湧水県外流出対策「田代ダム活用」 東電「国、県、流域の事前了解必要」【大井川とリニア】

 リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴うトンネル湧水の県外流出対策として、JR東海が大井川上流部にある田代ダム活用案を静岡県側に提案したことについて、ダムを管理する東京電力グループの東電リニューアブルパワー(東電RP、東京)が29日までに静岡新聞社の取材に文書で回答した。田代ダム案の実現性についてJRと具体的に協議するには、JRが河川管理者の国と県、流域市町の理解を事前に得ることが必要との認識を示した。

田代ダム
田代ダム

 東電RPは田代ダム案について、JR東海から「正式に協力要請を受諾したとの位置付けにない」とした上で、JRが事前了解を得るべき相手として国、県のほか、大井川水利流量調整協議会の構成員を挙げた。東電RPが事前了解が必要とされる関係先を公にしたのは初めてとみられる。
 大井川水利流量調整協議会は同社との間で田代ダムの水利流量と河川維持流量について協議する組織で、静岡市や島田市、川根本町などの流域市町と県、国土交通省で構成し、県が会長、事務局を務めている。
 同案は、本県と山梨県境のトンネル掘削中、本県側で発生するトンネル湧水が山梨県側に流出する問題を受け、流出するのと同じ水量分だけ田代ダムの取水を抑制し、大井川の減水を防ぐ方策。JRの提案を受け、県有識者会議の地質構造・水資源専門部会で協議しているが、委員からは渇水時への対応や、水利権の売買や目的外使用を認めない河川法との整合性を巡り懸念の声が上がっている。

 ■田代ダム「貴重な電源」 東電の回答(一問一答)
 リニア中央新幹線南アルプストンネル工事に伴うトンネル湧水の県外流出対策としてJR東海が提案した田代ダム取水抑制案について、ダムを管理する東京電力リニューアブルパワー(東京)が静岡新聞社に示した文書での回答は次の通り。
 ―田代ダム案の実現に協力する考えはあるか。
 「大井川の水を使わせていただいている立場であり、本方策の実施に当たっては流域をはじめとした関係者の方々や河川管理者(国・県)の理解が必要と考えている。まずはJR東海にて、関係する皆さまの了解を得た上で具体的な協議をさせていただきたい」
 ―「関係者」とはどのようなものを指すのか。
 「具体的には大井川水利流量調整協議会員の関係者が該当すると考えている」
 ―これまでJR東海とどのような協議をしてきたのか。
 「大井川に関する相談は受けているが、正式に協力要請を受諾したとの位置付けにない」
 ―ダム案は河川法が認めていない水利権の売買には当たらないのか。
 「JR東海にて河川管理者(国)へ相談をいただいた結果に基づき対応していきたい」
 ―渇水期でもJR東海に譲るだけの水量が確保できるのか。
 「県有識者会議の地質構造・水資源専門部会で議論されていることから現時点で回答は控える」
 ―ダム案に協力する場合、冬場の発電施設維持流量(毎秒1・62トン)の確保は求めないのか。
 「(前の質問と同じ理由で)回答は控える」
 ―社内で田代ダムはどういった位置付けの施設か。
 「安定的な電力供給に加え、水力発電は発電時に二酸化炭素を出さない貴重な純国産エネルギーの電源であり、引き続き、田代ダムより取水して発電している田代川第1、第2、早川第1(の各)発電所を通じて、政府が掲げる2050年カーボンニュートラル社会の実現に向けて貢献していきたい」

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