
詩や批評のサイト「浜風文庫」を主宰する詩人のさとう三千魚さん(静岡市駿河区)が工藤冬里さんを静岡に招くのは6回目。ライブの前のご本人の口上によると、工藤さんの存在を知ったのは40年以上前という。「最低のところから生き延びてきた」という点で工藤さんに同じ魂を見いだした。2019年、念願かなって自身の地元・静岡市で工藤さんのライブを主催。以後、コロナ禍で開催を見送った2010年を除き、毎年実施している。

静岡市出身のフリージャズ系アルトサックス奏者の望月治孝さんの、悲鳴と旋律が交接するようなフリーキーかつ叙情的な演奏に続き、工藤さんが登場。マヘル・シャラル・ハシュ・バズ名義で活動するバンドは演奏ごとにメンバーが違うようだが、この日は静岡県内のミュージシャンを交えた9人編成だった。
木管楽器3、ギター2、ベース、アコーディオンをバックに、ボディーにスピーカーが付いたいわゆる「ゾウさんギター」を膝に乗せた工藤さんが次々に自作詩を朗読する。時折、客席の女性メンバーがコルネットで乾いた破裂音を響かせる。詩は全て、浜風文庫で発表した作品。1時間の演奏で80編ほど披露しただろうか。
詩は白い紙に書かれていて、読み終わった詩は地面に放り投げられる。徐々に床面が白で覆われていった。意味と用途を失った言葉が、地面に折り重なっていた。
ゆっくりしたテンポの演奏は、たった一つのコードをループさせていた。いつ果てるともしれないアンサンブルは、工藤さんの言葉の力、密度、熱に合わせて自在に強弱がつけられた。全ては即興。大きな球体が膨らんだり縮んだりする様子を思い浮かべた。1960年代、米ニューヨークで活動したヴェルヴェット・アンダーグラウンドのアルバム「White Light/White Heat」が頭をよぎった。
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