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リニア 国土交通省専門家会議 実名化議事録⑪

国土交通省専門家会議 第11回 議事詳報

2021年4月17日:国土交通省

※この議事詳報は国土交通省が公開した「議事録」に、静岡新聞社の傍聴等の取材を補足してまとめました。「議事録」や会議当日の配布資料は 同省ホームページ でご覧になれます。

 

(森宣夫国土交通省鉄道局施設課環境対策室長)
 本日は第11回会議となるが、前回の委員の皆様のご指摘を踏まえ、大井川水資源利用への影響の回避・低減に向けた取組みを中心に議論を行おうと考えている。

 

 

【水資源利用への影響の回避・低減について議論深める】

 

(座長・福岡捷二中央大教授)
 本日の第11回会議では前回会議で指摘した大井川水資源利用への影響の回避・低減に向けた取組みについて、さらに議論を深めたいと思う。それでは議事(1)「大井川水資源利用への影響の回避・低減に向けた取組みについて」JR東海より資料の説明をお願いする。

 

【影響及ぼせば関係者と協議】 ※資料2の説明


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 資料1「第11回会議のご説明骨子」をご覧いただきたい。本日の説明は、最初に前回会議での議論を踏まえトンネル掘削に伴う水資源利用へのリスクと対応、現在想定している突発湧水量の考え方についてご説明をする。続いて、リニア中央新幹線静岡工区有識者会議における今後の議論に関する意見等への対応について、3月31日の静岡県文書を踏まえトンネル掘削による地下水位低下と河川流量への影響、地質調査状況、長野県境付近における断層の想定やトンネルの掘り方、渇水期における成分分析結果等について説明をする。
 続いて、右上の番号で資料2-1と記載してある資料をご覧いただきたい。資料のタイトルは「7.トンネル掘削に伴う水資源利用へのリスクと対応について」である。トンネル掘削に伴う水資源利用へのリスクと対応について、前回会議でいただいた委員からのご意見、ご指摘について、事前に委員の皆様のご意見をいただきながら修正をしたので、ご説明する。
 p7-3をご覧いただきたい。図7-1のリスクへの対応の基本的なフローについて、②適切なモニタリングの実施、③モニタリング状況を踏まえた対応の中でいくつかのステップを追記した。追記した内容については、その前のp7-2の上から5つ目からの文章にて記載をしている。これに基づいてご説明をする。モニタリング用に得られた測定データは専門家、静岡県等に速報するとともに、できる限り速やかに公表し、住民の方々にご確認できるようにする。変化を検知した場合は、推定する要因及び対応の要否を確認するとともに、専門家、静岡県等に速報し、ご確認をいただき、その結果についてできる限り速やかに公表する。モニタリングの状況を踏まえ、更なる湧水低減対策等の対応を実施することにより、水資源利用への影響を低減する。対応については効果を確認し、効果が得られなかった場合はさらなる対応を検討し実施する。対応と効果の確認状況については静岡県等へ報告する。工事が起因となった場合で、対策を実施しても最終的に効果がなく水資源利用に影響を及ぼした場合には、関係する方々と協議し必要な措置を講じる。工事中の環境保全措置の実施状況やモニタリングの結果等は定期的に報告として取りまとめ、静岡県等へ送付の上、ホームページに掲載するなどによって公表し、住民の方々にご確認いただけるようにする。
 

【山梨県の湧水量は1キロ当たり毎分0.45トン】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 続いてp7-6をご覧いただきたい。A3のページである。その左側にある図7-3のリスク要因および事象の中で、b-5地震・豪雨等による発生土置き場の崩壊について、発生土の置き場には重金属を含む土砂を対象とする遮水型の発生土置き場を含むので、そのことが分かるように追記をした。
 続いてp7-13をご覧いただきたい。モニタリングによって下流域の地下水位にどのような事象を確認した場合に異常と判定するのかという説明において、前回の会議で過去10年間に計測された範囲を下回った場合という説明には違和感があるとのご指摘をいただいた。今回、図7-5に下流域の地下水位の測定データの判定例を追加した。折れ線グラフは2008年から17年までの静岡県の観測井における地下水位の変動の様子を示したものである。3月の時点をご覧いただくとトンネル掘削後の計測例として、緑色の点線で示しているが、3月の計測値においてこれまで計測された範囲を下回るようなデータ、図上では緑色の×印で示しているが、このような値が計測された場合は異常と判定をする。また同様に赤色の点線の推移が7月の時点において、赤色の×印で示すようなこれまでに計測された範囲を下回るような場合も異常と判定をする。このような値が計測された場合は測定異常がないかを確認するとともに、降水量や付近での揚水工事の有無、近傍の箇所における測定結果とともに専門家、静岡県等に速報して総合的な見地から異常なものかをご確認いただくようにする。
 続いてp7-16をご覧いただきたい。前回の会議で山梨県側に流出したトンネル湧水を静岡県側に流す取り組みについて、図7-7のイメージ図に示すように先進坑貫通後に山梨県内で発生するトンネル湧水を釜場(貯水槽)を中継しながら、順次ポンプアップして時間をかけて静岡県に戻すということをご説明した。今回、現在掘削中の山梨工区でどれくらいの湧水が発生しているのかについて、湧水量の実績値を追記した。斜坑・先進坑・本坑の実績湧水量の合計を掘削延長で除した数値として1キロ当たり毎分約0.45トンである。次のページになるが、今後、山梨工区の掘削の進捗に伴い、湧水の状況は変化していくと考えられ、どのくらいの時間をかけて戻していくかについて検討を進めていく。
 

【長野県側からも時間をかけて戻す】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 続いて、p7-19をご覧いただきたい。長野県側に流出したトンネル湧水を静岡県 側に流す取組みについても追記をした。長野県側に流出するトンネル湧水を代替する措置として先進坑貫通後に長野県内で発生するトンネル湧水を時間をかけて静岡県へ戻すことについて、今後、関係者と相談することも考えている。なお、現在掘削中の長野工区の湧水量は、斜坑・先進坑の実績湧水量の合計を掘削延長で除した数値として1キロ当たり毎分約0.42トンである。山梨県側と同様、今後長野工区の掘削の進捗に伴い、湧水の状況は変化していくと考えられ、どのくらいの時間をかけて戻していくかについて検討を進めていく。
 次にp7-28をご覧いただきたい。前回会議で山梨県境付近を掘削する際に高速長尺先進ボーリング時の湧水や先進坑掘削時の湧水、さらには地表面付近の水から断層破砕帯に含まれる地下水の起源や地下水の連続性を推定し、それをトンネル掘削計画に反映していくことをご説明した。その際、図等により説明する工夫を、というご意見をいただいたので今回追記をした。三つ目のポツで、高速長尺先進ボーリング等で把握する項目を改めて記載をした。
 また、次のp7-29の図7-10で図示をした。図7-10であるが、上の図はボーリングが堅岩部を削孔している際の表層部の水と堅岩部の地下水を調査している状況であり、表層部の水、堅岩部の地下水の考えられる特性を列記している。表層部の水は降雨への応答がある、溶存成分が少なく水温は季節変動するというような特性があり、堅岩部の地下水は降雨への応答はなく、溶存成分が多く、水温が安定し地下深くなると温度が高くなるというような特性が考えられる。下の図は、上の図とは異なるボーリングマシンを用いて破砕帯部を削孔している際に、継続して実施している表層部の水、堅岩部の地下水に加えて破砕帯の地下水についても調査している状況を示している。破砕帯の地下水の湧水圧、水圧や水質を調べることにより表層部の水との連続性等について考察をする。
 次にp7-30である。ボーリング時の湧水による考察とともにトンネル掘削時のトンネル湧水についてもどのような特性を有しているかについて考察をする。トンネル掘削が破砕帯に入った瞬間にトンネル湧水から得られるデータを用いてどのような考察を行うかについて①、②にお示しした。①破砕帯付近の堅岩部の地下水のみを引き込んでいる場合は、時間が経過しても湧水の水質や水温は余り変化せず、一方で湧水の量は破砕帯、堅岩部ともに時間とともに減少すると考えられる。②破砕帯の地下水が表層部の水と連続していて表層部の水を引き込んでいる場合には、時間の経過に伴い水質や水温が変化する一方で湧水の量は大きく減少しないと考えられる。これらの考察を踏まえトンネル掘削においてどのように生かすかについては、そのページの最後のポツから記載をしている。トンネル切羽(先端)が破砕帯に近づいたと判断できる際には、薬液注入等を行いトンネル湧水量の低減を図る。その際、破砕帯の地下水が表層部の水と連続していると想定される場合には、それに応じて注入の実施内容に反映していく。p7-31になるがトンネル切羽が破砕帯に入ってからも、湧水の変化を把握し、さらに多くのトンネル湧水が想定される場合にはそれ以降の注入の実施内容に反映させていく。資料2-1の説明は以上である。
 

【山岳トンネルの湧水量推移は確認できず】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 続いて、資料2-2をご覧いただきたい。資料のタイトルは「7、工事期間中のトンネル湧水の山梨県側への流出を抑えたトンネル掘削方法」である。断層破砕帯付近における突発湧水として現在想定している湧水量等の考え方についてご説明をする。p別7-3をご覧いただきたい。ここでは、山梨県境付近の断層帯を静岡県側からのナトム(トンネル掘削方法の一種)で下向きに掘削する場合の安全性の検証を行うに当たって突発湧水の想定を行っている。作業の安全性を検討するには、切羽付近からの瞬間的な湧水量の大きさが問題となる。上から4ポツ目になるが、突発湧水は局所的な地質や地下水の状況に基づいて生じるものであり、その量や短い時間における変化を事前の解析で精度を高めて推定しようとしても、不確実性が伴い正確な推定は困難である。そのため、切羽周辺の最大湧水量が定量的に把握されている過去の湧水事例を元に具体的な検討を行うこととした。突発湧水の想定に関しては、切羽付近で大規模な湧水が発生し、さらにその湧水量の推移が継続的に確認できる青函トンネルの事例をベースに検討した。南アルプストンネルと同様に山岳トンネルの事例が望ましいが、切羽湧水量の推移がしっかりと記録されているものが確認できなかった。青函トンネルは海底トンネルであるが、突発湧水発生後の湧水量の推移が継続的に確認できることから、この事例を参考として、毎秒1トンの突発湧水の発生とその後の時間推移を想定した。検討に用いる突発湧水発生時の経時変化は、青函トンネルにおける切羽湧水量の経時変化を元に作成した湧水量の低減率による想定をした。p別7-5の図7-2にお示しをする。縦軸が湧水量の低減率、横軸が経過日数である。黄色い線が青函トンネルの切羽湧水量の低減率の実績を示したもの、赤い線がそれを元に作成した、今回検討するモデルケースでの低減率である。
 続いて、p別7-7をご覧いただきたい。切羽からの湧水について、どこまでが突発湧水で、どこからが恒常的な湧水かの想定である。この想定に当たり、青函トンネルで発 生した突発湧水の状況を的確に把握するため、発生当時に工事に従事していた工事関係者に当時の状況をお聞きし、その結果について①~③にまとめた。
 「①突発湧水量は切羽付近で直接計測できないため、湧水による水没の水際線の移動速度を基に突発湧水量の経時変化を推定した」。ここで言う水没の水際線についてであるが、次のp別7-8の下の図7-5をご覧いただきたい。突発湧水は、図の左上に出水切羽と赤く囲んである作業坑の切羽で発生し、切羽付近の湧水が作業坑の中で冠水し、隣の本坑、図では右側の少し大きい丸であるがここにも湧水が流れ水没をした。赤い矢印で最終的な水際位置を示しているが、この水際線が突発湧水発生後に徐々に上がっていく速度によって湧水量を想定したということである。
 前のページのp別7-7に戻って、ヒアリング結果の②である。「突発湧水発生前のトンネル全体の恒常湧水量は薬液注入を行っていたので、管理上問題になるような湧水量ではなかった」、「③これらを踏まえると水際線が最終水際線位置の移動が止まった時点までの期間を突発湧水の影響期間と考えて支障ない」。この③について、工事誌に水際線が移動する状況が掲載されていたので、p別7-8の上の図7-4にお示しをする。縦軸が水際線の位置を示しており横軸が経過日数である。赤い星印の位置で発生した突発湧水により、水際線が移動し足掛け4日後となる5月9日に切羽から約3キロにわたって水没し、そこで水際線の移動が止まっている。この時点における水際線の移動の停止は、排水設備の緊急増強により排水能力と湧水量が釣り合ったことによるものであるが、排水能力と釣り合ったということで湧水量が恒常状態になったと考えられる。この突発湧水が発生してから足かけ4日間が突発湧水による影響期間と考えられる。p別7-6に再び戻って恐縮であるが、p別7-6の下の表7-2において突発湧水発生後の積算湧水量を示している。突発湧水の影響が続いた期間の湧水量の総量は4日間で約13万トンと計算をした。
 

