御前崎の一部市議「原発活用を」 議長名で国に要請書 議会内共有せず

 御前崎市議会の議長ら一部市議が4月中旬、中部電力浜岡原発(同市佐倉)を含む既存原発の最大限の活用などを国に求める議長名の要請書を、事前に市議会内で共有せず関係省庁に届けていたことが11日までに分かった。他の市議は要望活動をしたことも要請書の内容も知らされておらず、「不適切だ」との声が上がる。

御前崎市長と同市議会議長の連名で国に提出された要請書
御前崎市長と同市議会議長の連名で国に提出された要請書

 要請書は原発の再稼働を推進するとも読み取れる内容で、再稼働に慎重な市議の反発を避けるため共有しなかったとみられる。
 要望は市と合同で行い、増田雅伸議長ら6人の市議と鴨川朗副市長ら市幹部が経済産業省資源エネルギー庁と内閣府、原子力規制庁を訪問した。要請書は柳沢重夫市長と増田議長の連名。資源エネ庁と規制庁には浜岡原発の新規制基準適合性確認審査の迅速化、内閣府には広域避難の課題解決に向けた支援などを求めた。
 資源エネ庁への要請書では「既存の原発の最大限の活用について」との項目を設け、脱炭素社会の実現に向けた現実的な取り組みとして既存原発の早期再稼働を挙げた。規制庁には審査の迅速化を求める理由について、市政運営や市内経済を浜岡原発が稼働していた東日本大震災以前の状況に「一日も早く戻すため」と記述した。
 増田議長は取材に対し「今までの事例を基に『こういうものを出しますよ』という話はしなかった」と述べ、慣例に沿った対応だと主張した。
 要望活動を知らされていなかった市議は「全く聞いていない。議長名を出すからにはまっとうな手続きを踏むべきだ」と憤る。別の市議も「再稼働ありきで前のめりな内容。隠密にこんなことをするのは絶対に良くない」と眉をひそめる。
 総務省によると、地方議会の要望活動について具体的に規定する法律はない。地方自治に詳しい県立大経営情報学部の小西敦教授は「一般論として、議長が議会を代表して要望を行ったとすれば何らかの形で代表性を担保するものが必要」と指摘。その上で「『議会を代表して』という余地があるとすれば、議決を採るまでもなく意見が一致したり、全員協議会で了解を得たりした場合が想定される」との見解を示した。

 ■解説 秘密の行動 信用失う
 御前崎市議会の議長を含む一部市議が、「既存原発の最大限の活用」などを求める国への要請書を事前に議会で共有せずに提出したことは、議論を無視する一方的な行為だ。要請書の存在すら知らなかった議員の方が多いにもかかわらず、議長名が記されたことで「原発推進」の意思が市議会の総意と受け取られてもおかしくない。
 一方、内閣府には広域避難の実効性確保に向けた支援を求めた。要望活動を知らなかった議員からは「広域避難は課題が多く、盛り込んでほしい項目は他にもあった」との声が聞かれた。事前に全議員で話し合う場があったら、立地市としてより中身の濃い要請書になったかもしれない。
 市政の最重要事項といえる原子力政策を巡って秘密の行動がまかり通るような議会を、市民が信用できるとは思えない。

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