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リニア 国土交通省専門家会議 実名化議事録⑩

国土交通省専門家会議 第10回 議事詳報

2021年3月22日:国土交通省

※この議事詳報は国土交通省が公開した「議事録」に、静岡新聞社の傍聴等の取材を補足してまとめました。「議事録」や会議当日の配布資料は 同省ホームページ でご覧になれます。

 

 (森宣夫国土交通省鉄道局施設課環境対策室)
本日は第10回会議となるが、前回の皆様のご指摘を踏まえ、主にその水資源利用へのリスクと対応についてを中心に議論を行いたいと考えている。

 

 

【リスク対策の考え方を議論】

 

(座長・福岡捷二中央大教授)
 本日の第10回会議では、まず、前回会議で指摘していた、トンネルの掘削工法や不測の事態が生じた場合のリスク対策の考え方などについて、議論をしたいと思う。それでは、議事(1) トンネル掘削に伴う水資源利用へのリスクと対応について、JR東海より資料の説明をお願い出来ればと思う。

 

【想定と異なる地質なら工程を変更】※資料3の説明


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 議事1の説明資料として、右上の番号資料3をご覧いただきたい。トンネル掘削に伴う水資源利用へのリスクと対応について、前回会議での委員の皆様からのご指導やその後の委員の皆様、事務局からのご指導を踏まえ資料を修正したので、修正箇所について説明する。なお、修正した箇所は赤字で示している。
 まずp1をご覧いただきたい。(1)本資料の位置付けの最後のポツの文章になる。水温に関する影響については、今回まとめた、水資源利用へのリスク検討ではなく、生態系へのリスクを検討する際に考慮する旨を追記している。また、次の2)リスクへの対応に関する基本的な考え方について、そのフローを追加した。
 次のp2をご覧いただきたい。 図6.1において、リスクへの対応の基本的なフローとして、まず、モニタリング体制を構築する。その上で、適切なモニタリングを実施することで、トンネル湧水量、河川流量、地下水位等の変化を早期に検知する。変化を検知した際には、湧水低減対策等、その状況に応じた対応を取ることで、それらの変化の解消を図る。これらの対応を取ったとしても、水資源利用に影響を及ぼした場合には、関係する方々と協議し、必要な措置を講じていく。
 次にp4をご覧いただきたい。ページ右下のリスクのナンバー11、12に、工事の遅れに伴うリスクを記載している。これらのリスクの説明文章として、前回会議では「施工計画の変更やトラブル等により工事の遅れが発生した場合」と記載していた。この表現について、西村委員より「施工計画の変更や設計の変更がマイナスではなく、逆に必要だという場合も多いので、表現を少し考えるように」とご助言をいただいた。事前に委員にご相談させていただき今回、「施工上のトラブル発生により工程が遅れたり、地質等が設計上想定したものと異なった場合、工事の安全を確保するために工程を変更したりすることがあります」と修正している。
 

【リスクの点数評価を変更】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 次にp7をご覧いただきたい。ここではリスクの評価について記載をしている。p7の1 番上のポツの文章になるが、前回会議ではリスクについて、影響度と発生確率の2つの要素を考慮し、重要度の評価を行ったと説明した。これに関して、沖委員より「発生確率はハザードの発生確率ではなく、リスクが顕在化するかどうか、リスクを適切に管理できない可能性がどれくらいあるか、ということを示していると感じた。リスクが顕在化してしまう確率を評価していると説明した方が分かりやすい」とのご助言をいただいた。また、今回会議に向けての各委員への事前説明の中でも「発生確率という表現は数学的な表現であり、JRが実施した評価の仕方と合っていないのではないか」等の趣旨のご意見をいただいた。リスクの評価に当たっては、数学的な発生確率を算出したものではなく、委員のご助言の通り、リスクを適切に管理出来ない可能性を相対的に評価しているので、発生確率という表現を管理の困難さという表現に修正した。また、管理の困難さが指す内容について、1)リスクの評価の考え方、ポツの3つ目の文章であるが「管理の困難さは、図6.2、図6.3で示したリスク要因の発生を対象として評価したものではなく、事象の発生に伴う最終的な水資源利用への影響の発生を対象として評価しています」と追記した。  
 さらに、管理の困難さの評価の考え方について、より分かりやすいように一部見直しを行い、「山梨県境付近の断層帯の掘削を含むものは、その湧水量の不確実性を考慮し3点、停電や設備故障のように事前に予備電源や予備設備を用意しておくことができるものは1点、その他は2点とし、管理の困難さを相対的に評価しました」と修正している。
 評価の考え方の修正に伴い、点数の修正を行った。p9をご覧いただきたい。その表の中でリスクのナンバー6の管理の困難さを前回会議では1点としていたものを、山梨県境付近の断層帯の掘削を含むものであるため3点へ修正し、重要度の高いリスクとしてリスク管理を行っていく。
 次のp10をご覧いただきたい。リスクナンバー16は地震・豪雨による発生土の崩壊を想定しており、前回は1点としていたが、今回、1点は事前に設備が用意できるものに限定したので、これについては2点とした。ナンバー18は重金属等を含んだ置き場の遮水シート等の損傷を想定しており、前回は1点としていたが、今回は2点とした。
 次にp11をご覧いただきたい。リスクへの対応に関する記載内容について、先ほどp2 で説明した、モニタリングを実施し、モニタリングの状況を踏まえた対応を取るという基本的なフローに基づくものとし、このページにある③の標題は、前回会議では「影響の評価と対応」としていたが、今回「モニタリング状況を踏まえた対応」と修正した。
 また、p12にモニタリングの状況を踏まえた対応として「工事が要因と確認された場合は専門家等の助言に基づき、更なる湧水低減対策等を実施します。また、これに伴って水資源利用に影響を及ぼした場合には、関係する方々と協議し、必要な措置を講じて参ります」と追記した。
 

【山梨側から時間をかけて流出量を戻す】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 次にp14をご覧いただきたい。前回会議において、図6.6の通り、山梨県側へ流出するトンネル湧水を代替する措置として、先進坑貫通後に山梨県内で発生するトンネル湧水を静岡県側へ流す検討案について、ご説明した。この内容について、補足説明をp15に追記した。この検討案については、先進坑貫通後に山梨県内で発生するトンネル湧水を、釜場を中継しながら順次ポンプアップすることで、県外に流出した量と同量の水を、時間をかけて静岡県側へ戻すという内容である。あらかじめ県外流出量をためておくことのできる巨大な貯水施設を用意し、県境付近の断層帯を掘削する際に生じる静岡県内のトンネル湧水をため、先進坑貫通後、その貯水施設から静岡県側へ戻すことを想定したものではない。
 次にp25をご覧いただきたい。重要度の高いリスクに対するリスク管理の内容を記載している。 図6.7、図6.8にリスク管理のイメージ図を記載しているが、先ほど、p2で追記した、リスクへの対応の基本的なフローに合わせ、一定の対応をとることで、矢印に示すように前の段階の状態に戻ることがわかるよう、図を修正した。
 次にp27をご覧いただきたい。前回会議で丸井委員より「断層破砕帯から出てくる水の水質と地山から出てくる水の水質がどれだけ違うのかというのも確認した方がよい」とのご助言をいただいた。その後、引き続きのご指導をいただき、平常時の対応として、次の通り追記している。資料の平常時の対応の上から2つ目のポツからである。「高速長尺先進ボーリングにより以下の分析を行います。ボーリングの口元湧水量からトンネル湧水量を把握します。ボーリングの口元において、湧水圧試験を行います。ボーリングで採取できる前方の湧水を用いて化学的な成分分析(溶存イオン分析等)を実施致します。これらの結果を周辺の降水のデータ等と比較し、断層破砕帯の位置や断層破砕帯に含まれる地下水の起源、地表面付近の地下水との連続性を推定します。更に先進坑の切羽(掘削時のトンネル先端)湧水の成分分析も併せて行うことで、切羽が断層破砕帯に近づいていることを早期に検知することができると考えております。山梨工区では切羽が断層破砕帯に近づいた時には、予めトンネル湧水量に応じた、薬液注入等の補助工法を実施することにより、トンネル湧水を低減します」と追記した。また、前回会議等において、丸井委員、福岡座長より県境付近の断層帯の掘削時期に関するご助言をいただいた。
 p28の上から2つ目のポツにおいて、化学的な成分分析の結果等を踏まえ、掘削のタイミングを検討することを追記した。これは化学的な成分分析の結果、断層帯に含まれる地下水が地表とつながっていると判明し、トンネル掘削により大量の湧水が見込まれ、河川等に即座に大きな影響を及ぼすことが事前に判明した場合などが考えられる。
 次に、p30をご覧いただきたい。水質に関する重要度の高いリスクに対するリスク管理の内容を記載している。リスクナンバー13はトンネル湧水が想定と異なる場合には、処理設備の容量超過によって水質への悪影響が発生するリスクである。このリスクに関する影響発生の兆候や影響発生の可能性を捉えるための参考値としては、処理設備の処理容量としている。前回会議で、大東委員より、参考値を処理設備の処理容量とすることについて「水質の異常値と濁水処理設備の容量とセットにするような形のリスク管理の参考値としてはどうか」とのご助言をいただいた。事前に委員と相談させていただき、今回、平常時の対応のポツの5番目に「トンネル湧水については、河川放流前に表6.3、表6.4に記載の基準値以下に処理した上で、河川へ放流します」と記載した。
 続いて、p31をご覧いただきたい。森下委員より「影響発生の兆候段階においても、静岡県、利水者等の関係者へ速やかに連絡した方がよい」とのご助言をいただいたため、その旨を最初のポツの文章に追記している。また、前回会議で徳永委員より「水質に対するリスクに関して、水質が良くないものに対してはトンネル湧水を外に出さないように一時的に貯留することがリスクに対する重層的な対処になるのではないか」とのご助言をいただいた。p31、p32 の影響発生の可能性段階の対応にトンネル湧水を予備設備やトンネル内の配管等に一時的に貯留することも検討する旨を追記している。そのほか、言葉の使い方や図の表現についても適切なものにするよう、ご助言をいただいたため、資料全体を通して修正をしている。説明は以上である。

