのような爽快感もある」と講評した。山田醸造長によると、いつも飲んでいるビールに近い味で、ビールが苦手な人でも飲みやすいという。「若い方でもビールを好きになるきっかけになると思う」と勧める。パッケージには同市の世界遺産「韮山反射炉」とホップをあしらった。
 同大会は毎年英国で開催され、15年以上続いている。本年度は50カ国以上から3200以上のビール銘柄が出品された。日本からのエントリー数は103銘柄だった。テイスト分野とデザイン分野で審査される。
 山田醸造長は「多くの人にビールのおいしさを知ってもらい、伊豆の国市観光の魅力の一つになれば」と期待を寄せた。
 ニューワールドケルシュは1本330ミリリットルで、10月9日から同醸造所のオンラインショップや全国の取扱店で販売予定。問い合わせは同醸造所<電055(949)1208>へ。
(大仁支局・小西龍也)
〈2023.10.4 あなたの静岡新聞〉

4粒で「四季」表現、フランスのチョコ祭典で金賞 富士、静岡で洋菓子店営む藁科さん

 富士、静岡両市で洋菓子店「キャトルエピス」を営む藁科雅喜さん(52)=静岡市清水区=が、フランス・パリで今秋開かれたチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ」の品評会で、「金賞」と「外国人部門 洗練ショコラ賞」を受けた。昨年に続く2回目の挑戦で、出品した約200のブランドの上位14人に贈られる栄誉に輝いた。

チョコレートの祭典で金賞と「外国人部門洗練ショコラ賞」を受賞した藁科さん=富士市内
チョコレートの祭典で金賞と「外国人部門洗練ショコラ賞」を受賞した藁科さん=富士市内
 藁科さんが出品した「epice Japon(日本の香り)」は、日本の食文化に根差した素材を使った4粒のチョコレートで、「日本の四季」の表現を試みた。冬をテーマにした「よもぎと苺と薔薇」は、ベースとなるヨモギの風味にイチゴの酸味とバラの香りを加えた。「フランスの人が好む『味の足し算』を意識した。味がぶつかって良さが消えないように工夫した」と強調する。
 2001年に洋菓子店を始め、チョコレート作りは7年目。品評会はフランスの評論家らの団体による審査で、日本国内のブランドでは今回唯一の受賞となった。「チョコ版ミシュラン」と呼ばれるガイドへの掲載も果たした。
 藁科さんは「協力してくれる農家や店の従業員が喜んでくれたことが本当にうれしい」と話す。今後については「カカオ豆の生産者の労働環境を視察し、しっかりとチョコレートに向き合いたい」と見据えた。
 「epice Japon(日本の香り)」は2024年1月ごろから、キャトルエピスなどで販売する予定。
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藁科さんが出品した「epice Japon(日本の香り)」

(富士支局・沢口翔斗)
〈2023.11.10 あなたの静岡新聞〉

動 画

  • SBSテレビニュース「『久しぶりにガッツポーズ』世界最大級チョコの祭典で『金賞』 4粒で日本の“四季”を表現」

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