【青函トンネルの事例は想定で、不確実性あり】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 次にp別7-10である。ここでは、解析における突発湧水の取扱いについてご説明をしている。前々回の会議で水収支解析(流量予測)ではブロックごとに均一な地質を想定していることから、突発湧水を再現することはできないことをご説明した。p別7-11の図7-7をご覧下さい。この図は山梨県側に流出する湧水量の総量と突発湧水の湧水量の総量を比較したものである。青いグラフは静岡市モデルによる県外流出量の時間推移を示しており、青い部分の面積が解析で得られた県外流出量の500万トンを示している。一方、赤字の部分が青函トンネルにおける突発湧水を参考 に、毎秒1トンの突発湧水が発生し4日間続いた場合の突発湧水量を約13万トンであることを示している。この図の考察について次のp別7-12をご覧いただきたい。水資源利用への影響を考える上では、山梨県側に流れるトンネル湧水の総量が問題になると考えられる。突発湧水によるトンネル湧水量は、山梨県側へ流出する解析湧水総量500万トンに含まれると考えているが、仮に青函トンネルの事例を基に想定した突発湧水量の総量13万トンを解析湧水総量に上乗せするにしても、その総量は500万トンの約3%である。一方、トンネルの掘り方を考える上では、切羽で発生する突発湧水の瞬間的な湧水量が作業員の安全を確保する上で重要となる。山梨県境付近の断層帯を静岡県側から下り勾配で掘削する場合、毎秒1トンの突発湧水が発生すれば、この資料で後述するように1時間後には切羽から約170メートルが水没することになり、安全上課題が大きいということである。なお、今回想定した青函トンネルの事例での検討はあくまでも一つの想定結果であり、突発湧水発生時の瞬間的な湧水量、継続期間、発生回数には不確実性がある。それらの可能性を考慮し突発湧水が発生した場合の水資源利用への影響を及ぼす可能性については、重要度の高いリスクとして第7章に記載の通りの対応を取る。この資料についての説明は以上である。
 
(座長・福岡捷二中央大教授)
 いったん、ここで切りたいと思う。ここまでのご説明に関して委員の皆様から自由にご質問ご意見をいただきたいと思う。
 

【山梨工区の湧水量の想定と精度は】


(委員・丸井敦尚産業技術総合研究所招聘研究員)
 二つ教えていただきたいことがあるので質問する。まず最初に、資料2-1でp7-16だが、下の方に「現在掘削中の山梨工区では~」という文章があるが、この山梨工区での突発湧水やトンネル内に湧出する地下水量は、あらかじめ計算されていたのかどうか、もし計算されていたのであればどれだけの精度であったのか。さらに、静岡工区の中ではどのくらいの量を推定しているのかまず一つ教えていただきたい。
 

【高速長尺先進ボーリングはどれくらい先行するか】


(委員・丸井敦尚産業技術総合研究所招聘研究員)
 あともう一つは、同じ資料のp7-30で、先進坑が掘削されていく時に破砕帯の所で地下水が湧出する時、周辺の堅岩部の地下水を引き込んでくるぐらいであれば 表層部(表流水)には影響ないが、そうでなければ表層の河川水や何かに影響があるというご趣旨の説明だったと思う。その通りだと賛同するし、わかりやすい資料であるが、ここでp7-29で示されている先進坑に先行して掘削される高速長尺先進ボーリングは、先進坑に比べてどのくらい先へ行っているのか。破砕帯の情報がいつ頃になったらわかってくるのか知りたい。何メートル先でもいいし、何日とか何カ月とかという意味でも良いが、どのくらい先の情報を得ることが可能か教えてほしい。
 

【山梨の湧水量は想定より少ない】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 まず最初の山梨工区の湧水量であるが、水収支解析は静岡と同様に行っている。今は資料がないのでどれくらいの数量だったかについては申し上げられない。実績として今、山梨工区で掘っているトンネルの湧水量は少ないと感じており、解析から得られていた数値よりは少ないということを記憶しているが、どれくらいかというのは、今は申し上げられない。想定よりは少ないということである。
 

【先進ボーリングは500メートル先を掘る】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 それから、p7-29で先進ボーリングはその先進坑よりもどれぐらい先に行けるのかということであるが、先進ボーリングはだいたい500メートルぐらい、500から1000メートル、基本的には500メートルぐらい掘るつもりである。先進坑の掘削スピードが毎月100メートルぐらいで進むとすると、500メートル先の地質が分かっているということは5カ月分ぐらいの余裕がある。到達するまでには、それぐらい期間があるということである。
 

【静岡工区の参考になるので数値を】


(委員・丸井敦尚産業技術総合研究所招聘研究員)
 1問目の質問について、もし分かったらで結構なので、どのくらい小さくなるかを教えていただけると静岡工区についてもある程度予想ができ、安心できるか、あるいは不安なのか、ある程度の推定ができるかと思う。ぜひ教えてほしいと思う。
 

【長野工区の状況も説明を】


(委員・沖大幹東京大教授)
 今の委員のお話に関しては、長野工区についても、ぜひ計算値と実測でお話いただけると良いと思う。
 

【地下水位の低下も段階を決めて管理を】


(委員・沖大幹東京大教授)
 資料2-1の後ろの方に参考値1と2ということで、言ってみれば黄色信号、赤信号みたいな2段階で管理いたします、というふうに書いてあるが、それに対して地下水位でp7-13のところに関しては、過去10年間の上限下限、特に下限を下回った時は1段階で対応することになっているが、ここに関して地下水は時間的な相関が高い、つまり前の月が低めであれば次の月も低めであるということがあるので、例えば、その既存のデータの標準偏差を求めておいて、その値を下回ったとか、その1.5倍を下回ったら黄信号ぐらいにされるというようなお考えはいかがかなと思う。いきなりこの過去の実績は外れたらアウト、それでなければセーフという2段階「0」「1」ではないのではと思ったのでご検討いただければと思う。
 

【やり方を検討する】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 確かに急激に下がるものではないと思うので、傾向がつかめるものは傾向をつかみたいと思っているので、どういったやり方があるのかということは考えていきたいと思う。
 

【さらなる湧水低減策の具体案は】


(委員・大東憲二大同大教授)
 今の沖委員の質問にも関連するが、p7-2あるいはp7-3のところにモニタリング(観測)をしていて、ある一定の閾値(しきいち=境目となる値)を超えたら、いろいろ対策を取ることを検討するというようなコメントが書いてあるが、p7-2のところに「モニタリングの状況を踏まえ、さらなる湧水低減対策等の対応を実施する」という文章がある。この「さらなる湧水低減対策」の具体的な案というものを用意しておかないと、そういうのが出てきた時に、ゼロからもう1回検討始めますでは遅いので、この辺をどう考えているかということが質問である。その低減対策をしても、まだ効果があまりないといった時、また次のことを考えなければいけないと、2段階の低減対策というものを想定されて書いておられるのか。それと、この湧水低減対策という言葉と、工事中の環境保全措置の実施状況っていう言葉があるが、この辺の関係をどういうふうに考えておられるか、ご説明いただけたらと思う。
 

【施工段階できちんと策定する】


(沢田尚夫JR東海中央新幹線推進本部副本部長)
 今、話が大きく二つあったかと思う。一つは事前の策をきちんと用意しておくということで、それはその通りだと思っている。例えば、事前に、先ほどの詳細モデルのところで 話したが、破砕帯の状況をつかみながら注入の計画を立てることをやっていくが、その 次には何があるのかということについては、注入の仕方、あとは範囲をもう少し考えるなど、そういうことを具体的に事前に用意しようと思っている。その辺を施工段階できちんと策定していこうと思っている。それから言葉の使い分けで、ここでは「さらなる 低減対策」というのは「環境保全措置」と同義で使っている。環境保全措置の中の一つが、例えば「低減対策」というふうに使っている。表現で分かりにくいというご指摘であれば、そこは直していきたいと思っている。あとは、解説を付けるなど、修正をしていきたいと思っている。
 

【環境保全と湧水低減策の違いが分かる表現に】


(委員・大東憲二大同大教授)
 湧水を低減させるための薬液注入等もあるかもしれないが、そういう措置がモニタリング結果に対する措置であることも一つの流れで理解した。環境保全措置となると、この湧水が出てくることによって地表流に影響を及ぼして地表の動植物に影響を与えるということも環境保全措置とリンクしてくる。これまで水資源の話でずっとやってきているが、その環境保全というのは全体を見て、やはり切り離せない言葉だと思うので、その辺が分かるような表現にしていただけたらいいかなと思っている。
 

【さらなる湧水低減策を含めて検討を】


(座長・福岡捷二中央大教授)
 今のご意見、考えられることは是非やっていただきたいし、今のご指摘もごもっともだと思っているので、是非、その「さらなる湧水低減対策」というとこも含めてご検討していただければと思う。
 

【青函は南アルプスと掘削環境が大きく異なる】


(委員・森下祐一静岡大客員教授)
 別冊資料7の今のところだが、これは突発湧水に関して青函トンネルの例を大変詳しく調べられて、そのことを記載されているというのはいいと思うが、ただ南アルプスと比べると地質とか掘削環境が大きく異なるので、例えば、湧水量の総量とか継続期間についても、これは青函トンネルの例であるということで、記述の方は、それも分かるように書かれていると思うが、やっぱりちょっと気になるのは別冊p7-11の図7-7である。この図は、その南アルプスの水収支解析の図に今の青函トンネルから得られた数値を加え合わせたものであり、文章を読んでいくとそのことはよく分かるが、この図だけを見ると、何かこのような経過をたどるというような予断を与えるような図かなと思うので、その辺は誤解のないような表現にもう少し工夫していただければと思っているが、いかがか。
 

【図の書き方と注記の方法を考えたい】


(沢田尚夫JR東海中央新幹線推進本部副本部長)
 この図だけを見て、何を説明したいのかが分からないというご指摘だと思う。一方で文章の方を見れば分かるという話もあったので、もう少し図の書き方、注記の仕方を考えたいと思う。
 

【「地質」はモニタリング項目ではない】


(委員・西村和夫東京都立大理事)
 資料2-1のp7-3のところにフローが書いてあるが、このフローの平常時のところの黄色の枠が二つあり、上の方の②のところ、1個目で「モニタリングの実施」のところの黒ポチ1個目で、その下のかっこに「地質」がモニタリング項目として入っている。「地質」は基本的に、観察記録の必須条件でありモニタリング項目ではないので、外した方がよいと思う。
 

