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論説委員しずおか文化談話室

【石井岳龍監督「箱男」】 存在証明賭けた箱男同士のバトルが見どころ

静岡新聞論説委員がお届けする“1分で読める”アート&カルチャーに関するコラム。今回は静岡市葵区の静岡東宝会館ほかで8月23日から上映中の石井岳龍監督「箱男」から。

安部公房の代表作に永瀬正敏、佐藤浩市、浅野忠信らが出演

生誕100周年の作家・安部公房が1973年に発表した代表作を、石井監督が27年越しで映画化。主演に27年前と同じ永瀬正敏、共演に同じく出演予定だった佐藤浩市をキャスティングした。浅野忠信も出演し、豪華な顔ぶれがそろった。

縦型の洗濯乾燥機が入っていたらしい大型の段ボール箱に穴をあけ、世の中を半ば「上から目線」で眺める男。その精神性に同調し、その存在に取って代わろうとする男。安住の地から手前勝手な、時に暴力性を帯びたまなざしを向ける「箱男」の態度は、観客であるわたしたちのねじれたメタファーであることに気づかされる。

段ボール箱に包まれた人物は必然的に動きが制限されるが、この映画には箱男対箱男のアクションシーンも用意されていて、油断ならない。距離を詰め、追いつ追われつし、組んずほぐれつする二つの箱。滑稽に見えるが、映画の文脈上は存在証明を賭けた生きるか死ぬかのバトルである。瞬間、戦慄が走った。(は)

<DATA>※県内のその他の上映館。9月2日時点
MOVIX清水(静岡市清水区)
シネマイーラ(同市中央区)※10月11日から
シネマサンシャインららぽーと沼津(沼津市)
シネプラザサントムーン(清水町)

静岡新聞の論説委員が、静岡県に関係する文化芸術、ポップカルチャーをキュレーション。ショートレビュー、表現者へのインタビューを通じて、アートを巡る対話の糸口をつくります。

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