静岡人インタビュー「この人」 ハンセン病療養所でボランティア活動する 伊東郁乃さん(三島市)

 7年前に動物介在活動団体「ぷらす」を設立。仲間とともに犬を連れて御殿場市のハンセン病療養施設「国立駿河療養所」と「私立神山復生病院」を訪問し、入所者が動物と触れ合える場を提供している。今年は御前崎市出身の元患者石山春平さん(87)の卒業証書授与式と母校訪問を支援した。65歳。

伊東郁乃さん
伊東郁乃さん

 -活動を始めた経緯は。
 「ハンセン病患者の強制隔離を憲法違反と断じ、国の非を認めた2001年5月の熊本地裁判決がきっかけ。人権を無視した国策問題を学ぶ中で、入所者に笑顔の時間を過ごしてほしいと当時から高齢者施設などで行っていた動物訪問活動を療養所でもやりたいと考えた」
 -なぜ、石山さんのサポートを思いついたのか。
 「石山さんの講演を聞いた際、当時通っていた小学校を6年で強制退学させられたが、在籍記録がないとの理由で卒業証書を受け取っていないことを知った。石山さんにとって心が古里と離れたままの状態ではいけないし、行政にもハンセン病元患者の境遇を改めて認識してほしいとの思いがあった。御前崎市に手紙を出して協力を得た」
 -活動で感じることは。
 「家族や恋人との関係を強制的に引き裂かれた当時のつらい出来事が後遺症のように残り、将来を悲観して自殺した人もいた。違憲判決から20年以上が経過したが、今も多くの元患者や家族が差別や偏見を恐れ、心安らぐ生活ができていない。ハンセン病患者の隔離政策は過去の問題でなく、今も続いている」
 -社会に伝えたいことは。
 「コロナ禍で感染者に対する差別偏見があらわになった。強制隔離政策で、行政も私たち市民も加害者側になって苦しめた歴史を忘れてはいけない」
 (御前崎支局・市川幹人)

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