
ガラスケースのような部屋に入ると「無」の字を書き連ねた紙、その紙でつくった球体によるインスタレーションの中に、見る側が「放り込まれる」。点在する球体。太陽系、宇宙の模式図か? と一瞬の解釈。だが、違う。
もっと親密な気配が漂っていることに、じわじわと気づかされる。それぞれの球体が、意志を持ってお互いの距離を測っている。そこには何らかの「事情」や「節度」が介在している。しているように見える。
それは「命」とは何か別のものだ。そうしたものどもの間に、あたかもアナログな感情が漂っているかのように見せている。これこそがアーティストの力だろう。(は)

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■ふじ・紙のアートミュージアム
住所:富士市蓼原町1750 富士市文化会館ロゼシアター1階
開館:午前10時~午後6時(9日休館)
会期:9月16日まで