【「注入」は材料も方法もいろいろ】


(委員・西村和夫東京都立大理事)
 それから、やはり湧水に対する低減、先ほどもお話があったが、簡単に一言で「注入」と言っても、注入は非常に難しい。材料もあるし、方法もいろいろあると思う。現時点では、このように「注入」と書いていて良いと思うが、実際には施工計画とか施工管理における細かい材料も含めた準備、メニュー立てはかなり細かく出てくると思う。今のところは「注入」というざっくりのご理解をいただくのが良いかなと思う。
 

【モニタリング項目から「地質」を削除】


(沢田尚夫JR東海中央新幹線推進本部副本部長)
 まずモニタリングの項目として、地質の項目はふさわしくないとのご指摘だったので削除をする。ここで、当然、掘りながらというか、事前に先進ボーリングや先進坑できちんと地質状況を見ながらやっていくということで書かせていただいたが、モニタリングというところに書くのはふさわしくないというご指摘だったので、そこは改めたいと思う。
 

【「湧水低減対策」は工事実施段階で説明】


(沢田尚夫JR東海中央新幹線推進本部副本部長)
 それから一言で「薬液注入」と言ってもいろいろあり、湧水の低減対策にもいろいろあるかと思うので、そこは詳しい施工計画を立てる時にきちんとまとめて、具体的な工事の実施の段階の時にはご説明していきたいと思う。
 

【データの質確保する手続き必要】


(委員・徳永朋祥東京大教授)
 p7-3のところだが、前回からいろいろ考えていただき、モニタリングの結果を変化の有無にかかわらず、専門家、静岡県に速報をするということでデータを多くの方々と共有していきましょうという姿勢を取られると理解する。それはそれで非常によろしい方向性だと思っているが、前回の議論時に話したが、計測されたデータが抱えるさまざまな難しさというとこもあるので、速報で出すということをするという判断をされてそれでいくのは良いが、その後、そのデータがどういう性質を持っているのかとか、ある部分に課題があるデータであったかもしれないけども速報したということはあり得ると思っているので、その後のきちっとしたデータのクオリティーを確保するような手続きをお持ちになっていて、そこもきちっと共有されながら進めて行くというやり方をしていただくということがいいかなと思う。是非よろしくお願いしたい。
 

【想定を固定化せず、準備に柔軟性を】


(委員・徳永朋祥東京大教授)
 それからp7-30のところで、こういう想定をしますということを具体的にいろいろ考えていただいているということで、想定を持つことは極めて重要だということを理解するが、実際にはそれが固定化するということにならないようにであるとか、実際に起こることがこれであるということは分からないので、①みたいなこともあるでしょうし、②みたいなこともあるでしょうし、そうじゃないことだってあり得るということがちゃんと対応できるような柔軟性を持っておくことは大事だと思っている。想定をするなということではなくて、想定を持っておくことはすごく大事であるけど、必ずそうなるということではない。そこは十分に柔らかさを持った形でご準備いただいておくということが、こういう進め方をするとすれば極めて重要だと思うので、そこは是非よろしくお願いしたい。
 

【非常に大切】


(座長・福岡捷二中央大教授)
 非常に大切なことを言ってもらったと思っているが、何か関連してあるか。
 

【データ共有は速報と考察の二段構え】


(沢田尚夫JR東海中央新幹線推進本部副本部長)
 モニタリングの公表の仕方については、前回もたくさんご意見をいただき、大きく言うと今の委員がおっしゃった通りで、速報すべきという話と、データを何も付けずに出すと誤解を招く場合もあるというご意見をいただいた。それぞれ、ごもっともだと思う。今回 の資料で書かせていただいたのは、二段構えである。まずは速報していく。ただ速報の 中には委員がおっしゃったように、いろいろな測り方の問題が含まれることもあるので、例えば、何かいつもと違うデータがあって、速報するような場合には、「ここについては 別途考察をしてご報告します」というようなコメントを付けて出す。そして、二段構えとして後のところでは、きちんと考察をして出すなど、そういった二段構えでどうかと いうふうに、今こちらの資料では書いているので、その辺りは今日こういう案を出して いるが、これから関係の方ときちんと話し合いながら決めていきたいと思っている。それからのモデルの話で①、②とパターンを書いているが、確かに実際どうなっているのかというのは、なかなか想像できないところがあるが、例えば、ということで①、②というようなパターンを書かせていただいた。実際どうなっているかということをきちんと探る、探ったデータでモデル化していくことが大事だと思っているので、この①、②という形にとらわれずに実際は進めていくことを考えている。
 
(座長・福岡捷二中央大教授)
 続いて、資料の2-3以降の資料の説明をお願いしたい。
 

【地下水位低下は掘削完了15年後に収束と予測】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 資料2-3、資料のタイトルは(3)大井川中下流域の水資源利用への影響の検討(地下水位)をご覧いただきたい。そのページの最後の文章からである。河川流量の予測地点については、両モデルでの地下水低下の影響範囲を踏まえて導水路トンネル吐出口である椹島下流の地点としている。これについては、静岡県から鉄道局へ発信された文書において「導水路トンネル出口(椹島)の河川流量の評価をもって、椹島付近より下流側の河川流量の評価をすることは科学的・工学的に正確性を欠いている」との記述があった。この理由として「トンネル掘削完了後の恒常時には、トンネルがない時は下流に地下水として流れ、地表流出していた地下水の全量をトンネル湧水として上流の地中深くで集め、それをポンプアップして導水路で大井川に流すため、導水路トンネル出口(椹島)では河川流量は工事前よりも少し増える。その下流では、地下水の地表流出量が少し減少し、河川流量の増分が相殺される」との記述があった。これらの静岡県のご見解に対して、椹島付近より下流側でのトンネル掘削による影響を確認するため、大井川中流域の長島ダム付近までを解析領域としている静岡市モデルの結果から、解析領域全体でのトンネル掘削による地下水位の低下について確認した。
 p4-37、図4-24、静岡市モデル地下水位低下量平面図をご覧いただきたい。図にお示しする通り、トンネル掘削による地下水位の低下は、南北方向では椹島付近で収束をしており、その南側である椹島付近から長島ダム付近(解析領域南端)まではトンネル掘削による地下水位の低下は極めて小さくなっている。また、静岡市モデルにより計算される地下から地表への湧出量についても、トンネル掘削による影響を確認するため、解析領域全体でのトンネル掘削による湧出量の変化について確認した。
 資料のp4-39、図4-27である。これはトンネル掘削前の地下水の湧出量図である。図のほぼ中央に椹島の位置を示している。この赤く塗った場所は地下水の湧出量が多い所である。次の図4-28、これはトンネル掘削後の地下水湧出量図である。さらに次のページはトンネル前後で比較をしており、図の4-29である。これはトンネル掘削前とトンネル掘削完了後恒常時における地下水湧出量の差分を示したものである。この図4-29にお示しする通り、トンネル掘削による湧出量の変化は椹島付近より上流側では谷部など一部で減少しているが、椹島付近から長島ダム付近までは湧出量の減少分は小さくなっている。
 続いて、p4-33に戻るが、一番下の文章である。なお、解析において、椹島より下流側で地下水の湧出量の僅かな減少が確認されたことから、椹島の約15キロ下流にある畑薙第一ダムにおける河川流量を確認した。畑薙第一ダムへの流入量の予測結果は、トンネル掘削前は毎秒19.7トン、トンネル湧水を導水路トンネルから大井川表流水として流すことで、トンネル掘削完了後恒常時では毎秒20.0トンとなり、椹島下流地点と同様に流入量は維持される結果となっている。これらの解析結果から椹島付近より下流側の湧出量の減少が、椹島付近より下流側の河川流量に及ぼす影響は極めて小さいと考えられる。
 さらに、トンネル掘削完了後恒常時の河川流量については、p4-35の図4-11をご覧いただきたい。椹島下流側の河川流量は上の図において紫色で示している。トンネルを掘削してから増加するが、恒常状態になると山体内の地下水貯留が減り止まる一方、導水路トンネルから椹島上流側の河川流量の減少分と等しい量のトンネル湧水を放流することから、トンネル掘削前の元の流量に戻る。水収支解析での予測結果でも両モデルとも地下水位の低下は掘削完了後の15年後にはほぼ収束した状態となっており、後述の通り掘削完了後の15年後以降には流量は減少せずトンネル湧水を導水路トンネルから大井川表流水として流すことで、椹島下流地点での河川流量は維持される結果となっている。この資料の説明は以上である。
 

【破砕帯の地質採取ではコアボーリングが曲がることも】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 続いて資料の2-4をご覧いただきたい。タイトルは「4.工事着手前段階における取り組み」である。静岡県からの地質調査の追加実施(3月12日文書)に関するご意見を踏まえ、改めて地質調査の実施状況についてご説明をする。p4-1の1)地質調査 である。静岡県内の地層は、山梨県側から長野県側に向かって古い地層となるが、古い地層へ向かうほど、現地は急峻な地形となってアプローチしにくいことに加え、冬季は 積雪により人を寄せ付けない非常に厳しい自然状況となっており、地上からの調査が限定される。そのような現地状況の中で、トンネル掘削箇所である大井川上流域の地質を把握するために、これまでに地表踏査、弾性波探査、ボーリング調査を実施してきている。静岡県内における地質調査は、鉛直ボーリングが現在実施中のものを含め6カ所、延長約1391メートル、斜めボーリングは6カ所、延長約4512メートル、弾性波探査は11カ所、延長約2万7100メートルを行っている。
 次のp4-2をご覧いただきたい。図4-1に静岡県内の地質調査位置図をお示しする。これまで実施してきたボーリング調査に加え、西俣非常口や千石非常口付近では静岡県環境保全連絡会議委員からのご意見も踏まえ、追加のコアボーリングを現在実施しているところである。なお、現在実施中のボーリングについては赤色でお示しをしている。
 次にp4-4をご覧いただきたい。第9回会議で委員からいただいた「高速長尺先進ボーリングの概要についてまとめておくとわかりやすい」とのご助言を踏まえ、これ以降にご説明をさせていただく。先述した通り、南アルプスでは地上からのボーリング調査が限定されることからトンネルを掘削しつつ前方の地質を確認することができる高速長尺先進ボーリングを行う。高速長尺先進ボーリングは南アルプストンネルの掘削のためにトンネル施工や地質に関する専門家のご意見を伺いながら長い年月をかけてJR東海とメーカーで共同開発した工法である。本工法は長距離を速く正確に掘る事を目的として、海洋石油探査の技術を参考にトンネルのボーリングに技術応用したものである。特徴としてダウンホールモーターと呼ぶ先端駆動装置でボーリングの先端ビットを回転させることが可能である。
 続いて4-5ページになるが、傾斜計と磁気コンパスが内蔵された位置検知装置により掘削している際であっても、掘削している位置を精度よく把握することができる。さらに図4-4にお示しするように、ボーリング先端付近のベントサブと呼ぶ孔曲がり装置により、鉛直方向および水平方向の掘削方向をコントロールしながら掘進することができる。これにより計画線通りに精度良く掘削することが可能であり、東俣から東に向けたボーリングでは水平方向、鉛直方向ともに全長1200メートルの掘削延長全ての範囲において、計画線より離れ5メートル以内の精度を維持した。一方、コアボーリングを含む一般的なボーリングは、ボーリング孔を曲げることなく掘進することは不可能に近いと言われている。ボーリング孔が曲がる原因は、地質条件や機械的条件などが組み合わされて起こるものであるが、地質条件としては割れ目が発達した地盤や破砕帯などが挙げられる。山梨県境付近の断層帯のように破砕質な地質でコアボーリングを行うと仮定した場合は、前述のように想定するボーリングが大きく曲がることなどによりトンネル掘削箇所の地質を採取することが困難になると考えている。これまでの実績をお話しすると、例えば、大井川東俣から西側に向かって実施した斜め下向きのコアボーリング調査では掘削延長及び深度が進むにつれ、孔曲がりが増大をした。全長900メートルのボーリング調査だったが、掘削延長350メートル付近から水平、鉛直ともに曲がり始め、掘削最終延長の900メートル付近では、水平および深度それぞれ約200メートルの曲がりとなった。南アルプスは非常に厳しい自然条件となっており、地上からのボーリング調査が限定されているが、そのような条件の中でこれまで出来る限りの調査を実施してきているところである。この資料の説明は以上である。
 

