歌で人をつなぐ ソプラノ歌手たえこさん 音楽交流で松崎を活性化

 ソプラノ歌手のたえこ(本名・伏見妙子)さん(36)が松崎町で音楽を通じた地域の活性化に取り組んでいる。町民が作詞に参加する「松崎町のうた」の制作を機に同町と関わり移住し、住民有志と共同でコンサートを開く。突然声が出なくなったり、体が動かなくなったりする病を患いながら「歌で人の心を楽にしたい」と、住民や町外の人が交流する機会を提供している。

歌を通じた地域活性化に取り組むたえこさん=松崎町の伊那下神社
歌を通じた地域活性化に取り組むたえこさん=松崎町の伊那下神社


 静岡市葵区出身のたえこさんは幼い頃から歌が好きで高校進学時に音楽で生きることを決意し、昭和音大で声楽を学んだ。同大3年の時に多忙で無理がたたり、原因や治療法の分からない病を発症。1日に何度も体の一部が動かなくなるなどの発作があり、半日動けない日も。現状を受け止められない期間もあったが、音楽を続けることで「等身大の姿を見せ、悩んでいる人の背中を押したい」と病気を公表して活動している。
 同町には2017年に文化庁の事業の一環で常葉大などと連携し、一つのメロディーを基に住民が歌詞を考える活動が契機となり訪れるようになった。現在は活動を引き継いだ町民有志らによる「松崎町のうたを育てる会」が普及に努め、120曲以上が完成。21年からは同報無線の時報に採用され、親しまれている。
 活動を通じ、豊かな自然や人の温かさに引かれて20年に活動拠点だった沖縄県から同町に移住。心を癒やし、元気にしたいという思いを込めて「こころうた会」と題したコンサートは22年に始めた。毎月同町の伊那下神社で開き、リクエストを受けて歌唱したり、参加者同士が交流したりする。オンラインでも配信し、同町を訪れるようになったファンもいる。
 住民有志でつくる「こころうたを支援する会」の森秀己代表(72)は「たえこさんの歌への思いを知り、支援を始めた。病気を抱えながらでも活動しやすい環境を整えたい」と話す。たえこさんは「町民のみなさんに歌手にしてもらっている。歌で人と人とをつなぎ、地域の魅力を伝えていきたい」と意気込む。
 (松崎支局・太田達也)

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