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論説委員しずおか文化談話室

【松島誠さんと高野なつみさんの即興ライブ「ひろばにて」 】 即興で音楽とパフォーマンス。都市の「隙間」に新しい色が加わった

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は12月7日に沼津市の市民文化センター「もりの広場」で行われた音楽とパフォーマンスの即興ライブ「ひろばにて」(市教育委員会主催、NPO法人レザミ・デ・ザール主管)を題材に。出演はパフォーマー、演出家、美術家の松島誠さん(同市)とピアニストの高野なつみさん(同市出身)。

総合体育館と市民文化センターに挟まれた空間は、心地よい日だまりになっている。高野さんによるアンビエントな電子音の中、複数の樹木の植栽地から登場した松島さんは、約50人の観客を前に30分のダンスパフォーマンスを披露した。

松島さんは、ブルガリアンヴォイスのような声で咆哮し、手足の関節の可動範囲を最大限に使って体をくねらせ、跳び、回転した。樹木や枯れ葉を用いたシーンもあり、即興の妙味を存分に伝えた。

高野さんの音楽は、電子音からピアノのソロに移り、鍵盤ハーモニカを手にする場面もあった。音がない場面では、周囲の木々の葉のさざめきや鳥の声が入り、まるであらかじめアレンジされていたかのように聴こえた。

松島さんは演目終了後のあいさつで「初めての場所で初めての共演者。野外でどんなことができるかを考えながら演じた」と話し、高野さんは「いろんな表現の方法があっていいと思う。日々の生活の中できょうのことをちょっと思い出してほしい」と観客に呼びかけた。

演目は午前午後に計2回行われた。都市の隙間に出現した「舞台」に、道行く人の多くが足を止めた。そして、見入っていた。2人のアーティストによって、何気ない土曜日にカラフルな色が加わったことだろう。こうした体験ができる「まち」は貴重だ。「もりの広場」の積極的な活用を期待したい。(は)

静岡新聞の論説委員が、静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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