伊豆産ワサビの葉、飼料に 「ダチョウ肉」定着へ 西伊豆の堀さん

 西伊豆町で畜産や食肉加工業を営む堀浩一さん(43)が、環境に優しい畜産が可能とされるダチョウ肉を「わさびダチョウ」と名付け、ブランド化に取り組んでいる。飼料に必要な穀類の量が牛や豚と比較して少ないなどの特徴があるダチョウを、伊豆半島特産のワサビの葉を混ぜた飼料で飼育。自前の解体施設で処理した肉を料理人の経験を生かして飲食店で提供し、身近な食材としての定着を目指す。

ダチョウの世話をする堀浩一さん=10月上旬、西伊豆町宇久須
ダチョウの世話をする堀浩一さん=10月上旬、西伊豆町宇久須


 静岡市清水区出身の堀さんは国内外のイタリアンやフレンチレストランなどでシェフを務めた後、自ら生産した食材のブランド確立を志し、2017年に地域おこし協力隊として西伊豆町で害獣駆除などを開始した。食卓にはまだ縁遠く、新たに参入して勝負できる見込みのあるダチョウ肉で独自ブランド開発の夢をかなえようと、同年に飼育を始めた。
 育てたダチョウは、同町の施設で解体処理してネットで販売する。ダチョウ肉は低カロリー高タンパクで、くさみのない赤身が特徴。22年に近隣の松崎町で開業した飲食店では、柔らかい肉質を生かして、たたきや赤ワイン煮込みなどの料理を提供し、少しずつ知名度が向上してきた。
 堀さんによると、ダチョウは草が好物で穀物を食べる割合が少ないとされ、人口増加や環境変化によって懸念される食糧不足解消に期待がかかる。成長が早く、手のひらサイズのひなから1年ほどで出荷できる大きさに育ち、別の家畜と比べても飼育の効率がいいという。牛などと異なり、地球温暖化の原因とされる温室効果ガスのメタンを含むげっぷをほぼしないともいわれる。
 飼料に混ぜるワサビの葉は未利用部位とされ、捨てられることも多い。活用することで、廃棄量の削減を見据える。堀さんは「新たな特産品として根付かせ、地域への恩返しになればうれしい」と話す。
 現在は、ダチョウの需要に対して出荷が追いついていない状況。安定した供給につなげるため、クラウドファンディング専用サイト「キャンプファイヤー」で15日まで、ひなのふ化に充てる資金を募っている。
 (松崎支局・太田達也)

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