ラブライブ!効果持続 沼津に人を呼ぶ好循環【記者コラム 湧水】

 沼津市が舞台のアニメ「ラブライブ!サンシャイン!!」の放映をきっかけにした誘客の効果が持続している。民間主導でファンを迎える環境や交流の機会づくりを続けた結果、ファンは単に作品の舞台としてではなく、まちや住民自体に親しみを持って、繰り返し訪れるようになった。まちの魅力を生かすのは住民―。理想の形が見えた。
 元日の沼津市上土町。眼鏡などを販売する「市川」に開店前からファンの列ができた。この日発売された、派生作品のキャラクターがデザインされた眼鏡スタンドがお目当てだ。市川をはじめ「沼津あげつち商店街」の複数店舗は、1年の始まりを聖地で過ごすファンを喜ばせようと特別営業し、関連グッズの発売日に設定した。周辺はにぎわった。
 同商店街の店舗でつくる組織は主要キャラクターの地元に設定されたのを受け、2017年からファンが集うパーティーを定期的に開催する。各店舗が独自のグッズを企画、販売する。聖地巡礼するファンをもてなし、何度も訪れる動機をつくった。
 来訪のたびに各店舗を巡るファンも多く、元日に三重県四日市市から訪れた男性会社員(21)は「ラブライブをきっかけに沼津を知り、今では親戚に会いに行く気分で来ている」と話す。証明写真撮影やスーツの仕立てなど作品に直接関係のない消費活動の場に選び、花壇整備といったボランティアに駆けつけるファンもいるというから驚きだ。
 元日の店舗では、店員とファンが作品について語り合う姿が見られた。商店街組織は一連の取り組み開始に当たり、作品の勉強会を開いたという。「私たちもファンになって楽しさを共有している」(店舗関係者)ことが、良好な関係の構築につながった。
 商店街組織の幹部を務める峯知美さんは、住民とファンの関係を「地元愛(じもあい)でつながる仲間」と評する。ファンがSNSで発信し、新たな人を呼び込む好循環も生まれている。来訪者の増加を経済活性化やまちづくりに生かしきれない地域も多く、観光客の集中で住民生活に悪影響が及ぶ「オーバーツーリズム」も顕在化する中で、沼津の成功例は手本の一つになるはずだ。
 (東部総局・矢嶋宏行)

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