【長野県側は詳細調査できていないが、岩盤の割れ目が発達】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 続いて、資料の2-5、タイトルは「(2)長野県境付近の地形・地質調査」である。ここでは、長野県境付近の断層の想定やトンネルの掘り方についてご説明をする。調査の概要についてであるが、長野県境付近の調査は既往の文献調査、中央新幹線に関する調査として実施した航空レーザー測量や空中写真による地形判読、さらには沢筋や尾根部を中心とする現地の地表地質踏査により行った。長野県境付近においては既往の文献調査から粘板岩や砂岩粘板岩の互層を主体とする堆積岩が広く分布していること、また、地層は北東から南西方向に走行していることがわかった。また航空レーザー測量、図や空中写真による地形判読では線状に伸びる筋のようなリニアメントを判読することができた。空中写真で判読したリニアメントを次のページ、p別10-26、図10-13にお示しをする。上の図は国土地理院の地形図、下は上の地形図のBの枠の空中写真である。長野県境付近また小西俣付近の空中写真である。空中写真においてピンク色の線が地下を通過する本線トンネルの位置であり、ピンク色の線に小さく直行してオレンジ色で工区境を示している。また地表で確認できるリニアメントを赤い線で示している。リニアメントのうち、断層で特徴的に見られる断層鞍部、これは断層付近では脆弱で馬の鞍のように凹んだ地形が見られるということであるが、これを図の中では三角二つで挟む形で表記している。また遷緩点(せんかんてん=傾斜が緩くなる地点)、これは急斜面から緩斜面に変化している場所であるが、これを赤い三角一つで示している。なお長野県境から工区境までの間において、リニアメントは確認されなかった。
 続いて、p別10-27である。図10-14の地形判読図に工区境の東側の二つのリニアメント群を示している。工区境のすぐ東側にあるもの、これをグループ1、F1断層と呼ぶことにする。さらにその東側にあるグループ2、これをF2断層と呼ぶことにする。
 続いてp別10-28である。本線トンネルの地表部周辺において、地表地質踏査を行い、断層の可能性があるリニアメントの確認や岩石の割れ目の状況等を確認した。F1断層やF2断層については現地の環境や地形条件が厳しく、直接露頭等を確認することができなかったが、それ以外の場所では断層の存在やその幅を直接確認することができた。直接確認した断層の一つとして、写真10-4に柾小屋沢付近の断層の写真を掲載している。この断層の幅は約3mと小規模なものであった。柾小屋沢付近の断層は前のページの図10-14の地形判読図においても確認しており、図の右側で図10-4と示している場所、これが柾小屋沢周辺の断層の位置である。地形判読図からF1、F2断層はこの柾小屋沢の断層と同規模であると判定をしている。
 続いて、p別10-29の図10-15である。これは長野県境付近で想定している地質縦断図である。工区境の東側で確認したF1断層、F2断層の性状として、①、②のように考えている。①地形判読図において、幅を判読できるようなリニアメントではないこと、②現地で確認した柾小屋沢周辺の断層と同程度の小さな断層であることということである。 続いて、長野県境付近から工区境にかけては地形判読において断層が確認されなかった。またボーリング調査などの詳細な調査はできていないが、地表地質踏査の結果からは比較的堅硬な地質が分布し、割れ目同士の間隔が広いと考えられるが、一部では岩盤の割れ目が発達している場所もある。
 次のp別10-30である。以上を踏まえ、長野県境付近のトンネル掘削において留意することをまとめた。静岡工区の工区境まではF1断層とF2断層があり、静岡県側から下り勾配で掘削することになる。トンネル掘削に先立ち実施する高速長尺先進ボーリングでトンネル前方の地質や断層の規模を確認し、地層が悪い場合にはコアボーリングにより地質を確認し、慎重に工事を進める。また長野県境付近から工区境までは断層は確認されなかったが、岩盤の亀裂からの湧水が考えられ、トンネル掘削に先立ち実施する高速長尺先進ボーリングでトンネル前方の地質や断層の規模を確認し、地質 が悪い場合はコアボーリングにより地質を確認した上で慎重に工事を進める。この資料の説明は以上である。
 

【成分分析は渇水期も豊水期と同様の傾向】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 次に資料の2-6をご覧いただきたい。資料のタイトルは、4)成分分析の概要(渇 水期調査)である。地下水や河川水の成分分析について渇水期における調査結果をご説明する。第6回会議では豊水期における調査結果をご説明したが、今回は降水や河川流量の状況は異なる渇水期での調査結果である。ア.測定項目は豊水期と同様、溶存イオン分析による水の起源の推定、酸素・水素安定同位体比による水の平均的な涵養標高の推定、不活性化ガス等による水の滞留時間の推定の3項目である。このうち、不活性化ガス等による滞留時間の分析に当たり、椹島より上流にある深井戸においてはより深い年代まで分析可能なトレーサーである炭素放射性同位体を追加した。続いて、イ.測定地点である。豊水期調査において下流域の観測井14箇所のうち、吉田町の一部の井戸や牧之原市の井戸では他の井戸とは異なる水質組成を示し、滞留時間も比較的長い結果となったことから、これらの井戸の近傍を流れる河川の源流部付近の湧水を調査地点として追加した。また焼津市の一部の井戸は豊水期において滞留時間が比較的短い結果となったことから、近傍河川を調査地点として追加した。調査地点は次のp2-43、 表2-11の通りである。また現地調査期間はその下の表2-12の通り、今年の2月である。下のページでp2-45をご覧いただきたい。今回の調査において追加した調査地点を赤い文字で示している。大井川左岸側の栃山川の河川5、河川6、河川7、大井川右岸側の湯日川、坂口谷川、勝間田川の源流部付近の湧水7、湧水8、湧水9である。
 調査結果についてはp2-48、図2-32をご覧いただきたい。この図の右上は上流域における井戸と河川水の調査結果を示しており、その他は下流域の調査結果を表している。赤い色は地下水、青色は河川水、緑色は湧水の解析結果である。六角形は溶存イオンの分析結果である。地下水の赤い四角の上段は平均涵養標高、中段は滞留時間、下段は採水深度である。河川水の青い四角、湧水の緑の四角はそれぞれ両方とも平均涵養標高である。分析結果のまとめを上段の四角の中に記載をしている。小さい文字ではあるが、この内容はp2-46からp2-47の本文においても記載をしている。
 ここではp2-48の上段の分析結果でご説明をする。(1)全体について、地下水については各分析項目とも豊水期調査と同様な傾向が確認された。一方、河川水においては豊水期と比べ全体的に溶存イオンの総濃度が高くなるなどの相違が見られたが、一般的に見られる季節変動の範囲と考えられる。大井川の河川1、図で言うと、ちょうど中央右側になるが、河川1で見られるような硫酸イオンの濃度が相対的に高いなどの局所的な相違は、人為的な影響と考えられる。また、今回追加して実施した椹島より上流の深井戸、井戸17の炭素放射性同位体の分析の結果、地下水の滞留時間は約4万年以上と推定され、下流域の地下水の主要な涵養源として直接供給している可能性がより低いことを改めて示唆する結果となった。続いて牧之原市内の井戸7については、今回追加した湯日川、坂口谷川、勝間田川の源流部付近の湧水、図の中では、左側の湧水7、湧水8、湧水9になるが、この湧水と同じような涵養標高や水質組成を示した。これにより、井戸7については牧之原台地の北端部に降った雨が主な涵養源になっていると考えられる。次に吉田町の井戸5、井戸6については他の下流域の井戸とは異なる性質を示し、豊水期調査と同様、平均的な涵養標高は約700メートル、滞留時間は約45年と推定され、滞留時間の長い深層地下水に多く見られるカルシウムイオンやマグネシウムイオンが低く、ナトリウムイオン、重炭酸イオンの濃度が相対的に高い特徴が確認をされた。涵養標高や滞留時間の分析結果等を踏まえると他の下流域の井戸と同様に上流域の地下水から直接供給されている水が主要な涵養源となっているわけではないと考えられる。また井戸5、井戸6の上流に位置する井戸1から 井戸4を含めた下流域の各井戸では全体的に同様な特徴が確認されている中、井戸5、井戸6のみ異なる特徴が確認されていることを踏まえると、この周辺の地質など局所的な要因が関係しているものと考えられる。
 次に焼津市内の井戸11、井戸13についてである。今回追加した栃山川の河川水、図の中では河川5、河川6、河川7になる。それぞれ平均的な涵養標高が約900メートルと推定され、大井川の河川水と同程度の値を示した。また、浅層地下水に多く見られるカルシウムイオンや重炭酸イオンの濃度が卓越した特徴が確認された。井戸11、井戸13 については栃山川の河川水と近い涵養標高や水質組成を示し、豊水期調査と同様に他の下流域の各井戸よりも滞留時間は比較的短い結果となったことから、近傍を流れる栃山川の河川水が主要な涵養源の一つになっていることが考えられる。以上の豊水期、渇水期において実施した化学的な成分分析の結果を総合的にまとめると、第6回専門家会議で報告の通り、大井川下流域の地下水は大井川上流域(椹島以北)の地下水によって直接供給されているわけではなく、大井川上流域、中流域からの河川水と大井川下流域における降水が主要な涵養源となっていることが考えられる。これらの成分分析については工事中、工事完了後も下流域の地下水等の成分に変化がないかを確認するため継続的に調査を実施していく。資料の説明は以上である。
 最後に資料の2-7である。p2-54の図2-34であるが、これは大井川流域の水循環図の概念図で井川ダム下流側の鳥瞰図について、対象とする範囲を大井川の受水域全体として作成し直したものである。この資料について説明は以上である。
 
(座長・福岡捷二中央大教授)
 ここまでのご説明いただいたことに関して、委員の皆様から自由にご質問、ご意見をいただきたいと思う。
 

【湧水量の単位を確認】


(委員・大東憲二大同大教授)
 資料2-3についておうかがいしたいが、まず最初に表記上の問題を確認したい。資料p4-39、40、41、湧水量の単位が「mm/d」と書いてあるが、湧水量は普通は「トン/日」とか体積で書くが、ここが長さの単位というのは、モデルの要素が上から見た正方形の要素になっていて、その面積を掛けて出して流量に換算するとそういう考え方でよろしいか。
 

【メッシュの面積を掛けて湧水量を算出する】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 ご指摘の通り、流量を出す時はモデルのグリッド、メッシュが持つ面積を掛けて量を算出する。
 

