大けがから3カ月⋯懸命なリハビリを続けている清水エスパルスのDF高橋祐治がグラウンドでランニング!今の思いは

左膝の前十字靱帯(じんたい)断裂と半月板損傷の大けがを負い、懸命なリハビリを続けている清水エスパルスのDF高橋祐治選手がグラウンドでのランニングを始めています。

「家族、チームメート、サポーターに復活する姿を見せたい。まだまだチャレンジできる」と自身を奮い立たせます。これまでの経験から「一般の人や学生は情報が少ない」とリハビリの様子や心境を発信する動画をYouTubeで公開しています。

「本当にうれしかった」という清水の応援席から響く自身のチャントをまたピッチで聞くために―。負傷から約3カ月、今の思いを聞きました。

―けがをした名古屋グランパス戦で初めて高橋選手のチャントを聞いた。
まずアップのときに最初に歌ってくれて、本当に嬉しかったですね。在籍3年目で、1年目にサポーターのみんなを失望させてしまった。2年目もJ2で戦ったあとにJ1に戻ってやっと認めてもらえた感覚。自分のチャントを歌ってもらえるのはうれしい。

育成年代からエスパルスユースと試合することもあって、Jリーグの中でもエスパルスの応援はリズム感がちょっと独特で、なんかいいよねっていうのは小さい頃から知っていた。そういうクラブのサポーターにまさか自分の応援歌を歌ってもらえるなんて想像もしていなかった。

―負傷後すぐにYouTubeで動画を公開し始めた。
名古屋戦後に静岡に帰ってきて病院でMRIをとっているとき、これからどうしていこうか考えていた。(復帰まで)長いし、なにか勉強もしようかなとか。

そのときにいろいろ考えて、YouTubeで発信しようと。(同じけがをするのが)2回目だから決断できたというのもある。これを機に人のためになることできたらいいなと思った。家に帰って妻に相談し、編集の仕方とかどうやってやるのって聞いた。

1人でやるのは大変だからということで、「じゃあ編集するよ」と妻が言ってくれた。とにかく、まずはリハビリに集中して競技復帰できるようにと。動画で疲れたりストレス感じたりしたらやる意義がない。編集は私がしてサポートするからと言ってくれて、「よし、じゃあ今からカメラ回して」となった。

―前回負傷したとき(2020年、柏レイソル在籍)に情報が少なかったことも動画公開のきっかけになった。
どういう感じなのか、手術が痛いのかも分からなかった。自分が治りかけのころにインスタグラムで宮市亮くん(横浜Fマリノス)がリハビリメニューなどを載せてくれていたが、それまでは本当に情報がなかった。

そう思っている人はいっぱいいるが、実際の心境も分からない。トレーニングメニューも一般の人、学生が真似できそうなものを発信できたらいいなと思った。プロはトレーナーがいて色々なリハビリメニューを渡されて自分でできる。

でも一般の人は病院とかにいる間は教えてもらえるが、そこからはほぼ自分だけ。そういう人たちが見れるコンテンツがあって、ちょっと心のよりどころになればいいなと思って動画公開を始めた。

―同じけがをしている人からの反響は。
めちゃくちゃあります。多いのが学生。「ぼくも靱帯切りました」とか「手術控えてます」とか。「応援してます」って言われるが、多分おれよりきついよみたいな人もいる。

学生は3年間とか4年間のうちの1年をけがで棒に振る。あとの1年で結果出さないといけないとか、プロを目指していて、ぼく以上に不安を抱えてる人たちからのコメントが多かった。こっちもすごい考えさせられた。

高校3年生でけがしちゃった人とかは、こっちからかける言葉もちょっと見つからないというか…難しかったですね。

―同じプロ選手からの反応は。
今年はJリーグでも(同じけがが)多い。ヴィッセル神戸の新井章太選手からメッセージをもらった。「YouTube見てます。前十字会やりましょう」とか(笑)

けがした者同士のコミュニティーのようなものが広がっている。コンサドーレ札幌の深井一希選手は世代別代表のころから一緒で、部屋も同部屋だったこともあった。

今回もすぐにラインをくれた。彼もめちゃくちゃ同じけがをやってて、「祐治くんまだ2回なんで全然大丈夫です」と(笑)その言葉が1番元気もらった。

―9月に入ってからランニングも始めた。
10分走るくらい。松葉杖の期間も長く、(けがをしていない)右足に乗せる癖がついてしまっている。そのままだと体のバランスが崩れてしまうので、まずそれを治すところから手術後は順調ではある。

今はどうしても縦の動きしかできない。徐々にジョギングの距離を伸ばし、その先に横の動きを入れたり、軽いボールを蹴ったり。それができてくると、次はひねりの動きとかに入れる。まだまだかかります。

―グラウンドに出たときの気持ちは。
ハーフコートゲームとか見てると、やりてえって思う。けがする前は「紅白戦10分を2本」とか言われて、2本もやるのかよって思ってた。でも、サッカーやれるって幸せだなと。やりたいなって見ててめちゃくちゃ思う。

―けがした直後の柏レイソル戦は仲間からサプライズがあった。
本当の意味の仲間だと思った。あれ以上のものを返せるかと思うと、ちょっと難しいかもしれない。ぼくがみんなからいただいたものは、すごい大きなもの。

めちゃくちゃ感謝していて、そこからまた頑張ろうってなれた。けがして1週間ぐらい経ってどん底にいるおれを引っ張ってくれた。しかも(古巣の)柏戦。スタジアム全体がぼくのことを待ってくれている感じが伝わった。

―チームを外から見る感覚は。
試合は全てリアルタイムで見てホームはアイスタに行っている。外から見る機会は今まであまりなかった。今はメンバー外の悔しさとかはなく客観的に見れている。サッカーをもう一回勉強する意味でも見ている。

「今、チームはこういう状況なら後半こうしたらうまくいくかな」とか考えて、ハーフタイムにアイスタの下に降りて秋葉さんならなんて指示出すのかを見て勉強しながら過ごしている。

今年はコーチのB級ライセンスを取りに行く。そういう面でもこの期間、勉強になればいいなと思っている。けがしていないときは(メンバー外で)上から見ている自分がその試合に出ていないことに対して悔しさもある。そういう意味では、今は客観的に見れて面白い。

―家族の支えは大きい。
大きいですね。このタイミングで結婚しててよかったな、子どもがいてよかったなって思える。1人だと考える時間も多くなって難しいが、子どもにも笑顔にさせてもらう。1番は近くにいて、常にポジティブな妻にすごく感謝してます。

―振い立たせる原動力は何か。
1番は家族。怪我して心配させて、あの状態で引退は家族にとっても辛すぎる。子どもからしてもパパの最後がめっちゃ痛そうな顔で終わたと思われるのも嫌。

やっぱりかっこいい姿を見せた上で引退したいと思った。復活する姿を見せた方が親としてもかっこいい。あとはチームメイトとサポーターのみんなにも復活する姿を見せたい。あとは自分。ここでやめても一生後悔が残る。まだチャレンジできるやろと思った。

―清水サポーターに向けて。
まずは残り6試合、最後までチームと一緒に戦ってほしい。忘れた頃にぼくが復帰してくる。またパワーアップした姿を見せたいので、楽しみに待ってもらえたら。
シズサカ シズサカ

静岡新聞社編集局運動部がサッカーや野球、バスケットボール、ラグビー、バレーボールなど、さまざまなスポーツの話題をお届けします。紙面では紹介しきれない選手たちの表情や、ちょっとしたこぼれ話をお楽しみに。最新情報は運動部の公式X(旧Twitter)でチェックを!

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