他人事じゃない、モバイルバッテリーからの発火。どうして起こるの?防ぐためには?

7月20日に山手線の車内でモバイルバッテリーから発火した事故が報じられました。リチウムイオン電池を使ったモバイルバッテリーは普及していて、自分のバッテリーが大丈夫か心配な人も多いはず。モバイルバッテリーの発火と対策について、静岡市消防局消防部予防課の近江達彦さんにSBSアナウンサー井手春希が聞きました。

そもそも、どうして発火する?

井手:モバイルバッテリーの発火事故が相次いでいますが、こうした理由で出動することもあるんでしょうか?

近江:そうですね。このバッテリーが関連するような火災で、年間でも30件近くは出動しているかと思います。

井手:年々、増えてきているような印象ですね。まずは、そもそもこのモバイルバッテリーが発火する原因とその仕組みを教えていただけますか。

近江:近年、モバイルバッテリーを含む多くのバッテリーを搭載している製品には、リチウムイオン充電池というものが使用されています。バッテリーから出火する原因の多くは、バッテリーの内部でショートすることです。バッテリーの内部にはプラスとマイナス属性の電極という部品が入っていて、この電極が、様々な要因により接してしまうことで火花が発生します。

バッテリー火災の恐ろしいところは、電池の中にある電解液が揮発して着火することにより、ジェット噴射のように炎が噴き出すところにあります。山手線の火災では、モバイルバッテリーから出火して5人がけがをしたということです。危険性が身近にあると感じますね。

原因は「暑さ」だけじゃない!低温でも発火の危険あり

井手:暑いこの時期、モバイルバッテリーを放置するのは危険だと言われますが、暑さ以外でも発火する恐れはあるんでしょうか?

近江:様々な要因でショートしますが、そのうちの一つとして、使用環境が挙げられます。

バッテリーに起因する火災は夏場の時期に多く発生しています。屋外の、日が当たっているバッグや車の中に放置したりする場面では、思った以上に高温となるため、膨張しやがてショートするという事案が多く見られます。

使用環境という面では、低温下でも危険性があります。冬場、雪山のキャンプ場などで使用していると、中の電解液が凍結してしまい、電極が傷つき出火するというケースがあります。他の要因としては、落下などの衝撃により出火することもあります。衝撃を与えると、中の電極が傷ついたりずれたりすることでショートが発生し、出火してしまいます。

また、落とすだけではなく、ズボンの後ろポケットに入れたまま座ったり、カバンに入れて本などの重い荷物の下敷きにしたりなど負荷がかかる状況にすると、出火する恐れがあります。

井手:ポケットに入れても、出火することもあるんですね。

バッテリーによる火災は年々増加


井手:
先日の山手線での事故で発火したのはモバイルバッテリーでしたが、モバイルバッテリーの発火事故っていうのはやはり増えているということですね。

近江:バッテリーが起因する火災は、年々増加傾向にあり、静岡市消防局の管内でも10年前に比べると約3倍以上に増えています。また東京消防庁の調べでは、その中でもモバイルバッテリーが占める割合が最も多くなっていて、より身近に普及していることが要因になっているのではないかと考えます。

モバイルバッテリーだけではなく、バッテリーを内蔵している製品のいくつかにはリコールが届けられているものがあります。山手線での火災でもリコール対象になった製品から出火したとされています。

実は、安全性が満たされていない状態で製造されたものが、世の中にいくつも流通しています。こういった製品はいくら丁寧に使用していても、元々出火する要因を含んでいるため危険です。皆さんにも使っているものがリコール対象になっていないか確認してもらいたいと思います。リコール情報は経済産業省やメーカーのホームページで確認することができます。

井手:バッテリーで充電する製品は、同じように発火の危険が伴っているのでしょうか。

近江:そうですね。電源を繋がないで使用できる家電製品は本当に多くなっています。最近だと、街中で携帯扇風機を持ち歩く人や、あと仕事場でファンが付いた空調服などを着ている人を多く見かけますよね。こういったものもバッテリーを搭載した製品になるので、全てにおいて出荷する危険性があるといえます。

バッテリーの普及でより便利で生活が送れるようになった反面、火災危険という面ではリスクが高まっています。技術の進歩に合わせて、皆さんも取り扱いの意識を高めてもらえればと思います。

製品が安全か、まず確認!


井手:
モバイルバッテリーの発火の危険性は、どういったことで判断すればいいですか。

近江:まずは、使用している製品がリコール対象品でないか確認してもらい、そういった製品は直ちに使用をやめてもらいたいと思います。あとは、製品にPSEというマークがついているかを確認してもらいたいと思います。これは安全性の基準になるので、マークのあるものを使用していただきたいです。

使用する中で、製品が膨らんだ場合には注意が必要です。膨らんでいるということは、中の電解液が膨張している可能性があり、バッテリー内部が健全な状態ではないといえます。ショートし出火する可能性が極めて高いため、使用しないようお願いしたいです。また、製品の異常な熱さや充電時間の変化も、電気の移動がおかしくなっている前兆であるため、こちらも注意してもらいたいと思います。

井手:発火には本当に怖いイメージがあるんですが、発火してしまった場合にはどう対処すればよいですか?

近江:バッテリーが発火すると急激に炎の噴射が起こります。またバッテリーが破裂して飛び散ることも考えられるので、近寄らないでもらいたいと思います。一度炎が収まったとしても注意が必要です。残っている液などに再び着火する可能性があるので、大量の水で消火する必要があります。モバイルバッテリーなどの小型のものであれば、バケツなどに水を張って、水没させることが有効ですね。

あとは、急激に炎が出るので、周囲の物に燃え移らないように使用場所や充電場所なども考えれば二次被害が防げるかと思います。

正しく使って、適切に廃棄を

井手:モバイルバッテリーの発火事故を機に関心事になっていますが、改めてリスナーの皆さんにメッセージをお願いします。

近江:モバイルバッテリーを廃棄する際に一般ゴミと一緒に捨てたことで、ゴミ収集車が火災になったり、ゴミ処理施設自体が火災となって受け入れができなくなったりする事案も毎年のように発生しています。担当する部署も頭をすごく悩ませているところです。家電量販店などで回収しているので、皆さんには、適切な廃棄方法を認識してもらって、正しいルールで廃棄してもらいたいと思います。

身近で手軽に使用できるモバイルバッテリーですが、使用しているものが安全なものなのか、また使い方に問題がないか、そういったことも気にしながら使ってもらえればと思います。

井手:そうですね。二次被害を防ぎたいですし、マナーを守って安全に使いたいなと改めて思いました。近江さんありがとうございました。

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