 

【リスク評価の重要度を訂正】


(沢田尚夫JR東海中央新幹線推進本部副本部長)
 一部の資料の修正についてお話させていただきたい。p10の表について、リスクナンバー16のリスクの評価の重要度(C)は、3点は誤りで正しくは6点である。同じくナンバー18も重要度(C)について、3点は誤りで正しくは6点である。
 

【そのように修正を】


(座長・福岡捷二中央大教授)
 ではそのように修正お願いします。ありがとうございました。ここまでの説明に関して、委員の皆様からご自由にご質問、ご意見をいただきたい。
 

【湧水低減対策を具体的に示して】


(委員・大東憲二大同大教授)
 リスクの対応を非常に丁寧にまとめていただきありがとうございました。p2のフローの図(図6.1)をつけていただいたが、このフロー図についてお伺いしたい。モニタリング体制を作って、実際にモニタリングを実施して、そこで何か変化がありましたというときに、矢印の一番下の「水資源利用に影響を及ぼした場合には」というところにすぐつながっているが、資料の後ろの方には、モニタリングで異常値が出たら、何らかの対策をとると書いてある。本来であれば、水資源に影響を及ぼす・及ぼさないではなく、異常値が出たときにこういう対策を取りますよと、それでもさらに水資源に影響が出たら、関係の方々と協議対応を取る、という、もう一つ間にはまらなければいけないのではないかと思う。それは実際にp11③のモニタリング状況を踏まえた対応というところに、モニタリングの状況を踏まえ、湧水低減対策等をまずやると記されている。この湧水低減対策というのがもう少し具体的に示して、それでさらに問題があった場合、関係者と協議する、というような文を間に挿入しなければならないと思うがいかがか。
 

【影響が出た場合に利水関係者と協議】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 p2の図6.1の書き方があまりよくないのかもしれないが、おっしゃる通り、変化を検知したら変化が元に戻るように対応を取っていく。この水色の③というところが、湧水の低減対策等を取っていって、いろいろな努力を行っていくことを示している。それを繰り返し行ったとして、それでも、万が一、中下流域の水資源利用に影響を及ぼした場合は関係する方々と協議し、必要な措置を講じるということであるため、欄外になるかもしれないが、そういうことがわかるように修正して参りたいと思う。
 

【観測データを広く公開するシステムを】


(委員・丸井敦尚産業技術総合研究所プロジェクトリーダー)
 今回赤字で多くの修正がなされ、JR東海が非常にわかりやすく資料を作ってくれたことにまずは御礼申し上げる。その上で、p2のところで、大東委員とは方向が違うかもしれないが、事前のバックグラウンドデータをしっかりとって、異常が発見された場合には、というのは少々疑問であるため教えていただきたい。これはJR東海の方が今までのバックグラウンドから外れている観測値が見つかった時というふうに読み取れるが、このデータを広く一般に公開する、例えば地元の中学生や高校生の方も含めて見ていただき、科学的あるいは工学的な知識を蓄えるとともに地元愛を深めていただき、異常を発見するような、みんながウォッチするシステムを作るとか、あるいはAIによって外れ値を観測するようなシステムを構築して、誰が見てもちょっと問題があるぞというデータをしっかり抜き出すというようなシステムは構築できないのかと思い、1問目として伺いたい。データはJR東海のものであるため、なかなか皆さんに出せないという管理上の色々な制限があるだろうが、そのあたりも含めてそういった公開する、あるいはみんなの目で見られるようにすることができるかどうかを伺いたい。
 

【県外流出分を山梨県から戻す案はどう理解を得るか】


(委員・丸井敦尚産業技術総合研究所プロジェクトリーダー)
 それからもう1点、p15で山梨県側に流出していた地下水をいずれ山梨県側から持ってきたものと交換するというようなことが示されているが、これは静岡県側が理解して納得するだけではなく、山梨県の方にもご理解をいただくものと思っているが、そういった時の説明の仕方等についても、もしアイデアがあれば教えていただきたい。
 

【モニタリング体制を事前に構築したい】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 1点目は、モニタリングの結果と違うというのは、我々だけで判断するつもりは全くなく、資料2のモニタリングのところでは記載しているが、トンネル掘削前から専門家のご意見をいただけるようなモニタリング体制をつくり、そこでバックグラウンドデータからモニタリングの着眼点等も事前に確認いただくといった事を考えている。広く皆様の見えるような形で進めて参りたいと考えている。その点はもう少し資料の中にもわsかるように追記したい。
 

【山梨県の湧水量を確認する】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 いったん山梨県側に流れた水を戻すことについては、山梨県のご理解をいただくことも重要であるので、今後、山梨県の中でトンネルを掘ってどれくらいの水が出るのかといったようなことも確認しながら、これは選択肢の1つとして提示したものであるので、このような対応を取る場合は、具体的なことについてはさらに詰めて、山梨県や静岡県、そして利水者の方々にも説明が必要であると考えている。
 

【水利用への影響判断前の情報共有が重要】


(委員・徳永朋祥東大教授)
 私も大東委員、丸井委員と同じようにかなり丁寧に詰めていただいたという印象を持っている。ご尽力されたということに敬意を表したい。同じく図6.1について、どういうふうにやるかということの理解をしやすいようフローチャートを書いてくださっているという意味でメッセージ性が大きいと思うが、最後の灰色のところが「水資源利用に影響を及ぼした場合には」と書いているが、実際にやられる事を書いているp11やp31では、大きな変動が出た場合にはデータの報告をするということも書いていて、水資源利用に影響を及ぼしたという判断になる前であっても、通常ではないことがある場合には情報を共有する、ということが書かれていると私は読んだのだが、それは物事を進めていく上で非常に重要なやり方だと思っていて、このフローチャートの中にも、そういうことをしながら、さらに影響を及ぼしたという状況になった場合にはここに書かれている必要な措置を取るという、ステップを踏んで進めていくということが分かるようにに書いておいていただくとより良いと思う。
 

