地元に流出懸念の声 静岡・大谷の大量土砂搬出へ
熱海市の大規模土石流で被害を拡大したとみられる盛り土への関心が高まる中、静岡市駿河区大谷地区に大量に積まれた土砂があり、流出を懸念する声が上がっていました。土地を所有する国立研究開発法人は4月に土砂搬出を開始します。土砂の搬出方法などを巡って問題解決に時間が掛かりました。これまでの経緯や盛り土規制に関する最近の情報を1ページに整理します。
〈静岡新聞社編集局未来戦略チーム・寺田将人〉
搬出作業は4月11日開始 期間は約半年間を予定
静岡市駿河区大谷の国立研究開発法人の敷地内に大量の土砂が積み上げられ、地元住民が流出を懸念していた問題で、土地を所有する農業・食品産業技術総合研究機構(本部・茨城県つくば市)は28日までに、土砂の搬出作業を4月11日から始める方針を明らかにした。10月上旬までに全量に当たる約6千立方メートルの搬出を完了させる。
![土砂の全量搬出について説明する農研機構の担当者ら=27日、静岡市駿河区大谷](/news/images/n104/1033372/IP220228TAN000101000_00.jpg)
説明会に出席した住民からは「搬出ルートは急勾配。十分に気をつけてほしい」など安全対策を徹底するよう求める意見が出た。集中豪雨が発生した場合の管理体制を問う声もあった。大谷学区自治会連合会の三津山幸彦会長(76)は「熱海市の土石流災害を受け、土砂の流出を心配する声が多い。しっかりと対応してもらいたい」と求めた。
農研機構は台風被害によるのり面復旧のため2020年夏から工事を行い、採取した土砂を敷地内に積み上げていた。県土採取等規制条例に基づく盛り土の届け出の遅れや、土砂を締め固める作業の強度が不十分だったことが判明し、地元住民から不安の声が上がっていた。農研機構の担当者は「地元の皆さんに不安を与え申し訳ない。安全かつ迅速に工事を進めていく」と話した。
〈2022.03.01 あなたの静岡新聞〉
土砂搬出巡り、地元住民側と折り合えていなかった
熱海市の大規模土石流で被害を拡大したとみられる盛り土への関心が高まる中、静岡市駿河区大谷地区に大量に積まれた土砂があり、流出を懸念する声が上がっている。土地を所有する国立研究開発法人は対策を講じる意向を示しているが、土砂の搬出などを巡って住民側に反発があり、早期の問題解決は見通せていない。
![土砂が積み上げられた現場。流出を防ぐためブルーシートや土のうが設置されている=7月中旬、静岡市駿河区大谷](/news/images/n104/1033372/IP210721TAN000140000_O.jpg)
農研機構の担当者は7月11日に開いた住民向け説明会で「不安を与えおわび申し上げる。熱海の災害を重く受け止め、一日も早く安心していただける状態にする」と陳謝した。住民からは「盛り土ではなく土砂の投棄だ」「いつ崩れるか不安」などと批判が噴出。機構側が安全対策として示した土砂の全量搬出を巡っても、住宅街を4トンダンプ約2500台が通行することへの不安が根強く、住民側と折り合えていない。
北大谷自治会自主防災会本部運営委員長の小泉勇さん(78)は「熱海市の土石流災害が発生し、住民は不安を感じている。台風シーズンを迎えるため一刻も早く対応してほしい」と切実な思いを口にする。
静岡市は7月5~9日に市内の盛り土計54カ所を緊急点検し、大谷地区の土砂を含む全ての場所で異常はなかったと結論づけた。市開発指導課は「強度が保たれないまま土砂が放置されるのは望ましくない。全量搬出など適正に対処されるかどうか状況を注視したい」としている。
〈2021.08.06 あなたの静岡新聞 ※表記などはいずれも当時〉
政府は盛り土規制法案閣議決定 熱海土石流踏まえ
政府は1日、静岡県熱海市の土石流被害を踏まえた盛り土規制法案を閣議決定した。都道府県などが指定した区域内の盛り土を許可制にし、全国一律の規制を適用。無許可造成や是正命令違反をした法人に最高3億円の罰金を科すなど厳罰化する。2024年度の施行を目指す。
![閣議に臨む(左から)林外相、岸田首相、野田地方創生相=1日午前、首相官邸](/news/images/n104/1033372/PN2022030101000477.-.-.CI0003.jpg)
〈2022.03.01 あなたの静岡新聞〉