日軽金 水利権縮小へ 国交省、維持流量初設定 2036年めど【サクラエビ異変 母なる富士川】
国土交通省は28日、富士川水系の河川維持流量を初めて設定し、発表した。2036年ごろまでをめどに、日本軽金属蒲原製造所(静岡市清水区)の十島せきなどの水利権を順次縮小し、生態系や景観に配慮した維持流量を実現する。
「渇水期でも最低限維持すべき流量」の河川維持流量を巡っては、国は昨秋から計4回専門家会議を開催し、方向性を探ってきた。県境に当たる芝川合流点~十島せきの区間では通年で毎秒8・8立方メートルとなった。十島せきは現状最大毎秒75立方メートルの取水が許可されているため、段階的に水利権見直しの調整を行う。
維持流量の設定では流域を16区分する。このうち、同区間に加え日軽金塩之沢せき~十島せきの区間の計二つは「猶予期間」を設定し、今回決めた河川維持流量よりも少ない暫定的な維持流量を適用することになった。06年9月公表の「富士川水系河川整備計画」の目標年の36年までに訪れる、両取水せきの水利権更新のタイミングなどを捉え、放流量を増やすことを同社に提案していく。
日軽金波木井発電所(山梨県身延町)の取水でたびたび水枯れが伝えられてきた富士川合流点上流の早川には毎秒0・3~1・3立方メートルの維持流量を設定。国は今月上旬、同発電所の冬場の放流量を増やした。
国交省河川環境課によると28日現在、国管理の109の1級河川のうち、富士川を含む97河川で維持流量が設定されたことになる。
両県のラフティング業者でつくる富士川船頭組合有志が同省甲府河川国道事務所に対し、放流量増を求める要望書に約8700人の署名を添え2月下旬に提出していた。関係者は「水利権縮小の道筋ができたことは評価したいが、時間がかかりすぎる」と述べた。
富士川の河川維持流量 富士川水系河川整備計画などで設定がうたわれながら、これまで実現していなかった河川法上の環境保全の目安。中流~下流では日本軽金属の五つの自家発電用水力発電所に合計毎秒187.7立方メートルの取水に関する水利権があり、これまでは調整が進んでいなかった。