【委員の意見を踏まえて直す】


(沢田尚夫JR東海中央新幹線推進本部 副本部長)
 ご指導ありがとうございます。徳永委員がおっしゃった趣旨をよく理解して、そのようにフローチャートを修正していきたい。少々省略している部分もあるため、先ほどの大東委員のご指摘と丸井委員のご意見を踏まえ、分かりやすく直していこうと考えている。
 

【観測の生データを住民に示して】



 (委員・沖大幹東大教授)
 今のモニタリングの点について、多分心配している方としては、できればリアルタイムで、 例えば湧水量が今日はいくらだったというような情報があれば、昨日と変わらないな、減っているな、少しずつ増えているなということがわかると思う。ところが今の書き方だと、異常 事態の兆しがあるときに、まずご判断されて、吟味されて、問題ないとか注意深く見守る必要 がある等、解釈を加えた結果を通知するというふうに読めるのだが、もちろん機械の誤差や ノイズ等、いろいろ要因があるため、生データを出すのが怖いというお考えがあるのではと思う が、できる限り、モニタリングでまずは生の値で今何が起こっているかを住民の方々や市町 村の方々が見られるようにしていただくということが相互理解に繋がるのではないかと思う。技術的なあるいは組織的な困難さはあるかもしれないが、ぜひご検討いただきたいと思う。
 

【管理基準設定で恣意的運用できない】


(委員・西村和夫東京都立大理事)
 今の話に関わることだが、図6.1は極めてざっくりの絵になっているため、逆に分かりにくくなっているし、見えないから不安が生じているというか、そういう書き方になっている。実際は、例えば、ここで影響が及びそうだ、及んだという判断は管理基準をつくるはずである。だからそういう基準は第三者の専門家の意見を踏まえた上で事前設定するため、恣意的には運用できないはずである。そういうことが分かるよう、あまり細かいことは書かなくて結構だが、しっかり記載はしておいた方が良いと思う。
 

【図6.1は次回に向けて修正を】


(座長・福岡捷二中央大教授)
 図6.1についていろいろご意見が出たため、次回に向けて修正等をよろしくお願いしたい。
 

【北陸新幹線深山トンネルは即時に観測情報を公開】


(委員・大東憲二大同大教授)
 モニタリングについて関連情報をご紹介する。北陸新幹線の深山トンネルの関係で、そこのデータの公表の仕方は、毎月1カ月おきの情報を全部プレス発表していた。トンネル掘削が佳境に入って進み方が早くなってからは2週間ごとに公表している。3月上旬に公表予定のデータがこの間出てきたのだが、3月5日に深い井戸の地下水位が大きく乱れた。  
 今、なんだろうという話をしているが、もしかすると南太平洋のマグニチュード8.1の地震の影響をそこで感知したのではないかというようなことも議論をしているような段階である。このようにリアルタイムで情報はオープンにしている。
 

【過去10年の水位が基準だと変化を見過ごす】


(委員・森下祐一静岡大客員教授)
 委員の皆さんのお話を聞いているとだいたい同じようなスタンスで仰っていると思うが、それに鑑みると、少し違和感のある表現がp9のリスクのナンバー1にある。この③に「モニタリング状況を踏まえた対応」があり、この後半部分は先程来お話しされていることだが、この前に「中下流域の地下水位のこれまで過去10年間に計測された範囲を下回った場合」とあり、 これが大変違和感がある。例えば、水位の高い季節に何か異常が起きたという場合には、当然、その過去10年に計測される範囲を下回ることはないわけだから、その変化を見過ごしてしまって、例えば、薬液注入等の補助工法を取らないというようなことになる。そして、その機会を逸してしまった場合には渇水期になってから初めて影響が現れるということになると思う。もちろん、この「下回った場合や~」の後に書いてある部分が先ほどからお話されていることなのだが、この前段の過去10年間という非常に大きな範囲のことをここに出すのは何かの保険のつもりなのか、私には趣旨が分からないのだが、どういう意味があるのかまずそのことをお尋ねしたい。
 

【季節ごとに基準を変えることも】


(沢田尚夫JR東海中央新幹線推進本部副本部長)
 森下委員がおっしゃったようなご意見をこれからきちんとお聞きしながら基準というものを決めていかなければいけないと思っている。ここで10年と申し上げたのは、ミクロな見方、マクロな見方はあるが、これまでこの地域の地下水位はマクロに見れば比較的安定しているということがあるので、正直10年、5年などにあまり深い意味はまだ持たせておらず、データがある範囲でなるべく長く、というような意味である。長い目で見て、マクロな目で見て、まずどうかという話を書かせていただいた。その中で今、森下委員がおっしゃったように、年変動のような話、渇水期、豊水期はどうか、そこは見ていかなければいけないと思っている。そこは一概に10年というスパンで見るのではなくて、年の中の変動もきちんと考慮した上で、例えば、季節ごとに評価というか基準を変えるといったようなことも出てくると思うので、JR東海で独りよがりにならないような判断基準・指標をいろんな方のご意見を聞いて決めていきたいと思う。まずは早速、単純に10年で良いのかというご意見をいただいたので、もう少し過去のデータ見ながら考えていきたいと思う。
 

【事前にデータを評価する仕組み構築を】


(委員・森下祐一静岡大客員教授)
 わかりました。この次の、これまでみられなかった変動の傾向を示した場合、というのは先ほど来お話しされていることだと思うが、先ほど、沖委員からご指摘があったとおり、生のデータをとりあえず出してくださいというお話があり、それは大事だと思う。それに加えて、解釈された部分というのも必要なわけだが、それについてこの文章の中には専門家の意見を入れてという話が書いてあるが、その評価する仕組みを事前に作っておくということがやはり必要であろうと思う。これまで見られなかった変動の傾向というのがそれほど明確ではない場合があると思うので、どのようなデータなら、そういうことに当たるのかということは、やはりその事象が起きてから考えるというよりは、事前に考えておくというその仕組みをつくっておくことが重要ではないかと思っているが、いかがか。

 

【理解得られるように事前に作る】


(沢田尚夫JR東海中央新幹線推進本部副本部長)
 これからトンネルを掘削するようになれば、そういった仕組みがないとやはり皆様のご理解を得られないと思う。モニタリングの方の資料にも触れさせていただいているが、事前にどういう風に評価していくという考え方や仕組みを整えてからでないと、掘削することになかなかご理解を得られないと思っているので、そこを作っていこうと考えている。

 

【リスクナンバー4、5の表現も検討を】


(委員・森下祐一静岡大客員教授)
 わかった。補足だが、先ほど、過去10年間という表現に違和感があると言ったが、同じような表現がリスクナンバー4と5にもあるので、こちらもまとめてご検討いただきたい。

 

【詳細モデルはどのようなものを指すのか】



(江口秀二国土交通省鉄道局技術審議官)
 今のモニタリングにも関係する話であり、今日はあまり議論になってないので確認をさせていただきたい。かねてより水資源の問題では、山梨県境付近の断層の部分にどれくらい水が含まれているのか、突発湧水がどの程度になるのかが分からない状況になっている。
 本日の資料のP27には、前回、委員からもご指摘あったが、高速長尺先進ボーリングにより湧水量や水圧、さらに化学的な成分分析も行うことが示されている。丸井委員は以前からトンネル湧水に関して、詳細モデルを用いてということをお話しされていたと思う。また、県からも詳細モデルを用いてトンネル湧水の推定の精度を上げるべきだという指摘も我々は受けている。私自身まだ理解できていない点もあるが、丸井委員が指摘されている詳細モデルというのはp27に書かれているようなデータに基づいていろいろと検討していこうということを意図されているのか。それとも今までのJR東海、または静岡市モデルを新しくモディファイ(修正)して、今の段階で何かを作らなければならないということなのか。ご指示いただきたい。

 