【沢の流量と大井川に戻す湧水量の比較と水資源への影響は】


(委員・大東憲二大同大教授)
 面積を掛けた量で表現していただいた方が、湧水量という図としてはその方が適切だと思っている。椹島よりも下流側のところで地下水位が低下しないということはずっと前からこの会議でも出ているが、地下水位は下がらないが、湧水量に何か変化があるんじゃないかということが静岡県からのご指摘だったと思う。今回、その解析結果を見せていただいたと受け取っている。地下水位は地形との関係でかなり拘束されてしまうので、地下水位自体はある程度地形に依存するが、その山体の中の地下水位が下がれば、沢の地下水位 が下がっていないが、山体からその沢に向かって出てくる地下水の導水勾配、流速のポテンシャルが小さくなるので、流量そのものに変化があることを見せていただいた。解析結果によると椹島よりも下流で地下水位は下がってないが、沢の流量が減る箇所が何カ所か明らかになったということだったと思う。それはp41の流量の差分の形で見た時に、小さい青色で示されており、それは椹島よりもちょっと下流、大井川本流ではない所もある。そういった所で沢に出てくる流量の減少が確認できたという資料を見せていただいた。しかし、その減少量を大井川に戻す湧水量と比較してみると、下流側で使う水資源には影響がないとそういうことでよろしいか。
 

【トンネル掘削で深層地下水の圧力が変化】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 自由地下水であるけれども、そこは椹島上流で止まっているがトンネル掘削によって深層部の持つ地下水の圧力が変化する。それに伴って地上に湧出する水の量が変わってくるということである。その総量を比べて、トンネル掘削前後での湧出量の違いを考慮しても河川流量への影響は確認されないということである。
 

【年代が何を表しているのか】


(委員・森下祐一静岡大客員教授)
 資料2-6の地下水の成分分析について、地点を増やして調査を行ったというのはいいと思っている。それで、さらに炭素14の放射性同位元素を使った年代測定をやっているわけであるが、通常は、この方法は動植物の遺骸を使って年代を知るわけである。この場合は溶存イオンの分析だと思うが、この年代が何を表しているのかはっきりするのでしょうか。
 

【半減期が8回繰り返され4万年以上と推定】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 これは水の中に含まれている炭素放射性同位体を調べており、この同位体が持っている半減期が5700年であり、時間が経つとだんだんその濃度は低下していくということになる。今回、その濃度がほとんど検出されなかったため、その半減期が8回繰り返されているということから4万年以上と推定したということである。
 

【炭素14が減っていく状況は】


(委員・森下祐一静岡大客員教授)
 動植物の場合は、生きている間はそこで炭素同位体の組成が平衡状態になっている。死んだ途端に閉鎖系になって炭素14がどんどん減っていくので、その年代を測っているという仕組みであるが、無機物の場合には、その閉鎖系になるのがどこであるとお考えか。
 

【地中に入ると壊変が進み、減っていく】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 地表部においては、大気中の生成と壊変という壊れるバランスによって、おおむね一定に保たれるが、それが地中に入っていくと生成がなく壊変のみが進んでいくということからこういう想定をしている。
 

【深層に入った時点以降の年代を測っているのか】


(委員・森下祐一静岡大客員教授)
 そうすると、地表では大気と平衡状態になっていて、それが深層に入った時点以降の年代を測っているということか。そういう研究成果は結構あるのか。
 

【過去に分析例がある】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 特に特殊な方法ではなく、過去にそういった分析を行っている例はあると聞いている。
 

【高度な解析をせず、見かけの年代】


(委員・徳永朋祥東京大教授)
 少し気をつける必要があって、土壌中で有機物が分解する時にCO2をやり取りして、その後、閉鎖系になるということを想定するわけであるが、岩石の中にある石灰岩とか 方解石のベインみたいな脈、CaCO3から溶存して、追加して炭素が溶存することがあ る。デットカーボンと呼ぶけども、年代が古めになるので、これは見かけの年代というふうに考えておくことが良いと思っていて、そういう評価をするためには安定同位体の炭素13を使ってあげるという、やや高度な解析をしないといけないと思って、それをやらずにこの年代を出しているとすれば、これはやっぱり見かけの年代である。ただ一方で、見かけの年代であるとしてもこういう値になるということは十分に時間が経っているということが推定される、という使い方をすることは望ましいと考える。
 

【時間がある時に検討を】


(座長・福岡捷二中央大教授)
 指摘があったが、時間がある時には、またご検討していただければより良い。
 

【ゼロならかなり古いと思っていい】


(委員・沖大幹東京大教授)
 先ほどのご説明だと、全く検出されなかったということである。例えば、これが5000年とか8000年であれば、おっしゃるメカニズムで古い値になってしまっている可能性もあると思うが、ゼロであれば、やっぱり、かなり古いと思って良いのではないか。つまり濃度(検出)が一定のサンプルでなければ、なんか特定の量をちょっとしか取らないとしていなければ、いいような気もするがダメか。
 

【「4万年より古い」とするのは危険】


(委員・徳永朋祥東京大教授)
 そういう意味で言うと、若くないという情報を持っていることを否定するわけではないが、5700年の半減期で8半減期以上たっていると言うのは、もう少し丁寧な処理が必要であるというふうに考えるということである。どれだけのカーボン、炭素14がゼロであるものが、どれだけ固体の側から供給されるかっていうことが分からない中で、ミキシングして、混合した結果としてほぼゼロに近い値になっているという答えを持っているというのが今の状況だと思う。であるから、どれだけの割合のカーボン14がない炭素を岩石からもらっているかということを評価しないと、年代にはならない。ゼロであるから古いっていうのは、まあそうでしょうと思うが、その年代が「4万年より古い」っていうことを言うのは危険である。
 

【浸透する過程で炭素が入れ替わる可能性は】


(委員・沖大幹東京大教授)
 上から浸透してくる水の中で含まれているCが入れ替わっている可能性があるということであるか。
 

【炭素をどれだけもらったかの評価が必要】


(委員・徳永朋祥東京大教授)
 岩石の中を通って行く途中で、CaCO3に対して飽和するまでの間は、岩石から炭素をもらい続けることができるので、それがどれだけもらっているかっていうことを評価してあげないと、どれだけ薄まったかってことがわからないということを申し上げている。
 

【薄まると探知されなくなるか】


(委員・沖大幹東京大教授)
 薄まると元の濃度がどれだけでも探知されなくなるか。
 

【ほとんど見えない】


(委員・徳永朋祥東京大教授)
 極端な話、1対99%とすると、ほとんど見えない。
 

【計算上の流出量は雨と比べてかなりの量になる】


(委員・沖大幹東京大教授)
 放射性炭素の含有率そのものではなく、安定同位体に対する比で評価しているので、安定な炭素の含有量が増えると見かけ上、少なく測定されると理解した。
 私のコメントはまず資料2-3の図4.29で、大東委員がおっしゃったこの単位であるけれども「mm/d」だとすると、あまりにも大きいのではないかなと直感的には思っている。例えば、10ミリ、1日当たり減るとすると、1年で3650ミリ流出量が減るというのはすさまじい、雨の量に比べてもすごいなと思うので、ちょっとご確認を。今日じゃなくてよろしいのでお願いしたい。
 

【椹島下流側の地下水位低下区間で水量は増加】


(委員・沖大幹東京大教授)
 申し上げたいのは、椹島より下流の流出が山体の地下水位が下がったら減るんじゃないかという静岡県からの指摘は非常にけい眼であって、やはりそういうところはあったと。ただし、その椹島よりも下流で流出量が減る所はあるんだけれども、椹島で戻すので、むしろ、椹島からその流出量が減るまでの区間については、流量はトンネルを掘る前よりは増えるということである。つまり、本来であれば、この下流のどこかで出ていたものが減ってしまうところが、畑薙まで来るとそれは変わらないということは、この減る地点までの区間は水量が下がるんじゃなく、むしろ上がるんだいうことは、逆に書かれてもいいんではないかなというふうに思っている。
 

【高速長尺先進ボーリングで地山の強度をどう推定するのか】


(委員・沖大幹東京大教授)
 それから、資料2-4のp4-5、高速長尺先進ボーリングがまっすぐに掘れるということはわかったが、まっすぐ掘る際にどうやって地山の強度を取得するのかについても弾性波を見るとか、あるいは水を大量に入れて掘るのだと思うが、湧出量も取れるんだとか、いやそれは精度良く取れないんだとか、やはり掘れることが分かったので、それによってどうやってどういう情報を得て地山の強度を推定するのかという点も是非書いていただけると良いかなと思った。最後になるが、資料2-6のp2-48で、地点によっては若干印象的なぐらい硫酸イオンが高いんであるけれども、これらが環境基準に照らしてどのぐらいなのかというのが、もし分かれば教えていただきたい。
 

【書き方考えたい】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 いくつか指摘をいただいた。最初の資料2-3は、書き方、考察をもう少し考えたいと思っている。おっしゃるように椹島の所では少し流量が増えていて、トンネル湧水を全部返しているので、その減少分も含めて返しているため、そのように考察を改めたいと思う。それから高速長尺先進ボーリングについては、掘るだけではなくて、地質情報、もちろん湧水量も分かるし、掘った時の圧力やトルク等、そういうことで地山がゆるいのか硬いのか、そういった情報も今までの経験の中でつかんできているので、そういうことができるということも併せて書きたいと思っている。最後のところで、環境基準との関係は本日持ち合わせていないので書くようにする。
 

【コアボーリングは何メートル先まで掘れるのか】


(委員・丸井敦尚産業技術総合研究所招聘研究員)
 まず資料2-5のp別10-30の中のところに、コアボーリングをするということが書かれてあって、コアボーリングの目的等については把握したが、このコアボーリングで何メートルぐらい先まで行けるのか、曲がってしまうことについてエクスキューズも書いてあるが、まず何メートルぐらいかは一つお答えいただきたいと思っている。それから、このコアボーリングでなければ取れないデータを取ると言うのであれば、例えば、最終的な報告書の中には、コアボーリングのコアを使ってどんな分析をするとか、あるいは、コアボーリングの穴を使ってどんな物理計測をするのかも、もし報告書の中に書いていただけたら非常にありがたい。今日は答えを求めませんけれども、そういったところも配慮していただいて、どんな結果がモニターできるかも教えていただければありがたく思う。
 

【水質分析で山体内の地下水減少の影響を評価できないか】


(委員・丸井敦尚産業技術総合研究所招聘研究員)
 2番目の質問は、椹島から長島ダムまでの所について静岡県との見解が違うということで、こちらのシミュレーションではどうかというのを今までも聞いていたが、例えば、同位体分析や水質分析をたくさんされているが、こちらの資料2-3の中にA3の紙がいっぱいあって、観測点なんかもあるが、例えば、長島ダムより上で椹島よりも下流側に相当するような大井川の所で、このような水質分析を行うことによって、シミュレーションとは違う方向から見た地下水の涵養とか、あるいは季節的な変化とかっていうのは考えられないのか。もしかしたら、今日の段階ではお答えいただけないかと思うが、重層的な見地から、その現象を把握しようとすることは大事だと思っているので、できればシミュレーションじゃない方法から、この静岡県副知事がおっしゃられている、その山体内部の地下水が減少したことによる影響といったものを評価できる方法がないかどうかをご検討いただければと思う。こちらについては、報告書を書く時までにお答えいただければ良いかと思う。
 

【影響大小で中下流域をブロック分けして地下水観測を】


(委員・丸井敦尚産業技術総合研究所招聘研究員)
 もう一つ、私が今日一番申し上げたかったのが、資料2-6になるが、中下流域を大変丹念に調べていただいて、それぞれの水質がわかってきたということは非常にいいことだと思っている。また、涵養標高が平均的にどのくらいということもわかったので、その水はどこから供給されているとか、どういうふうに動いているかはよくわかったが、例えば、p2-48の図2-32というところでダイアグラムが示してあり、その水質にパターンがあるということをおっしゃられた。これらの情報を使って、この大井川の中下流域の栃山川も含めてのことであるけれども、この地域をブロックごとに分けることはできないか。例えば、そのブロックに分けた時に、大井川の(地下水の)影響が大きいブロックと、そうでもない所をしっかり見分ければ、ゆくゆく何かあった時に問題が発生する地域はここら辺だということが推定できるので、モニタリングの重点ポイントということにもなろうかと思っている。ここまで調べていただいて本当によくわかったので、あともう一歩踏み込んでブロック分けをするとか、モニタリングの重点地域を決める、といったようなことを考えいただいて、そのモニタリングの重点地域が決まれば、なおさら、どの水質項目が大事だということも分かるかと思うので、例えば、工事の影響をいち早く見極める場所や項目を 明らかにすることにお役立ていただけないだろうかと思う。
 

