放流増量条件に水利権更新 国交省、波木井発電所に 不正取水の監視を強化

 国土交通省は9日、富士川水系にある日本軽金属波木井発電所(山梨県身延町)について、渇水期の放流量を増量することを条件に水利権更新を許可した、と発表した。許可量を上回る不正取水が明らかになったことから、許可期間を従来の20年間から2025年3月末までの約2年間に大幅圧縮する。

波木井発電所水利権更新のポイント
波木井発電所水利権更新のポイント
9日付で水利権が更新された日本軽金属波木井発電所=2021年8月下旬、山梨県身延町(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
9日付で水利権が更新された日本軽金属波木井発電所=2021年8月下旬、山梨県身延町(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
波木井発電所
波木井発電所
波木井発電所水利権更新のポイント
9日付で水利権が更新された日本軽金属波木井発電所=2021年8月下旬、山梨県身延町(静岡新聞社ヘリ「ジェリコ1号」から)
波木井発電所

 出水期(4~9月)は毎秒1・4立方メートル、渇水期(10月~翌年3月)に同1立方メートルだった放流量について通年同1・4立方メートルとする。最大取水量については同30立方メートルを維持したうえで、不正取水の再発防止策の取り組み状況を年に一度報告する義務を同社に無期限に課すなどした。
 同発電所は静岡市清水区の同社蒲原製造所が制御する六つの水力発電所の一つで、富士川の支流の早川にある榑坪(くれつぼ)えん堤(山梨県早川町)で取水している。直近の許可期間は20年3月までだったが、同町と山梨県南部町が追加放流を要求し、同県が国に対し放流量の増量を正式に求めていた。
 波木井発電所を含む三つの発電所を巡っては、本紙が昨年3、4月に過去に最大取水量を上回る不正取水があったことを指摘。これを受け調査した国は10月、1987~2021年の35年間に約1億9千万立方メートルの不正取水と約170万立方メートルの放流量の不足があった、と発表した。
 富士川と早川の合流点では特に渇水期には水枯れが起き、「河原砂漠」となっていた。放流量増で多少なりとも改善の可能性があるとみられる。国土交通省は年度内に渇水期でも最低限維持すべき「河川維持流量」を初めて富士川水系で設定する方針も示している。

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