【詳細モデルでボーリング時の周辺地下水の詳細を予想】



(委員・丸井敦尚産業技術総合研究所プロジェクトリーダー)
 どうもありがとうございました。私が申し上げている詳細モデルについては、実際にボーリングが進んだ時に、より安全に工事をするために、その周辺の地下水がどうなっているかを、ある程度、詳細に予想しておく必要があるというところで、詳細モデルと申し上げたが、まず文章から言うと、このp27に書いてある赤字のところは、私が申し上げたことが的確に表現されていると思っている。
 実際のところ、掘削することによって亀裂帯でない部分からどのくらい水が出るかとか、あるいは亀裂帯からどのくらい水が出るか。そして、仮に大量の水が出た場合だが、深部の地下水が地表付近の地下水と連結していて、(地下水が枯渇するような)危ないエリアがトンネルだけで終わるのか、それとも地表面まで含めて、いろいろ影響が出るのかといったところを知りたい。そのため、水の量や、水質、あるいは水温と合わせて、例えば、どんな水質の水が出て来たら、その周辺だけではなくて、地表面まで広がってしまうということを頭の中に、最初に描いておいて、工事をしてくれというお願いをしたつもりだった。

 

【山梨や長野の工事データから詳細モデルを】


(委員・丸井敦尚産業技術総合研究所プロジェクトリーダー)
概念的なモデルは、これまで第7回、8回、9回でしっかり作っていただけたかと思っているので、例えばだが、p27に今、ご指摘いただいたように、文章として書かれているので、こういったものを漫画で書いていただくとか、あるいは山梨県とか長野県とか、既に工事が始まっているところで、山体内部の被圧された地下水が地表面の水と相互に影響がある場所だとか、断層があるとか、上に大きな谷があるとか、そういう地質の弱線のところだったら危険だとか、あるいは、こういった場合には被圧されているものの水質が非常に安定していて、例えばだが、年代が古い地下水が入っている場合には、影響がないなどのようなことが他の所で分かっていれば、そこから類推して、大井川の下を通るトンネルを掘っている時に、ここら辺だったらより危なくなるということがあらかじめ分かるのかと思っていた。なので、p27に特に赤字で書いてあるようなことを念頭に置きつつ、例えば、これからは山梨県、長野県の既に行われているトンネル工事のデータなどを使って、静岡工区をより詳細に理解できるような、頭の中に描いたモデルを、まず見せていただいて、工事をより安全に進められるような詳細モデルの構築に移行していただけたら良いと思っている。
 

【掘る段階で必要に応じて作るのか】


(江口秀二国土交通省鉄道局技術審議官)
 確認だが、要は、今のように、今の段階でこういうことをやるとこういうことが分かるよねというような、イメージというか、そういったものを今の段階では作っておいて、実際に掘り始めて、先進長尺ボーリングでデータが取れた時には、もう少しそれに基づいて詳しく調べてみようとか、そういうようなイメージを作って、掘る段階では詳細なものを必要に応じてつくるようなこともやっていこうと、そういう理解でよろしいか。
 

【そうだ】


(委員・丸井敦尚産業技術総合研究所プロジェクトリーダー)
 そうである。
 

【JRはトンネル湧水に関する図の提出を】


(座長・福岡捷二中央大教授)
 ありがとうございます。丸井委員がかねてより言われていたトンネル湧水に関しての詳細モデルについて説明を加えていただいたが、JR東海には図にするくらいのものを出してみたらと、それで工事について考えてみたらということを言っていただいたのでよろしくお願いする。P27の件はよろしいでしょうか。他には何か。
 

【基準超え残土置き場の崩壊リスクは】


(委員・森下祐一静岡大客員教授)
 p10の表6.2に戻っていただきたい。この16番に「地震、豪雨等により発生土置き場の崩壊が発生した場合」とあるが、これは発生土が対象であって、対策土は入っていないのか。18番を見ると対策土のことが書いてあるが、施工というジャンルの中に入っている。地震、豪雨等により、崩壊が発生するのは、リスクとしては、発生土も対策土も同じだと思うが、そのあたりのまとめ方、あるいは、それを除外してあるということなのか。考えを聞かせていただきたい。
 

【基準超えの残土置き場も崩壊防止へ対処】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 16番は、イメージしたのは、燕沢のような、非常に大量の土砂を置くという場所を念頭に置いていて、そこで何か大きな自然災害が起きた時に、そこの盛土が崩れて、大量の土砂が川に流れることによって、それが河道閉塞を起こすのではないかということを想定はしているが、その他の置き場、対策土の置き場でも崩壊しないようにするのは同じことであるので、リスクの中には含めたいと思う。対策土の置き場の崩壊防止ということについても、それらのリスクへ対処するということは同じである。

 

【生データをそのまま公開すると混乱する可能性】


(委員・徳永朋祥東大教授)
 モニタリングのデータの公開の件だが、計測しているデータというものには、さまざまなノイズ(無関係な情報)であるとか、工事を行う時の事業の進捗によるトラブルとか、そういうものが入る。そういうことに関して、何もしないデータをそのまま出してしまうことが本当に良いのか。ある種、データの質について、一定の確認をしてから出した方が良いのか、様々な立場があると思う。ただ、そのデータを計測したものを、そのまま公表して共有するということが、引き起こすことがあり得る混乱というものについても、何らかの想定をして、準備をしておく必要があるかなという気がする。先ほど、委員が言っていた、月に1回出すというのは、月に1回のデータを見た上で、これで良いということで、出されているのだと思うが、それが気にならないということは極めて重要だが、一方でそういうある種の計測されたデータが抱えている課題というものも考えておく必要があるのではないかなと思って発言した。
 

【深山トンネルはデータに解釈付けて公開】


(委員・大東憲二大同大教授)
 先ほど、データの公開の件で発言したので、補足だが、北陸新幹線の深山トンネルのデータは、確かにいろいろな状況のデータがある。例えば、計器の不備で欠測している、あるいは、機器の入れ替えの操作のために、水位が大きく変動した、あるいは、雨が非常に少ないので、今こういうように、地下水位が低下しているという情報である。それに対して、鉄道建設・運輸施設整備支援機構からコメントを付けて、送っていただいている。そのいただいたコメントに、我々が納得できないなという時には意見交換をするということなので、まず、最初に、計測しているデータの解釈と実測データとセットにして我々に送ってくる。それを見て、2週間や1カ月間のデータをまとめて、公開するというプロセスを取っている。つまり、生データを専門の人たちに直接送って、その時には当然、事業者の解釈も込みで送って、判断していただくということになる。
 

【JRから説明を】


(座長・福岡捷二中央大教授)
 徳永委員のご意見に対して、JR東海から説明があればお願いしたい。
 

【利水者や流域市町と話し合う】


(沢田尚夫JR東海中央新幹線推進本部 副本部長)
 確かに徳永委員の言ったような側面はあると思う。一方で、利水者、流域市町の方から見れば、ある日、突然、JR東海から「影響があります」と言われると抵抗があるかと思う。データの種類や測り方、リアルタイムで公表するのかあるいはひと月なのか、いろいろなパターンがあると思う。いずれにせよ、先ほども申し上げたように、いろんな測り方であるとか、測ったものの判断であるとか、どこに境界を置くかという話は、JR東海の独りよがりで決められる話ではないので、なるべく早く出すというのが一般的に良いと思うが、徳永委員がおっしゃったような側面も考えつつ、利水者の方や市町の方が、そういうやり方で良い、ということをある程度キャッチボールをしながら決めていくものと思っている。今の時点でなかなか決められないが、そこはよく話し合いをしながらであると感じた。もちろん、徳永委員がおっしゃったことや大東委員がおっしゃった事例も良く勉強させていただきながら決めていこうと思う。
 

【十分な検討と話し合いを】



(座長・福岡捷二中央大教授)
よろしくお願いしたい。非常に、今後そういう面もあるかと思いますので十分な検討が必要かと思います。前回、JR東海より示されたリスク対策の考え方、評価の指標など前回会議での指摘を受けて相当修正された。それらに対しても、引き続き考えるべきというご意見もあったので、引き続きよろしくお願いしたい。JR東海がリスクとして出したものについて、それに対して、もっと考えなさいということもあったが、全体としての方向性としては適正に修正が行われたと思う。また、丸井委員から、以前から出ていた詳細モデルについてもご説明があり、そのことについて、今後JR東海として、工事前、工事中にどうするか等も含めて検討するということになったので、よろしくお願いしたい。なお、断層付近の突発湧水について、想定されている水量等について、現在整理をされているということが、資料の中でJR東海から示されている。次回以降、これについても整理の上で提示するようJR東海に求めたいと思う。リスク対策については、この会議で引き続き丁寧に説明していただきたいと思うがいかがか。
 