【重要なことを言ってくれた】


(座長・福岡捷二中央大教授)
 何かコメントにしてはすごく重たい、重要なことを言っていただいたと言うか、これから考えていただくにふさわしいことを言っていただいたと思う。
 

【コアは数十メートル先を取る】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 最初のコアボーリングは何メートルぐらいを考えているのかということであるが、元々破砕帯のような所で、山の状態があまり良くない所を想定しているので、高速長尺のように何百メートルというものではなくて、数十メートルといったようなものでボーリングをやって、その性状を詳しく調べて、どういう対策を打つのかということで生かしていくというようなことを考えている。
 それから、資料2-3のところで椹島からその下流域にかけて、解析ではなくて実際の水質のデータを取りながら、トンネルの影響はどうなるのかということについても、得られるもの、取れるものはいろいろ取っていきたいと思う。そうした場合に、現在湧出している湧水の水質をまず調べておくというところから始まるとは思っているが、できることはどんどんやっていきたいと思っている。
 最後の下流域の分析で、今回、2回分析をやって一つの成果としてまとまったので、これをトンネル掘削をした場合にどのような影響が考えられるのか。委員からご指摘があったように、より重点的な観測が必要な所と、あまりトンネルによる影響が考えにくい所というのはブロック分けができるかもしれないので、そこはどういった分け方ができるのかといったようなことはご意見をいただきながらやっていきたいと思う。
 

【住民の安全のためにお願いする】


(委員・丸井敦尚産業技術総合研究所招聘研究員)
 追加で仕事を増やして申し訳ないが、住民の方々が安全を確信できればと思っているのでよろしくお願いする。
 

【化学的物理的に調査検討するのは重要】


(座長・福岡捷二中央大教授)
 私も重層的というのは大変重要だと思う。化学的、物理的両面から調査検討するということは大変であるが、それに関連するお話だと思っている。
 

【「平均涵養標高」の表現は混乱させる】


(委員・徳永朋祥東京大教授)
 先ほどの丸井委員のご意見について少し質問したい。理解を確認したいが、「平均涵養標高」という言葉が使われていて、これは安定同位体の値から、その安定同位体の値であれば、どれくらいの高さのところの平均的な降水であるかっていう、そういうひも付けをしているということだと思っているが、これまでいろんなことを議論してきた理解として我々が考えているのは、大井川の上流に降って一時的に地下水になったかもしれないが、それは表流水として出てきて、扇状地のたぶん扇頂部の所で地下水を涵養して、それと降雨が地下水を作っている、地下水を涵養しているんだという理解をしていると思うわけだ。その時に、例えば「900メートルとか800メートルぐらいの平均涵養標高であるよ」っていう言葉がそのまま続くと、「800メートルか900メートルの所で涵養した水が地下水に対する涵養になっている」というふうに取られかねないという危惧を持っていて、この値、安定同位体の値が持っているという情報を上手に使うことは極めて重要だと思うが、それを「平均涵養標高」という言葉にしてしまうことが混乱を発生させないかということに少し懸念を持っているが、そういう意味でどういうふうに言葉を整理すればいいかという辺りを教えてほしい。
 

【JRは専門用語を間違いなく伝えて】


(委員・丸井敦尚産業技術総合研究所招聘研究員)
 こんなことをここで言うのも恐縮であるが、徳永委員は地下水学会の会長で大変詳しく地下水に明るい先生だと思っている。その中で、私が言うのも何だが、「平均涵養標高」、それから先ほど議論のあった「カーボン14」のことについても承知されている上でのご質問かと思うが、いずれにしても、これらは地下水学あるいは水文学の専門用語として成り立っている言葉で、一般の方々は誤解して受け取られるということも重々あるかと思う。その辺は、今風に言うと、JR東海がサイエンスコミュニケーターとなって、学会で使う専門用語を、一般人の方々の認識というか、雰囲気を間違いなく伝えていただけるようなコミュニケーション力を持っていただけるとありがたいと思っている。
 

【JRは利水者に分かりやすくまとめて】


(座長・福岡捷二中央大教授)
 時間も迫っているが、今この、ここでの議論というのは大変いずれも示唆に富んで、JR東海としても勉強してやれることはしっかりやっていくということであろうと思っている。ただ、今日ご説明いただいたことについて、異論ありということではないと思っている。こういう方向で検討されたものをまとめていっていただきたいと私は思っている。同時に、先ほど、丸井委員が言われたように、利水者や市民がわかりやすいものにしていくという、まとめていくということがすごく大事だと思っているので、JR東海に対してそれを求めたい。よろしくお願いします。
 

【突発湧水は詳細モデルで評価すべきか】


(江口秀二国土交通省鉄道局技術審議官)
 一つだけ、ちょっと話題を前に戻って確認をさせていただきたい。突発湧水のところで青函トンネルの事例を用いているところでちょっと確認を。この会議として、どのように皆さんが認識されているかを確認したい。静岡県からも、突発湧水を評価するに当たって、森下委員がおっしゃったように青函トンネルと南アルプスとでは全然構造が違うのではないかという指摘を受けていて、南アルプスの現状を再現した詳細モデルを作成して評価すべきではないかという指摘を受けている。今日の資料では、構造が違うのは分かるが、一方で突発湧水を評価するのは非常に難しい。難しいので、青函トンネルの場合は、突発湧水が経時的に時間的にどのように変化しているかというデータが取れているので、これを使うとどれくらい突発湧水が出てくるのか、それが13万トンという形になって出てきたということで、一応、この突発湧水の評価としてはなかなか難しいのだけれども、唯一データが取れている青函トンネルのデータを使えば、これくらいだってことが推定でき、これを今回の南アルプスでも適用すると、こういうふうになるということで、今回青函トンネルの突発湧水が用いられたと理解した。
 また、それを詳細モデルで評価しましょうという話については、丸井委員から前回もご指摘いただいたように、モデルの精度を高めるのもなかなか難しいので、実際には先ほどから説明があった、高速長尺先進ボーリングで調査をしながら、それに基づいて薬液注入等をやるべきであって、静岡県からの指摘についても、やはり、その局所的、それから場所的、時間的なものを見るためにも詳細モデルで評価すべきではないかというご意見ある。この会議でも以前、私も聞かせていただいたが、なかなかこのモデルの精度を上げる、ブラッシュアップするっていうのもなかなか難しいと、それよりも実際に工事をやってみないと分からないので、先ほどのような高速長尺ボーリングといったもので調査を進めながらフィードバックして施工に生かしていく。こういう形にするのが、精度を上げるというよりも実際に対策を講じる上ではいいのではないかというふうに私はこの会議の中で理解した。突発湧水の話とそれから詳細モデルについて、今、私が申し上げたような理解でよろしいのかを確認させていただきたい。
 
(座長・福岡捷二中央大教授)
 いかがでしょうか。ただ今の技術審議官から確認をというお話であるがご意見あれば、どうぞ。
 

【事前にできることはやるべき】


(委員・森下祐一静岡大客員教授)
 まあ、その通りではあるが、ただ、事前にできることはできるだけやっておくというのは一つのスタンスじゃないかなと私は思っている。今日は、この中間報告については議論しないのか。この後ということであれば。では、その時にお話したい。
 

【情報量を増やすより柔軟な対応できる準備を】


(委員・徳永朋祥東京大教授)
 私の考えとしては、江口審議官がおっしゃったような考え方が適切かと思っている。青函トンネルは確かに海底トンネルであり、地質も全然違うというのはその通りであるけれども、この表で整理してくださって資料2-2のp別7-3であるが、今まで、その切羽付近の最大湧水量として計測されているものの中で、たぶん最も大きなものを事例として挙げていらっしゃるということ、それから、海が上にあるという中での湧出ということであるので、場の条件として突発湧水量が多くなるということが想定されるというところを事例として扱って、即ち、大きめの湧水が出るだろうと考えられるものを事例として扱っているという意味では、それには、私は一定の意味があると理解する。ただ、これだからこれで大丈夫だということではなく、やはりここから先はわからないことがあるので、それをリスクとしてどう取り扱うかという議論を進めていくということも、これまでやってきているので、そういう意味ではこの扱い方がいいのかなと考える。
 数値モデルに関しては、空間分解能を細かく切っていくというやり方はあり得ると思っているが、それをすることによって、どれぐらいの情報量が増えるかと言うと、地質分布等が分からない中、そういう解析をすることが今の段階で我々の情報量を増やすという方向にあまりいかないと私は考える。それよりも、どういう計測をして、どういう準備をしておくかというところをきちんと考え、先ほど申し上げたようにいくつかの考え方を持っておくことは良いけれども、柔軟にそれ以外のことがあり得るということに対してどういう工事をする側での準備ができますかということを考えておくということが重要ではないかと考えるので、意見を申し上げさせていただいた。
 

【青函トンネルよりも突発湧水量が出た事例ある】


(委員・西村和夫東京都立大理事)
 私も徳永委員の意見と同じで、詳細モデルっていうのが、数値解析モデルだとすればパラメーター(変数)が増えるだけなので、そのパラメーターの確定ができてない以上はかえって分からないというか、判断しにくい結果になると思っている。施工事例を適用する、その適用の、その類似性は確かに問題があると思うが、少なくとも青函の地質構造と、あと、この青函よりももっと突発湧水がもっと出たというのもあるので、地質構造が違うから、事例として使うことは一つの考え方かなと。このような事例を元にすると、例えば、ここのリニアの工区で地質構造をイメージしながら、どういう突発湧水の出方とか、それを推定する工学的判断ができる。青函の詳細がわかっているから、そうすると、今度ここの静岡工区での地質構造のイメージが出てくれば、その違いが青函と比較することで、工学的判断で考えることはできる。数値モデルはそれができない。そういう意味では、実際の施工に当たって突発湧水に対する対応策を考える上では、やはり事例を持ってきた方が対応しやすい、理解しやすいというふうには思っている。
 

【イメージを描いて共有認識を持つのが大事】


(委員・丸井敦尚産業技術総合研究所招聘研究員)
 委員各位が言うように江口技術審議官の考えについて私も賛同する。その上で、資料2-2のp別7-5に図7-2があるが、具体的な詳細モデルがどんなものか説明させていただきたい。図7-2による赤い線とオレンジ色の線がある。オレンジ色の線が実際の観測のデータだと思うが、カクカクッと曲がっているところが、1日目、2日目、3日目というところが本当の観測点。それをざっくりならしたのが赤い線。これ両方を見ると、カクカクというところをなだらかにつないでいくと、突発湧水が始まってから1日目2日目ぐらいまではエクスポネンシャル・カーブ(指数関数的な曲線)で近似できる。ところが、1日目と2日目、2日目より3日目が若干増えて4日目がちょっと減って5日目がまた増えているっていうところがなんとなくダラダラとしているが、この突発湧水が始まってから、少なくとも1日目ぐらいは圧力伝播、すなわちトンネルが掘られることによってトンネル内の圧力が大気圧に開放されて圧力伝播で水が出ていた、そこから先は、透水係数に従って堅岩部分から破砕帯を通して、青函トンネルの場合は違うが、じわじわっと出る部分なので、そこをしっかり分けるっていうのが詳細モデルの意味であり、もちろん細かいデータがないとできないけれども、このイメージを頭に描いておいて、圧力伝播が直れば、ある程度収まるから通常工法でいけるとか、危険を回避するためにこの時間だけはまずは逃げなさいとか、危険を回避しなさいとかって言うためのモデルだというふうにご認識いただければ良いと思っている。そういった意味でのデータももちろん重要であるが、モデル化してみんなが共通の認識を持つことが大事かと思っている。
 
