【沼津市戸田に建設予定の佐藤雅彦さんのミュージアム】2029年オープン予定。地元でも期待高まる。「戸田の魅力的なスポットとうまくつながってほしい」

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は2025年8月25日付静岡新聞に掲載した、クリエイティブディレクターで東京芸術大名誉教授の佐藤雅彦さん(沼津市出身)のインタビュー記事の、取材余録をお届けする。静岡新聞DIGITALでは、紙面とは別の、WEB限定長尺インタビューを8月25日から3日に分けて掲載。(論説委員・橋爪充)

横浜美術館で開催中の「佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)」の公式図録「作り方を作る」(写真部・久保田竜平)

「ポリンキー」「バザールでござーる」「カローラⅡ」「モルツ」など、1980年代、90年代に数々の名CMを手がけた佐藤雅彦さん。2000年代以降は慶応大、東京芸術大大学院で教える傍ら、「ピタゴラスイッチ」などの映像コンテンツを次々世に送り出した。

静岡県出身の佐藤さんだが、これまで静岡新聞は本格的な取材記事を掲載したことがなかった。横浜美術館で6月28日に開幕した「佐藤雅彦展」が契機となって、初のインタビューが実現したのは、タイミングが良かったこともあっただろうが、何よりこの展覧会が佐藤さんが構想するミュージアムの、いわば「プロトタイプ」として位置づけられたことが大きい。


横浜美術館の展示風景。代表作の「計算の庭」(横浜美術館提供/撮影・加藤健)

インタビューでもはっきり語っているが、展覧会の展示は、故郷の沼津市戸田に2029年オープンを目指して準備を進める佐藤さんの仕事と代表作を集めた「富士山と海を見ながら考えるミュージアム」ありきで、組み立てられている。会期は11月3日までだが、閉幕後すぐに代表作である「指紋の池」「計算の庭」がトラックで戸田に運び込まれるそうだ。「ピタゴラ装置」なども続く。展覧会のコンセプトである「作り方を作る」を実践する展示になりそうだ。

ミュージアムは過疎化が進む戸田にとって、大きなインパクトのある事業となるだろう。インタビューは戸田の宿泊施設兼カフェの「タゴールハーバーホステル」で実施したが、その場に居合わせた地元住民に施設計画について話を聞いてみた。

ミュージアムの建設予定地(東部総局・田中秀樹)

筒井進さんは佐藤さんの小中学校の同級生。「彼は(戸田港近くの)実家に帰ってくるたびに、海を眺めていた。彼の小説『砂浜』にも戸田で過ごした幼少期の描写が出てくる。ありがたいと思っていた」と振り返った。「戸田の活性化策としてミュージアムをつくると聞いて、とてもうれしい。地元の同級生としても協力したい」と話した。

戸田の水産会社の関係者である長島美樹さんは、海水浴場や深海魚、重要文化財「松城家住宅」、ロシア軍艦の沈没と代船「ヘダ号」建造にまつわる逸話などを挙げ、「戸田には魅力的なスポットがたくさんある。そうしたものとうまくつながって、戸田を楽しんでくれる人が増えたらいい」と期待を込めた。

<DATA>
■横浜美術館リニューアルオープン記念展「佐藤雅彦展 新しい×(作り方+分かり方)」
住所:横浜市西区みなとみらい3-4-1
開館:午前10時~午後6時(木曜休館)
料金:一般2000円、大学生1600円、中学・高校生1000円、小学生無料、障害者手帳などの所持者と介護者1人無料
会期:11月3日(月・祝)まで

横浜美術館の展示風景(横浜美術館提供/撮影・加藤健)

静岡新聞の論説委員が、静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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