【一般の人が分かる絵を示して】



(委員・丸井敦尚産業技術総合研究所プロジェクトリーダー)
 何度も申し訳ない。今座長からもお話があったが、この資料3のp27の赤字を拝見していると、私は、自分が申し上げたことをJR東海はご理解いただいていると思って文章を読んでいたが、先ほど江口技審からもあったように、一般の皆様に分かるようなモデルとか、ポンチ絵のようなものを書いていただいて、より理解が深まるようにしていただければと思う。よろしくお願いしたい。
 

【私も同じ意見】


 (座長・福岡捷二中央大教授)
私も同じ意見である。よろしくお願いしたい。
 

【渇水期の地下水分析結果をまとまり次第報告】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 資料2、大井川水資源利用への影響回避・低減に向けた取組みについて説明する。資料2はこれまでの会議で説明してきた内容について、1つの資料の中で構成を考え、取りまとめを行ったものである。表紙の裏の目次をご覧いただきたい。目次をご覧いただきながら、資料2の全体構成について説明する。冒頭の「はじめに」では、委員の皆様に幅広い観点からのご意見やご指導をいただき、大井川水資源利用への影響回避・低減に向けた取り組みについて、利水者や流域市町の皆様にわかりやすくご説明させていただくことを念頭に取りまとめたこと、取り組み内容は今後さらに流域市町の皆様等からのご要望を踏まえ改善を図っていくことについて記載をしている。その後の章立てとしては、1章から8章までとなっている。また、詳細な図面や計測データ等は別冊資料としている。
 各章について、簡単に説明する。1章は、南アルプストンネルの計画概要である。(1)中央新幹線計画についてでは、中央新幹線の必要性や効果についてまとめている。(2)は南アルプストンネル(静岡工区)の計画概要、(3)は環境保全に関する経緯である。2章は、大井川流域の現状である。(1)は自然状況、(2)は流況、(3)は大井川の水利用の沿革と現況である。(4)は下流域の地下水と河川流量等の関係や地下水位の変動要因分析、(5)は地下水等の成分分析、(6)は大井川流域の水循環の概念図(現況)である。なお、地下水等の成分分析は、昨年夏の豊水期に現地での計測を行った結果について、第6回会議で報告をしたが、その後実施した渇水期の計測結果を現在まとめている。渇水期での計測は、吉田町や牧之原市の河川や湧水についても調査をしており、結果がまとまり次第報告をする。
 3章は、トンネル工事による影響と水資源利用への影響回避・低減に向けた基本的な対応である。南アルプストンネル(静岡工区)の工事により、どのような事象が発生し、それに伴い利水者の皆様等にどのような影響を及ぼす可能性があり、影響を回避・低減するために、どのような対応をとるのかについて、基本的な考え方を示している。
 4章は、工事着手前段階における取組みである。(1)は工事着手前の地質調査、河川水の流量調査、地下水調査等である。(2)は大井川中下流域の水資源利用への影響検討として、トンネル掘削前と掘削後で、上流域における水の流れがどう変化するのかをイメージ図で示すとともに、水収支解析(流量予測)モデルによる解析結果について、河川流量への影響を中心に記載している。(3)は大井川中下流域の水資源利用への影響検討として、地下水位への影響について、水収支解析結果、実測データ、成分分析結果から記載している。(4)は大井川流域の水循環図(掘削完了時・掘削完了後恒常時)である。(5)はトンネル湧水を大井川に流すための施設計画、(6)は山梨県境付近の断層帯におけるトンネルの掘り方・トンネル湧水への対応についてである。(7)は千石斜坑等の掘削方法と山梨県境付近の断層帯の掘削方法の比較、(8)は長野県境付近におけるトンネルの掘り方・トンネル湧水への対応である。(8)については、新たに追加した部分であるため、後ほど説明する。
 5章は、工事実施段階の取組みとして、斜坑、導水路トンネル掘削、先進坑掘削、本坑掘削と掘削工事を進めていくにあたり、施工中に得られたデータを、その後の施工計画にフィードバックしながら工事を進めていくことについて記載をしている。
 6章は、工事完了後における取組みとして、河川流量、地下水位、水質について、モニタリングを継続することを記載している。7章は、本日議事1で説明したリスクと対応についてである。8章は、モニタリングについて管理体制を構築し、モニタリングから得られた情報を環境保全対策に反映することを、住民の皆様にもわかりやすくすることで、住民の皆様のご安心につなげていくこと、また、工事前、工事中、工事後に実施する具体的な内容について、まとめて記載している。全体の構成の説明は以上である。

 

【長野側への流出湧水予測は2万~20万トン】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 続いて、本資料において、トンネルの堀り方、トンネル湧水への対応に関して、これまでに説明していない内容を追加したので、その内容について2点説明をする。1つ目は、長野県境付近の工区境や県外流出するトンネル湧水量についてである。p4-95の(8)長野県境付近におけるトンネルの掘り方・トンネル湧水への対応である。図 4.67に南アルプストンネルの縦断線形を示す。赤い線がトンネルの計画線、黒い線が地表面、左側に標高を示している。長野県境付近においては、3000メートル級の稜線が続いており、中央新幹線は、その中でも比較的標高が低い箇所を通過しているが、それでも県境付近における土被りは約1400メートルとなり、国内では最大となる。非常に大きな土被りに工区境を設けることは、トンネルの断面を維持する上で、避けるべきとされていることから、県境付近の最大土被りを避けた位置に工区境を設定することとし、静岡工区と長野工区の掘削工程を勘案し、静岡県側に入った位置の地質の切れ目を工区境とすることとした。長野県側から工区境まで、上り勾配で掘削することとしている。長野県側から工区境まで上り勾配で掘削することに伴い、工事期間中、先進坑が貫通するまでの間に、静岡県内のトンネル湧水が、長野県側に流出する期間がある。
 次のp4-96である。長野県側へ流出する湧水量は、水収支解析において、JR東海モデルでは毎秒0.008トン、静岡市モデルでは毎秒0・001トンと予測している。また、流出する総量は、JR東海モデルでは約20万トン、静岡市モデルでは約2万トンである。山梨県境付近と比べて湧水量が小さいのは、空中写真測量による地形判読や地表地質調査による地質構造の把握に基づき、長野県境付近には大きな断層破砕帯がないと想定していることによるものである。なお、長野県側にトンネル湧水が流出する期間においても、山梨県境付近の県外流出期間と同様に、水収支解析において、椹島下流の河川流量は維持される。次のp4-9 7、図4.69に示すように、長野県境付近においても、先進坑が貫通すれば、静岡県内のトンネル湧水は一部の区間をポンプアップすることにより、全て大井川に戻すようにする。長野県境に関する説明は以上である。

 

【破砕帯での排水横坑の掘削は困難】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 2つ目は、山梨県境付近を静岡県側から掘削する際の突発湧水への対応について、一部内容を追記したため説明する。p4-63である。まず、前回会議の振り返りとなるが、表4.6に示すとおり、山梨県境付近を静岡県側からNATMで下向きに掘削する工法については、大規模な突発湧水が発生すると、切羽周辺が水没する危険性があるため、この方法は工事の安全を確保する観点から課題があると説明した。今回追記したのは、p4-64のポツの1つ目である。静岡県側から下向きで掘削する際に、突発湧水に備えて短い間隔で順次、先進坑に直交する位置に多くの横坑を掘り、そこに釜場を設けることで突発湧水が生じた際において、安全を確保できるかどうかを検討した。結果として、湧水が発生している破砕帯において大きな排水横坑を掘削することは難しいこと、地質の不良な箇所で、先進坑から直交する位置に多数の横坑を掘削することは、先進坑の構造安定上、問題が多いこと、さらに排水横坑から離れた切羽で突発湧水が発生すれば、切羽周辺は水没するリスクがあることから、安全性の確保に問題がある。したがって、静岡県側から下向きに掘削することは、やはり工事の安全を確保するうえで、課題がある。資料2の説明は以上である。
  