(座長・福岡捷二中央大教授)
 よろしいか、技術審議官。それでは最後の議事、今後の進め方について入りたいと思う。
 

【解析結果に不確実性があり、リスク対策を議論】


(江口秀二国土交通省鉄道局技術審議官) ※資料3、4の説明
 まず資料の3であるが、今後の進め方について、p1が第7回まで、p2に第8回から今日が第11回目で、今日もいろいろ宿題いただき、第12回に向けて引き続き資料の修正等を行っていきたいと思っている。日時については未定であり、また調整させていただきたいと思っている。次に資料4だが、これは前回お示しした中間報告で、前回は皆様に何も照会せずにいきなり出したので素案という形であったが、今回は若干委員の先生方からもご意見いただいているので、そういった意見も踏まえた修正をさせていただいた。時間がないのでざっと説明させていただく。先ほど、森下委員から追加のコメントがあるということなので、ここでいただければと思っている。まずp4、p5が主なポイントであるが、この部分については最初に5つの○があるが、事前に委員に説明した時には、 やはり、この有識者会議の目的、どのような立ち位置で、どのようなミッションで、そしてどのようなデータやその分析結果を用いて議論を行って、JR東海に対して科学的・工学的な観点からどのように指導してきたのかということが分かるように書くべきではないか、要するに有識者会議として何やっているのだということをしっかり書くべきではないかとの指摘を受けて、五つほど書かせていただいている。
 後で読んでいただければと思うが、そういった観点でこの有識者会議は何を目的、何をしてどういう議論をしてということを書かせていただいている。特に4つ目の○では、この実測データを丁寧に見ながら実現象を正しく理解することを重要視したこと、また水収支解析モデルによるトンネル湧水等の解析に際してはモデルの精度を高めるのではなく、モデルの作成目的等を十分に認識した上で解析結果を評価し、さらに解析結果は不確実性を伴うことから、不測の事態が生じた場合のリスク対策やモニタリングの方法等について議論を進めてきたことを書かせていただいている。この部分をきちんと確認をしたいということで先ほど質問をさせていただいた。
 

【中下流域の地下水量の影響は比較対象を明記】


(江口秀二国土交通省鉄道局技術審議官)
 それから1.以降については、前回もご議論いただいたが、やはりこの中間報告の主なポイントのところに「考えられる」とか「示された」とかそういう表現ではなくて、 きちんと語尾をはっきり言うこととのご指摘いただいた。従って、例えば1.のところ で「扇状地内全体として安定した状態が続いていると考えられる」と前回では書いてい たものを「続いている」という形に断言させていただいている。その次の2ポツでも「また地下水の主要な涵養源は近傍の河川水・降雨の表流水である」という形でここも断言させていただいている。2.の最初のポツのところであるが「トンネル掘削に伴うトンネル湧水量と河川流量を概念的に整理すると」という書き方をさせていただいたが、ここは「トンネル湧水量と河川流量の構造的な関係から、上流域の河川流量は減少するけども下流の中下流域では河川流量は維持される」というふうに書かせていただいている。その次のポツは前回と変わっていないが、「現時点で想定されているトンネル湧水量であれば、導水路トンネル及びポンプアップによりトンネル掘削完了後にはトンネル 湧水量の全量を大井川に戻すことが可能となる設備計画となっている」としている。3.については、前回会議で委員からご指摘があり、まず最初のポツのところで「地下水の低下の範囲について、JR東海モデル及び静岡市モデルによる水収支解析では、地下水位の低下は南に行くにつれて収束していく傾向にあり」という言葉使っていたが、もう少し分かりやすくということで、「小さくなる傾向にあり、椹島付近ではトンネル近傍に比べて極めて小さい」とした。またその次では「上記1.の中下流域の地下水と河川の表流水との関係から、大井川中下流域の河川流量が維持されれば、トンネル掘削による中下流域の地下水量への影響は、河川流量の季節変動や年変動による影響に比べて極めて小さい」とした。前回は単に「影響は極めて小さい」としていたが、何と比べて小さいのかを書くべきとのご指示をいただいたので「河川流量の季節変動や年変動による影響に比べて極めて小さい」という形にさせていただいた。それから、4.の「掘削工事期間中のトンネル湧水の県外流出の影響」については、最初のところは変わっていないが、二つ目のポツのところで、「2つのモデルによる解析では、トンネル湧水が静岡県外に流出した場合においても、椹島付近より下流側では河川流量は維持される結果となった」とあるが、その次に「なお、このような結果となるのは、同時期に静岡工区内で発生するトンネル湧水を大井川に戻すことにより、河川流量の減少が補われているためであることに留意が必要である」との記述、これは前々回の座長コメントでの注意書きであるが、これを追記させていただいている。
 

【上流域の生態系への影響を議論する】


(江口秀二国土交通省鉄道局技術審議官)
 それから5.の「水資源利用に関するリスクと対応」については、前回と記載は変わっていないが、6.の「今後の進め方」については、今日も議論いただいたモニタリングについて、今後、関係機関や専門家と連携して計画策定や体制構築を行いモニタリングで得られた情報を地域と共有する仕組み作りを行うようにJR東海に指示したということで有識者会議としてJR東海にこうしなさいという形で書かせていただいている。なお書きのところは、上流域では生態系への影響が想定されることから、これについては有識者会議でも議論することを予定しているという形にさせていただいている。
 

【不確実性とリスクの考え方を記載】


(江口秀二国土交通省鉄道局技術審議官)
 p6の「有識者会議の設置目的」であるが、三つ目のパラグラフのところで、「この有識者会議は、これまで静岡県とJR東海との間で行われてきた議論を検証するとともに、JR東海の対策等を評価し、その結果を踏まえて今後のJR東海の工事に対して具体的な助言・指導等を行っていくことを目的としている」と目的をしっかりと書かしていただいている。それから2.「有識者会議における議論過程」の部分は、有識者会議において、これまでどのような議論が行われてきたのか、やはりこの部分がある意味非常に重要なところと考えている。すなわち、先ほど、立ち位置であるとかミッションであるとかそういうことを話したが、有識者会議ではどういう立場で、何をやってきたのか等を明確に書きましょうということで書かせていただいている。時間がないので項目だけ紹介させていただくが、(1)では、有識者会議で議論を進める上での基本的な考え、どういう考え方でやってきたのかっていうことを示している。(2)として実測データの重要性について、(3)では水収支解析をどのようにやってきたか、この部分では静岡市モデルを使うということが提案されたとか、(4)では化学成分分析もやるべきではないかということ、(5)では表流水と県外流出の関係ということで、この部分についてもどういうことをやってきたのかということを書かせていただいている。それから(6)として、不確実性とリスクについての考え方を書かせていただいている。
 3.以降は、具体的にそれぞれがどういう形になっているのかということを説明させていただいていて、主要なポイントについての細かいところを書かせていただいている。こういう構成になっており、今日は時間がないのでざっと説明させていただいたが、これをもう少しブラッシュアップしていかなくてはいけないと思っている。時間がないので、今日ご意見いただければとは思うが、今日以降で個別にご意見いただいても構わないと思っている。
 
(座長・福岡捷二中央大教授)
 それでは森下委員、よろしくお願いする。
 

【季節変動はかなり大きく、渇水期に大丈夫か】


(委員・森下祐一静岡大客員教授)
 この中間報告の今ご説明された主なポイントの3.であるが、5ページの上の所に 「大井川中下流域の河川流量が維持されればトンネル掘削による中下流域の地下水量への影響は河川流量の季節変動や年変動による影響に比べて極めて小さい」とある。これが中間報告の中でも重要な部分だと思っている。それで、中間報告を作成してから、流域の方に説明するということですので、現時点ではまだ会議室での結論ということになると思っている。私はこの流域にもし住んでいたらどう感じるのかということを考えてみた。私が流域の住民だとすると、河川流量の季節変動による影響に比べて極めて小さいというのはどの程度なのかということをまず疑問に思う。季節変動はかなり大きいわけで、渇水期に低下が起こった時に大丈夫なのかということも感じる、そういう疑問があると思う。
 

【掘削前に中下流域の地下水評価システムを】


(委員・森下祐一静岡大客員教授)
 それで、これまでに上流域の水収支解析が行われているが、それは中下流域の地下水評価を目的としたものではなかったわけである。なので、次の段階として私は中下流域でも解析を行う。または水収支の評価を行うべきだとこの会議で発言をした。このことは別途、中下流域でのモニタリングの評価と密接に関係をしていて、流域の方に納得していただくためには、トンネル掘削前に、先ほど、詳細モデルを掘削しながら行うという話であるが、それももちろんやらなければいけないが、トンネル掘削前にその評価システムが整っているということが必要だと私は思っている。この有識者会議では静岡市モデルを使ってさらなる解析を進めたのは大変良かったと思っているけれども、私は中下流域での解析も必要だというふうに発言した。この発言に対する議論をまだしていないので、委員の方々のコメントなり、議論をまずお願いしたいなと思っている。いかがでしょうか。
 

【森下委員は中下流域モデルの必要性に何度か言及】


(座長・福岡捷二中央大教授)
 確かに、今まで森下委員が何度か中下流域のモデリングが必要ではないかと意見を言われたのは承知している。今の委員の意見について、みなさん、いかがでしょうか。
 

【表流水量が維持され、扇頂で涵養なら、地下水に影響は与えにくい】


(委員・徳永朋祥東京大教授)
 一つ確認であるが、森下委員がおっしゃるモデリングっていうのは数値モデリングのことであるか。そうでないとすれば、我々が今まで議論してきたことっていうのは、あと中下流域がどこかっていうことを正確に理解できているかわからないが、扇状地の中の地下水の議論をするということであるとすると、今までやってきていた議論の結果から我々が合意していると思っているのは、中下流域、すなわち扇状地の地下水というのは、今日も話をしたが、大井川の河川水が扇頂部で涵養していているもの、それから扇状地に降っている降水が起源となった地下水になっているということを確認しているということだろうと思う。そのようなシステムとして挙動している場であるとすれば、入り口のところの状況が変わらないというようなことが保証されるのであれば、その場の状況は変わらないと考えるのは合理的であろうと考えるのではないかと私は思っている。であるから、その部分がきちんと保証されるということが、どれぐらい工事の中でできますかということがポイントになってきていたのだと理解をしていて、そういう意味で河川の流量が変わらないような状態になるためにどういう対処をしますかということを議論して、その結果、そこが保証されるということになっているとすると、少なくとも今の状態で下流側の地下水の状態に対して影響を与えるものにはなりにくいだろうと考える。ただ、それは自然の系なのでわからないので、観測をしながら何かあった時には対処するという、これも先ほど申し上げたリスクの観点からの準備をしておくということになっているという意味での議論がされているかなと思っている。これは私の理解である。
 

