犯罪被害者支援条例 空白エリアの賀茂6市町も整備 24年施行へ 関係者「遅い」「意識高める契機に」

 犯罪被害に遭った当事者や家族を支えるための「犯罪被害者等支援条例」。静岡県内各自治体で整備が進む中、未整備だった賀茂6市町が2024年4月の施行を目指していることが15日までの各自治体への取材で分かった。ただ、関係者からは「他地域に比べ遅すぎる」との指摘も上がる。

犯罪被害者等支援条例の整備状況
犯罪被害者等支援条例の整備状況

 静岡犯罪被害者支援センターが発行する「支援センターだより」。同条例の現状を示す地図には、伊豆半島南部にぽっかりと空白地が。静岡市と吉田町も未整備だが、静岡市は犯罪被害者支援の方針を包括した条例を制定済み。吉田町も賀茂6市町と同様に24年4月の施行を目指す。センターによると、これら8自治体以外は既に整備が完了している。
 南伊豆町の担当者は「近年賀茂では重大犯罪がない。支援への意識も希薄だった」と未整備の理由を説明する。賀茂6市町を管轄する下田署によると、22年の管内の刑法犯認知件数は216件。静岡県内28署でも6番目に少ないが、同署生活安全課は「体感的に治安が良いのには違いないが、完全に平和という意識を持つのは危険だ」と警鐘を鳴らす。
 一方、未整備の背景には地域特有の“問題”も見え隠れする。多くの自治体が合併せずそのまま存続した賀茂地域は、「他市町の動向をうかがいがち」(関係者)ともされる。ある自治体の福祉担当者も「何事も足並みをそろえようとするところはあり、整備が遅れた要因の一つ」と声を潜める。ある町は条例の整備を目指す段階になって、ようやく犯罪被害支援の担当を定めたという。
 同支援センターの三森美津広事務局長は「県内では過去に被害者の居住地によって支援に差が生まれた例もある。整備した自治体から『明文化され動きやすくなった』との声もあり、支援の意識を高めるきっかけにしてもらいたい」と歓迎。一方、ある捜査関係者は「被害者の支援へ行政が果たす役割は大きい。賀茂で重大犯罪が起きていないのはたまたまで、支援の意識が低いことをうかがわせる」と厳しい目を向ける。
 (下田支局・伊藤龍太、松崎支局・太田達也)

 犯罪被害者等支援条例 殺人や性被害関係、全治1カ月以上のけがを負った傷害事件、死亡交通事故などで被害者が発生した際、行政が中心となり社会全体で支援する狙いで定める。各市町のほか国や本県にも支援制度があり、給付金のほかカウンセリング費用や医療費、引っ越し費用などの負担軽減を図る。下田署によると、市町の支援は見舞金として被害者のけがの程度などに応じて10万~30万円を贈る場合が多い。適切な行政サービスも案内する。

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