(座長・福岡捷二中央大教授)
 これまでの説明について、委員の方から自由にご発言いただきたい。
 
 

【渇水の際の水利権への影響は】


(委員・丸井敦尚産業技術総合研究所プロジェクトリーダー)
 JR東海がバックグラウンドデータをそろえ始めたと話していたが、下向きの掘削が難しいため、長野県側又は山梨県側から上向きに掘削する工事をした場合、流出する湧水量を大きく見込んだときに、大井川の流量に対してどれだけの影響があるのか。特に渇水水量の際の水利権にどのような影響があるか教えてほしい。

 

【年間変動はプラスマイナス9億トン】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 我々が持っているデータは年間の総量になるが、これまで大井川の水循環図で示した数値では、大井川の河川流量は神座の地点で年約19億トンであり、年による変動がプラスマイナスで年9億トンである。それに対して、山梨県境付近で掘削する際に流れる量は年約300万トンと年約500万トン、長野県境付近で掘削する際に流れる量は年約20万トンと年約2万トンである。

 

【水利権量には影響ないか】


(委員・丸井敦尚産業技術総合研究所プロジェクトリーダー)
 今の発言の通り、桁が大きく違うようであるが、水利権で確保されている水量には影響はないのか。

 

【水利権の水量は年7億トン】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 水利権についても、資料2のp2-49になるが、水循環図の概念図の中でお示ししている通りである。実績の量だが赤松発電所の下流側に、各利水者様の実績、年間のトータルの数字だが、これを合計すると年間約7億トンであり、それくらいのオーダーであると認識している。

(委員・丸井敦尚産業技術総合研究所プリジェクトリーダー)
 ありがとうございました。

 

【断層破砕で地表まで影響なら多くの出水】


(委員・大東憲二大同大教授)
 本日、初めて説明のあった、資料4-95についてであるが、県境から静岡寄りまで上り勾配で工事をするということであったが、資料4-96の図において、工区境の東側に断層線が入っているが、この断層の評価をどのようにしているか教えてほしい。ここは、明確に地層がずれており、仮に断層が破砕されていた場合、地表面あたりまで影響が及ぶとすれば、多くの出水となる可能性がある。ここまでは調査が進んでいないとは思うが、参考までに評価を教えていただきたい。

 

【現時点で大きな断層破砕帯はないとの考え】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 地形や地質から考えている。あくまで空中写真測量からの地形判読により、この辺りは断層が見られるのではないかといった判読や、地質を専門とするコンサルタントが現地を歩いてみて露頭を見ながら、これくらいの規模の断層があるのではないかという判定を行い、図に反映している。工区境の静岡方には図に黒い線が入っており、何らかの断層があることを想定しているが、それほど大きな断層破砕帯ではないのではないかと現時点では考えている。
  
 

【工事の安全や地下水位低下の問題があるので想定を】


(委員・大東憲二大同大教授)
 工事着工前なので、情報がないとのことで了解した。掘ってみないとわからないとは思うが、工事の安全上の問題や、地下水位低下の問題等もあるので、想定しておくとよいと思う。

 

【青函トンネルの突発湧水についての検討は】


(江口秀二国土交通省鉄道局技術審議官)
 資料2の4-64について、突発湧水に備えてどのような工法があるか、横抗を多く掘って釜場を設けることは難しいとのことだったが、以前、青函トンネルの部分について、毎秒1トン出るとの話があったと思うが、前回本当にこれでよいのかとの議論もあったと思うが、その検討状況を教えてほしい。

 

【突発湧水か恒常湧水かを確認している】


(二村亨JR東海中央新幹線推進本部次長)
 前回、青函トンネルの突発湧水の事例を示し、突発湧水発生後の時間的推移、湧水低減率をグラフで示した。これに基づき、トンネル湧水の全体量に占める突発湧水の割合は少ないと説明した。現在、青函トンネルの湧水の低減、時間的推移が突発湧水なのか他の恒常湧水を含んでいるのかについて、しっかりと確認をしているところである。当時の工事誌や関係者へのヒアリングにより確認をしているので、次回の会議で説明できるよう準備を整えている。
 

【次回検討の結果を】


(座長・福岡捷二中央大教授)
 突発湧水については、先ほどJR東海に次回に検討結果の説明をお願いした。改めてよろしくお願いする。
 

【断層だけでなく連続亀裂も水を引く可能性】


(委員・徳永朋祥東大教授)
 p4-95のところの議論で、p4-96の地質図を使って、ここに断層があるからうんぬんという議論をしているが、以前も申し上げたように、ここは四万十帯で整然とした砂岩とか泥岩とかがあるところなのか、それとも、いわゆる混在岩というかメランジュというか、ここの特有の構造で、例えば、力学的な特性とか水理特性が違う岩石が混在しているのかとか、そういうあたりがよくわかっていない部分があると思う。だから以前も申し上げたが、断層が水を出すという観点もあると思うが、例えば、連続している亀裂等々があると、そこに十分に水を引っ張るということになりうるので、断層だけ見て議論をしているということになり過ぎないように、常に意識しておいていただきたい。
 

【利水者に分かりやすい資料にするよう指示したい】


(座長・福岡捷二中央大教授)
 JR東海から大井川水資源利用への影響の回避・低減に向けた取組みについて、これまでの有識者会議での指導を踏まえ、資料の構成案が示された。本日の意見を踏まえ、利水者に対して分かりやすい資料とするための努力を引き続き行うよう、JR東海に対して指示したいと思う。よろしくお願いする。

 