【学生に「上流域だけで十分」と助言するのか】


(委員・森下祐一静岡大客員教授)
 今、言われたことを私も理解しているが、ちょっと質問を変えます。例えば、委員の皆様のご意見をおうかがいしたいが、もし先生方の研究室で「トンネル掘削が水資源に及ぼす影響」を研究テーマにしている場合、例えば、大学院生が上中下流域全体の水収支解析を博士論文の研究テーマにしたいということを相談しに来たという時に、どういう助言をするかとお尋ねしたい。その時に「上流域だけやれば十分なのだから中下流域が必要ない」と言うのか、それにしても解析であるので、当然初めから議論されているように不確実性が存在するわけで「全体の系で解析するということについては、どういうふうに助言されるのか」という質問に変えてお尋ねしたいと思っている。
 

【地盤や透水性の不確実性が絡んでくる】


(委員・大東憲二大同大教授)
 今の学生にどういうアドバイスするかという話だったが、今回の大井川の解析対象は上流域・中流域・下流域の大きく分けて三つのゾーンがあって、最初は上流域のトンネルの影響を評価するためのシミュレーションを行って、どれくらいの影響が出るかを、シミュレーション上の定量的な評価を行うことである。中流域と下流域については、大井川の流量がダムでコントロールされているという実態があって、それで下流域の水利用はある程度担保できているということを、データを基にして調べているわけであるから、それはそれでまとめれば良いことである。中下流域まで地下水流動シミュレーションをやるということになると、これは逆にトンネルの影響がほとんどないということを示すシミュレーションをすることである。だから、それをやるのであれば、上流域・中流域・下流域の全体のシミュレーションをやって、シミュレーション上でもほとんど影響がありませんということを言わなければいけない。ただ、その時には、地盤の条件や透水性の評価などの非常に多くの不確実性の要因が絡んでくる。細かくやればできるが、パラメーターを入れなければならない。では、どうやってパラメーターを決めるかというところにぶつかる。それは上流域・中流域・下流域の全体でシミュレーションをやってできることであるが、そのシミュレーションに入れるいろいろなパラメーターの不確実性のことを考えた結論を出すことになる。一方、シミュレーション以外にダムの状況とか河川の状況とかのデータの精度が良ければ、それらのデータを用いて結論を出す方が良い。私ならそういうようなアドバイスをする。
 

【問題が起こってからでいい】


(委員・丸井敦尚産業技術総合研究所招聘研究員)
 最初に概念モデルを作るというお話をしてJR東海が作ってくださったかと思うが、大東委員がおっしゃるように概念モデルを作った上で、この部分が重要だというところをフォーカスして詳細な議論に入っていった。あるいは詳細モデルを作るというステップを踏んだわけで、我々としては大井川という全体枠をリファインメント(純化)して、小さい所で焦点を当てて議論したと思っているので、森下委員がおっしゃられたように扇状地区の扇頂部で問題が解消されているのであれば、そこから下は問題ないということがその概念モデルの役割だったわけであるから、今の段階で、大井川中下流域でウォッチすべき詳細なポイントはどこか見つけることはあるとしても、そこをさらにモデル化して計算するというのは、それは問題が起こってからでいいかなと今は思っている。概念モデル上は中下流域については、上流域のどこに深層地下水があり、ほぼ影響を与えてなくて、大井川の河川水とそこに降った降水で供給されるということがわかったので、今の段階では、それで議論を進めていいと個人的には思っている。
 

【そういう方向で議論してきた】


(座長・福岡捷二中央大教授)
 まあ、そういう方向で私も議論してきたと思っている。森下委員、何か。
 

【事前に作ればリスク対策の精度を高められる】


(委員・森下祐一静岡大客員教授)
 今、そういうことをお尋ねしたのは、中下流域でのその評価システムを作って下さいということも私は事前に申し上げている。であるから、上中下流についてのその解析の精度を上げるということと、中下流域での、例えば、地下水流動モデルのようなもので今現在得られているデータを評価するシステム、そちらの精度も上がるという相乗効果で、事前に不確実性が少なくなると思ってご質問した。リスク対策の精度を高めることができるのではないかということで質問したが、現状でよろしいということであれば、見解は今お聞きしたが、中下流域の今得られているデータを使って評価システムを事前に作るということについては重要なことだと思っているので、そちらの方は是非検討していただきたいと思う。
 

【観測の情報を中下流域に提供することが重要】


(委員・徳永朋祥東京大教授)
 森下委員の質問がもう1回繰り返されることであるが、それが数値モデルである必要があるかどうかっていうのがポイントだと思っていて、今回のように豊水期と渇水期とで水質はほとんど変わらないような場所であるということが分かってきて、そういう状態が継続されますということをきちんと監視していくというようなことも、森下委員がおっしゃっているような中下流域の問題が発生していない、もしくは発生し始めた、そういうことが変化しているとして何か起こっているかもしれないということを知るという意味で重要な評価システムの一部だと考える。地下水位だけではなく、水質が空間的な特徴を持っていて、少なくとも2回測ったら季節的に変わっていないような場なので、そういうものをきちんと確認をし続けていきましょうということが、私は今の段階として中下流域に対してきちんとした観測をして、安心していただく情報を提供するという意味で非常に大事だろう、それも評価システムと考えられるのではないかと思っている。
 

【流域全体でデータを評価する考え方を】


(委員・森下祐一静岡大客員教授)
 先ほどの質問に答えていなかったですね。会議の中でも言ったが、上流域と全く同じ解析をやるべきだという言い方はしていない。ですので、今おっしゃったようなことも必要だと私は思っている。どういうことかというと、今あるJR東海の解析モデル、それから静岡市の解析モデルから類推したような流れがあまりよろしくないなと私は思っていて、全体はやはり扱っていますというような、今おっしゃったような評価システムもあるのであれば、それで十分だと思っている。であるから、今いろんな全体のデータも集まってきているから、全体で評価するというような考え方を取りたいなと思っている。
 

【事前に作る必要があるか】


(委員・沖大幹東京大教授)
 時間が大変超過しているところで恐縮だが、まず「極めて小さい」というのはどのぐらいかということに関して不安に思うというのはおっしゃる通りかなと思っている。これは皆で議論したらいいと思っているが、おそらく地下水への影響、しかも悪影響と言った方がいいと思うが、悪影響については、その河川流量の季節変動や年変動による影響に比べて極めて小さく、おそらく検知されないという言い方で私はいいのではないかと思っている。というのは、県外流出する期間は皆さんご指摘の山体の地下水が出てくるので、むしろ河川流量は増えるということなので、地下水への影響がまあ地下水が増えるのは良いことだとすると、言い方には可能性はあるけれども、減るということは非常に考えにくいということではないかなと私は思うが、どういう言葉を使うかというのは我々で議論すればいいと思っている。中下流域についても精密なモデルがあるといいだろうというのもその通りだが、そこで何か影響が出るのではないかということ調べるためにやるには、こんなメカニズムで影響が出るはずだといった何らかの概念モデルがなくてはならなくて、それは例えば今日示された、私が先ほど、けい眼だと申し上げた、地下水位が下がるので椹島より下でも流出の減るところがあるのではないか、といったまさに概念モデルでこうではないかというのが数値モデルで定量的に示されたというような話である。森下委員が先ほどからおっしゃっていることを私なりに解釈すると、こういうメカニズムで中下流域に影響が及ぶ可能性があるのではないかという概念をやはりまず考えて、それが表現できる数値モデルなり概念モデルがないとなかなかこうやっても意味がないと思う。博士課程の学生がやりたいと言っても、お前3年で卒業するのに辞めておけと言うんじゃないかなって、半分冗談、半分本気に思っている。
 ただ、JR東海にとって、そういう中下流域のモデルを作ることには非常に意味があると思っている。その井戸とか河川の瀬切れとかが起こった時に、それが上流域のせいであるかどうか係争になった際に、きちんと私たちはこういうふうに考えるというのを計算できていないと、いや違うと思いますよ、と主張するだけではやはり話にならないので、その意味では事前にやる必要があるかどうかは別として、長期的にはそういう可能性も考えて中下流域のその水流動について、たくさんモニタリングされるわけであるから、それが再現できるような今の言葉で言うデジタルツインみたいなことをやっていくというのは、JR東海のリスク管理として必要とされるのではないだろうか。
 

【沖委員の発言がまとめに】


(座長・福岡捷二中央大教授)
 沖委員から全体の話をだいたいまとめていただいたと思っているので、ただ今の森下委員の言われたことに対する一つのまとめとしたいと思う。私から今日の中間報告案で一点だけ思っていることをお話しさせていただく。ここの有識者会議のポイントとそれから有識者会議における議論過程は、私どもこの有識者会議としての思いを相当書き込めているなと思っている。それはそれでいいのであるが、一点だけ気になることがあって、それは最後の方の南アルプストンネル静岡工区の概要に始まって、トンネル掘削の水資源への影響までのところの事実はこの有識者会議で指導の結果明らかになった事実が、このように書けているが、座長として有識者会議における議論過程の中で、実は気にしていたことがあって、相当議論したことが少し抜けているのではないかということを申し上げたい。それは、私どもに議論のテーマを与えられた時に、トンネルの路線等についてはよく理解していた。その後、トンネルをどう掘るのかということについては静岡県の専門部会が47項目を出しておられたこと。それから、それに関係して静岡県からトンネルの掘り方について相当厳しいご意見をいただいて、私は座長として非常にそのことについて気にしながらこの会議を進めたつもりでいる。ということは何かというと、このポイントの議論過程の中で、トンネルの掘り方に関して相当議論したのだということ、すなわち、最終的な結論は安全性とか経済性、環境性そういったこと、特に安全性が、非常に大事だと思っているので、そういう議論があったということが議論過程の中で大変大事になり、それを受けてこの南アルプストンネル静岡工区の概要に始まって、どういうふうに議論過程を経て、これを水資源への影響へつないでいったのかという話があると思っているので、そこのところ、ちょっと抜けがあるんじゃないかなと思うが、事務局その辺はどう考えているか教えていただければと思っている。
 

【トンネルの掘り方を書き込みたい】


(江口秀二国土交通省鉄道局技術審議官)
 確かに今の2.のところには福岡座長のご指摘のことは入っていない。静岡県から下り勾配で掘れるのではないか、そうすれば、山梨県に流出することはないという指摘があって、それに対して、今日もあったが、突発湧水という観点から施工上、非常に危なく、それでは出てきた水はどうするのか、どうやって返すのか、量はどれくらいなのか、500万トンを流し放しではなくて、静岡県側から先進ボーリングで抜くとか、または時間をかけて戻すことが示されるとの議論に至っているので、今ご指摘にあったトンネルの掘り方、まず静岡県側っていうところから問題提起されて、いろいろ検討してきて、今のような計画になっているということはしっかり書き込んでいきたいと思っている。
 

【次回は事務局の原案を中心に議論】


(座長・福岡捷二中央大教授)
 加えていただいて、次回に向けて是非、そこはしっかりと書いて県にも聞いてもらいたい。そのことを一生懸命議論していただいたことで、結論が出た、結果が完全でないかもしれないが、それなりに努力した結果としてあると思っているのでお願いしたいと思う。時間がもうだいぶ過ぎてしまった。進め方に問題があり申し訳ない。でも、議論ができたのかなと、今日は相当議論をしていただいた。示唆に富んだ意見をたくさんいただいたと思っている。今日のいただいたご意見は、十分踏まえて今一度書き加えることとか、それから修正すべきことも含めて、書き直し修正することはやっていただきたいと思っているのでよろしくお願いしたい。また事務局には、私どもがこの会議として、どのような立場で、どういう考えでJR東海を指導し助言したのかを、私たちの立場になって、ぜひまず原案をたたいていただいて、原案を示していただいて、次回、それをもう1回、それを中心に議論させていただきたい。そのようにしたいと思っている。どうぞよろしくお願いしたい。
 

いい茶0
地域再生大賞