東部要衝から撤退開始か ウクライナ軍兵士「捕虜に」

 【キーウ共同】ウクライナ軍のシルスキー総司令官は17日、東部ドネツク州の要衝アブデーフカからの撤退を表明した。3月のロシア大統領選を前に、東部での戦果獲得を狙ったロシア軍が猛攻をかけ、ウクライナ軍は弾薬不足などから苦戦を強いられていた。約4カ月にわたる攻防の末、同国軍は要塞化した重要拠点を失う痛手を負う。

煙が上がるウクライナ・アブデーフカのコークス工場=15日(ゲッティ=共同)
煙が上がるウクライナ・アブデーフカのコークス工場=15日(ゲッティ=共同)

 ロシア軍にとっては昨年5月にドネツク州の激戦地バフムトを制圧して以来の大きな前進。撤退は既に始まったとみられ、ウクライナ軍の現地部隊司令官は17日、兵士の一部がロシア軍の捕虜にされたと明らかにした。
 シルスキー氏は声明で「包囲されるのを避け、兵士の命を守るため」の戦略的な撤退だと強調、より有利な戦線で防衛すると訴えた。ゼレンスキー大統領も17日、ドイツで開催された「ミュンヘン安全保障会議」に出席し、撤退の判断は「兵士の命を守るために重要だった」と述べた。
 アブデーフカはロシア占領下の州都ドネツクまで約15キロにある。ウクライナ軍は東部紛争が始まった2014年以降、陣地を構築し、精鋭部隊を投入して死守してきた。
 欧米からは、同地の戦略的な重要性を疑問視する指摘もあるが、撤退がウクライナ軍の士気に影響を及ぼす可能性がある。シルスキー氏は声明で、アブデーフカを「必ず奪還する」と強調した。
 ロシア軍は昨年10月ごろから同地への攻勢を強め、防衛拠点として重要なコークス工場に迫った。プーチン大統領は1月末、ドネツク市への攻撃拠点となったアブデーフカの制圧は「最優先課題の一つだ」と強調した。
 今後ドンバス地方(ドネツク州とルガンスク州)全域の制圧を目標に据え、アブデーフカ西方約30キロのセリドベや近郊のポクロウシクを狙うとの見方が出ている。
 一方、ウクライナのコスチン検事総長は16日、ロシアがウクライナに対して使用した北朝鮮の弾道ミサイルは少なくとも24発になったと述べた。インタファクス・ウクライナ通信が報じた。


 アブデーフカ
 ウクライナ東部ドネツク州中部に位置する工業都市で、ロシアが実効支配する州都ドネツクから北に約15キロの交通の要衝。侵攻前は約3万2千人が住んでいたが、市長は今月8日時点で市内には941人が残っていると報告した。ロシア側はウクライナ東部の紛争が始まった2014年以降、ドネツク防衛のため占領を試みたが、ウクライナ軍がコークス工場を要塞化し防衛。昨年10月から攻防が激化した。

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