【オーソライズ(承認)されていない素案を示す】


(江口秀二国土交通省鉄道局技術審議官)
 資料4は毎回つけさせていただいているが、p1が第7回まで、p2には第8回・9回、そして今日の第10回ということで、それぞれどんなことを議論したのかを説明させていただいている。次回の第11回については、いつものとおりだが日時未定ということで、また皆様と調整させていただき、また今日もいくつか宿題をいただいているので、それに向けて準備を進めるという形になると思う。
 本日はもう1つ、お手元に「大井川水資源問題に関する中間報告(素案)」を配らせていただいており、これについてご説明させていただく。前回の会議において当方から、「リニア中央新幹線静岡工区有識者会議におけるこれまでの議論について」ということで、前回の第9回会議では、第8回までどのようなことが今まで議論されてきたのかということをお示しさせていただいた。非常に雑ぱくな資料であったため、第9回でも皆様方から意見をいただき、また第9回が終わった後も、皆様方からこの資料についてコメントをいただいて、今日、この中間報告という形で、素案ではあるが示させていただいている。これについて、簡単に説明させていただいく。
 今日お示しさせていただいているのは、まだ皆様方からオーソライズされているわけではなく、前回の会議でのコメント、その後、各委員からいただいたご指摘を受けて、事務局として、こんな感じかなということで示させていただいている。p3には目次があるが、最初に主なポイントというところから始まり、1.で有識者会議の設置目的、2.で有識者会議における議論の過程、3.で現在の大井川流域の流況、4.で南アルプストンネル静岡工区の概要、5.でトンネル掘削による水資源への影響ということで、5-1でトンネル掘削による地下水位の低下範囲と中下流域の地下水への影響、5-2で大井川の表流水とトンネル湧水との関係、それから5-3として県外流出量の河川流量への影響評価という形で整理をし、6としてリスクの問題、7として今後の進め方という形にしている。今日は主にどういうことを皆様にご議論いただきたいかというと、まずこの有識者会議の中では、委員や皆様からも、大事なことは科学的・工学的な議論を行うということだと何度もご指示いただいている。そういった観点でやるんだということをきちんと打ち出すことが、ひとつ重要なことだと思っている。
 p4に主なポイントとあるが、これも何人かの委員から、だらだらと今まで分かったことを書くのではなく、ぱっと見て簡潔に、こういうことが今まで有識者会議では分かったんだということをきちんと整理するべきではないかとのご指示も頂いたので、主なポイントという形で示させていただいた。また複数の委員の方々から、この有識者会議ではJRに対してどういうことをアドバイス又は指導し、それに基づいてどういうことが示されたのか、どういうことが結果として分かったのかをきちんと書くことが、この有識者会議でどういったことを議論してきたかを示す上で重要なのではないかというご指示もいただいている。そういった観点で、まずはp4の主なポイントというところから説明させていただきたい。ここについては、そもそもこういった主なポイントという形で整理するということについてご議論いただきたいのと、それから中身としてどうなのかということをご確認いただきたい。
 簡単に紹介させていただくと、最初に「有識者会議では、静岡県とJR東海の間で議論がなされてきた引き続き対話を要する事項(47項目)のうち、まずは水資源に関する大きな2つの論点である、①トンネル湧水の全量の大井川表流水への戻し方、②トンネルによる大井川中下流域の地下水への影響について、科学的・工学的な観点から客観的な事実関係等を整理すべく議論を行った。これまでの会議での議論により、以下の事項が明らかになった」ということで、1.から5.まで、分かったことを示させていただいている。
 まず、最初は現在の大井川の流況として「・大井川下流域(扇状地内)の降水量、河川流量、地下水位等に関する実測データによれば、中下流域の河川流量は上流域のダムにより利水の安定供給のためにコントロールされ、扇状地内の地下水位は、取水制限が実施された年も含めて扇状地内全体として安定した状態が続いていると考えられる。・地下水等の化学的な成分分析等から、中下流域の地下水は上流域(椹島以北)の地下水によって直接供給されているわけではなく、また地下水の主要な涵養源は、近傍の降雨と河川の表流水からと考えられる」
 2.として、こういった状況の中でトンネル掘削を行うと、大井川表流水にどういう影響が及ぼされるか というと、「・トンネル掘削に伴うトンネル湧水量と河川流量を概念的に整理すると、トンネル湧水の全量を導水路トンネル等で大井川へ戻せば、椹島付近よりも上流側の河川流量は減少するが、下流側の中下流域での河川流量は維持される。・また、現時点で想定されているトンネル湧水量であれば、導水路トンネル及びポンプアップによりトンネル掘削完了後にはトンネル湧水量の全量を大井川に戻すことが可能となる設備計画となっている」。これは第8回で集中的に議論されたところ。最初のポツで「概念として整理すると」という言葉を使わせていただいているが、ちょっと分かりづらいのかなと思っていて、物理現象としては維持されるということが分かったというような、言葉遣いを変える必要があるかと思っている。
 3.としては、トンネル掘削に伴う地下水への影響ということで「・トンネル掘削による地下水位の低下範囲について、JR東海モデル及び静岡市モデルで水収支解析を行った結果、地下水位の低下は南にいくにつれて収束していく傾向にあり、椹島付近ではトンネル近傍に比べて極めて小さいことが示された。・上記1.の中下流域の地下水は上流域(椹島以北)の地下水によって直接供給されているわけではないことなどを考慮すると、中下流域の河川流量が維持されれば、トンネル掘削による大井川中下流域の地下水量への影響は極めて小さいと考えられる」
 4.は掘削工事期間中のトンネル湧水の県外流出の影響で「・JR東海の施工計画では、工事の安全確保等の観点から、県境付近の断層帯を山梨県側から掘削するため、掘削工事の一定期間中は山梨県側へトンネル湧水が流出し全量戻しとはならない。その影響について、2 つのモデルによる解析結果では、トンネル湧水が山梨県側に流出した場合においても、静岡工区内で発生するトンネル湧水を戻すことにより椹島付近より下流側では河川流量は維持される傾向にあった」
5.として、今日ご議論いただいたリスクについて「・トンネル湧水を大井川に戻すにあたっては、想定されているトンネル湧水量や突発湧水等が不確実性を伴うことから、これらに関するリスクと対応等について議論を行った。・このうち、トンネル湧水の県外流出への対応策として、静岡県側からの高速長尺先進ボーリングでの揚水等による流出量の軽減策や、流出量の全量を大井川に戻す代替措置として先進坑貫通後に県外流出量と同量の山梨県内のトンネル湧水を時間をかけて大井川に戻す方策が考えられ、今後、JR東海が静岡県や流域市町等との間で協議されることとなった」
 最後6.では今後の進め方として「・トンネル掘削に伴う河川水や地下水への影響の把握や必要な対策の検討等のために実施するモニタリングについては、今後、関係機関や専門家と連携した計画策定や体制構築、モニタリングで得られた情報を地域と共有する取組みがJR 東海により実施される予定である。・なお、トンネル掘削に伴う上流域での地下水位の低下や河川流量の減少により生態系への影響が想定されることから、その影響の回避・軽減策等については、静岡県で行われている専門部会での議論も踏まえ、今後、有識者会議の場でも議論することを予定している」という形でまとめている。
 次に、最初の目的は省略して、p7の2.をご覧いただきたい。先ほど申し上げた通り、この有識者会議ではそもそも、どういうことをJR東海に指示し、どういうことが分かったのかということを分かるように書いたほうがいいだろうというご指摘をいただいた。ここについても読み上げるので、ご確認いただきたい。

※資料中の2.(p7~p9)を読み上げ

 ということで、これが今までの経緯。3.以降は、これまで議論してきたものを記載しているが、まだ十分に書き切れていないところもあるので、今日のところは3.以降は省略させていただいて、そもそもこういったまとめとしては、このような形でいいのかどうか、特に今日は「主なポイント」と、議論の経過について重点的に説明させていただいたが、これについてご議論いただければと思う。よろしくお願いする。
 
(座長・福岡捷二中央大教授)
 ただ今、事務局から、中間報告(素案)についての説明があったが、これに関して委員の皆様から自由にご質問・ご意見をいただきたい。

 

【影響の「大きい」「小さい」は相対評価で記載を】


(委員・沖大幹東大教授)
「主なポイント」について意見を申し上げる。やはり、ここで全体像を把握されようとされる方が多いと思うので、言葉づかいには重々注意する必要があると考える。そういう観点から言うと、まず「1.現在の大井川流域の流況」の1つ目の最後、「安定した状態が続いていると考えられる」となっている。これは考える話ではなく、実測データに基づいて分析したら、安定した状態が続いていた、ということなので、もう「続いている」で止めてよいのではないかと考える。
 2ポツの概念的にという言葉が少しおかしいと江口技審も自らおっしゃったが、また良い言葉を選んでいただければと思う。3ポツだが、一つ目の地下水位の低下は南に行くにつれて、収束していく。私たちにはわかるのだが、収束という言葉では何と何が収束するかが、分かりにくいので、例えば地下水位の低下量は南に行くにつれて縮小していく、つまり、縮んで小さくなるという言葉の方が、あるいは分かりやすいかなという気がする。
 そして一番はその下の2つ目のポツの最後だが、地下水流量への影響は極めて小さいとある。「大きい」「小さい」というのは常に相対評価ではないかと考える。比べる相手がない場合であれば、普通はこれぐらいの大きさであるというのに対して、それよりも大きい小さいという判断をする。実際、上のポツの方では、トンネル近傍に比べて極めて小さいと書かれている。そうすると、地下水量への影響は何々に比べて小さい、極めて小さいという書き方をやはりすべきではないか。そういう意味では、例えば、私たちの議論では毎年の変化に比べてとか、季節変化に比べてといった何か比べる対象を書いて、これに比べて極めて小さいという言い方をしないと、例えば東京ドームいくつ分の水に相当するだとか聞くとやはりそれは大きな水量であると受け止めるのが自然だと思うので、比べる相手をぜひ書いていただきたいと思う。
最後に、p5に「河川流量は維持される傾向にあった」とあるが、「傾向にある」とはどういうことであるか、維持されていたのか、維持されていないのか、これはやはり若干あいまいな書き方で不安に思う方もいるのではないかと思うので、明確な書き方にされてはいかがかと思った。

 

【教えられるところが多かった】


(座長・福岡捷二中央大教授)
 ありがとうございました。非常に分かりやすい、私どもも教えられるところが多かったのではないかと思う。他の委員はどうか。特に、主なポイント、有識者会議の議論過程についての議論をいただきたい。

 

【影響与えない上流域の地下水は「深部」と明記を】


(委員・丸井敦尚産業技術総合研究所プロジェクトリーダー)
 沖委員が大変丁寧に指摘していただいたので、私もあやかって細かいことで恐縮なのですが、申し上げたいと思う。上流域の地下水が中下流域の地下水、河川水に影響を与えていないという話があったが、これは「上流域の深部の地下水が」というふうにしていただけるとありがたい。特に中下流域の皆さんが使っておられる地下水というのは生活に使っている浅層部、比較的浅いところの地下水なので、ここの書き方だと地下水という書き方で深部も浅部も一緒に書いてしまっているが、浅部の方は地下水と書いても良いかもしれないが、深部に関しては深部とはっきり書いていただける方がありがたい。

 

【専門家会議の立ち位置は主なポイントに入れて】


(委員・徳永朋祥東大教授)
 この中間報告は、我々が今までやってきたことをシャープに短くということになると思う。その中で先ほどご説明いただいたp7~p9に書いていることは私たちがどういうスタンスでこの問題に対して関わって来たかということをきちっと書いているわけだが、そのエッセンスが中間報告の一番最初のところに書き込まれていると、このグループが何をやってその結果何を確認したのかということが短い文章で分かると思うので、中間報告の主なポイントが長くなり過ぎないということが重要であるということは理解するが、我々がどういう立ち位置で関わったのか、ということも中間報告の主なポイントの中に入れておいていただけるとよいかなと思うので、ぜひ工夫をしていただければと思う。

 

【次回までに作り直す】


(江口秀二国土交通省鉄道局技術審議官)
 今いただいた委員の意見はいずれも全くその通りだと思うので、書きぶり等はまた直して、次回までに作り直してもう一回確認させていただきたいと思う。

 

【県とJRがかみ合っていない項目が分かるように】


(委員・大東憲二大同大教授)
 みなさん言われた細かい点もそうだが、p7以降の今の過程の中の一番最初のところに、そもそもこの有識者会議が作られた理由というところで、静岡県とJR東海の間で意見がかみ合わない状況が続いていたと記載されている。この意見がかみ合わないとはいったい何に対して意見がかみ合わないのかをあまり明示していない。今回の有識者会議の中で議論した科学的、技術的、工学的なものがうまく共有出来ていない、認識できていないというところがそもそも意見のかみ合わない理由だろうと思って、我々はこの委員会に参加しているつもりだが、意見がかみあわないというのが他に何か所か出てくる。その3つ下の段落で、トンネル掘削に伴う水資源への影響、ここも議論がかみあわなかった要因の一つであるとか、p8の下から2つ目の段落でもリスクに関しても両者の認識の違いがあって議論がかみ合わなかったとか、こういう議論がかみ合わない項目がたくさんあって、それらを科学的、工学的に裏付けをしながらかみ合うようにするというのがこの委員会の目的だと認識しているので、それが分かるような表現にしていただきたい。

 

【国と県の両方の会議を経験する森下委員は】


(座長・福岡捷二中央大教授)
 森下委員に、今の大東委員のご意見に何か加えることがあればお願いしたい。両方のご経験されている先生として。
 

【かみ合わないという表現は違うのでは】


(委員・森下祐一静岡大客員教授)
 私も何がかみ合わないのか、お尋ねしたい。例えば、かみ合わないというのは2つの意見があって、それぞれがかみ合わないというイメージだと思うが、そうではなくて、例えば、中下流域の話をすると「上流域の問題が中下流域の地下水に影響を与えません」ということを言われたので「根拠は何か?」とお尋ねしたら、その根拠はなかったわけである。だから、「了承できない」ということになった。今回は、そこのところに根拠が少し示されてきたので、影響は小さいという結論になった。なので、原文にある「かみ合わない」という表現は違うと思う。

 

【県有識者会議ではJRから回答なかった】


(委員・丸井敦尚産業技術総合研究所プロジェクトリーダー)
 私も静岡県の委員会(有識者会議)に参加していたので、表現ついて考えてほしい。静岡県の委員会でもJR東海に対していろいろとお願いをしていた、それは完結してなかったというかここまで進んでいなかったというだけであって、47の質問項目をちゃんと出しているし、それに対して、いずれは回答してくれると思っていたので、この有識者会議で加速はしたが、静岡県の委員会がとんちんかんだという認識は持っていない。

 

【かみ合ってきたと考えていいか】


(座長・福岡捷二中央大教授)
 ということは、最近はかみ合ってきたと考えていいんですかね。あのつまらない言い方ですが、要するに、まだ十分に議論が進んでいなかったところから、いろんなことが理解が不十分であった、お互いに理解が十分でなかったところが、両委員はこの会議を通して、その辺はどうお考えなのか聞かせていただきたい。いかがか。

 

【解決に程遠いが、データ提出は前進】


(委員・森下祐一静岡大客員教授)
 相手は自然なので、分からないことがたくさんあるという意味では、解決には程遠いなという気もするが、ただ、丸井委員が先ほど言われたことと、今、私が言ったことの中で、実際にデータを出していただけたということに関しては前進したと私は理解をしている。

  

【大きく前進した】


(委員・丸井敦尚産業技術総合研究所プロジェクトリーダー)
 私も森下委員と全く一緒であり、大きく前進したと思っている。

  

【議論の道筋がつながるようになった】


(座長・福岡捷二中央大教授)
 議論を進めるにあたって静岡県からご意見をいただいたこと、また二つの委員会を経験された両委員から建設的なご意見をいただいたことは、会議を進めるに当たって非常に良かったと思う。始めのうちは、議論の道筋がよくわからない面もあったが、だんだんつながるようになり、議論ができるようになってきたことを強く感じた。私の気持ちを伝える機会が少なかったが、両委員のご意見を聞かせていただいたので、私も自分の感じたことを言わせていただいた。ありがとうございました。他にはいかがか。

 

【末尾の表記は明確に】


(委員・西村和夫東京都立大理事)
 この中間報告の主なポイントはp4、p5にコンパクトに書いてある。皆さんの意見と同じだが、先ほど沖委員からもお話があったが、末尾の表記が特に大事だと思う。ここの中で考えられるという言葉がたくさん使われる。これはこういう風に書きたくなってしがちだが、中間報告としてコンパクトに書いている以上はもう少しきちっと言い切った方が良い。資料の5 の後ろの方には確認したとかそういう言葉もきちっと書いてある。いろいろなJR東海からの資料に対して、それを判断しているのもここのはずなのに、考えるという表現は距離を置いた言葉になっている。説得性に少し欠ける。末尾の表現は非常に慎重に決めなければならないが、出来るだけ、ここで判断したとか確認したとか明確なメッセージとして伝わる言葉を出来るだけ選ぶようにしていただいた方が良いと思う。

 

【構成はよろしいか】


(江口秀二国土交通省鉄道局技術審議官)
 中身は今日ご指摘いただいたので、直させていただくが、構成として、まず、最初に主なポイントがあって1ポツで目的、2ポツの部分も細かく指摘を頂いたのでこの後、修正をするが、3ポツで各論というかこういう構成でよろしいかだけ確認したいのだが。

 

【何を指示し、何が明らかになったかをまとめて】


(座長・福岡捷二中央大教授)
 ただいまの件につきましていかがか。これでよろしいか。この方向でやっていただきたいと判断する。よろしくお願いします。それでは、引き続き、次回に向けてよろしくお願いしたい。本日、事務局より大井川水資源問題に関する中間報告の素案が提示された。本日の議論や各委員からの指摘を踏まえ、有識者会議としてこの大井川の水資源に関する大きな2つの論点について科学的・工学的な観点から何をJR東海に指示し何が新たに明らかになったのかが分かるようなまとめ方にしてほしいと思う。また、主なポイントとして何がこの有識者会議で分かったのかなど、その他、もう少し議論の過程も含めて、その辺の雰囲気が分かるようなものにしていただき、かつ簡潔にでもあることをお願いしたい。委員の皆様、この方向でよろしいか。ありがとうございました。それでは、そのように事務局に指示させていただきたいと思う。

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