サッカージャーナリスト河治良幸
Jリーグ前半戦“静岡県勢”のベストイレブンを選んでみた!最多は清水エスパルスの3人。ボランチには鹿島でキャリアハイのあの選手…
Jリーグはすでに前半戦から折り返し、2週間余りのブレイク期間に入っている。今回はこの時点での“静岡県勢ベストイレブン”を筆者の視点で選出した。システムは3−4−2−1をチョイスした。
GK・DF
GKは川島永嗣(ジュビロ磐田)だ。41歳の守護神は度重なる好セーブや存在感あるコーチングで昇格組の磐田を後方から支える。7月6日の川崎戦でふくらはぎを負傷してリーグ戦中断前の2試合を欠場した。早期の復帰が望まれる。
最終ラインは中川創(藤枝MYFC)、高橋祐治(清水エスパルス)、濱託巳(アスルクラロ沼津)の3人を選んだ。
中川は昨夏に同じ静岡県のジュビロ磐田からJ2の藤枝に移籍。当初はなかなか試合に絡めなかったが、徐々に須藤大輔監督の求めるタスクを習得し、今年はディフェンスの主力として、プレーオフ圏内を目標に掲げる藤枝を力強く支える存在に。ビルドアップでも頼れる存在になっている。
高橋は開幕に出遅れ、復帰後もなかなか安定しないパフォーマンスが続いていたが、第8節の徳島戦から前節の大分戦まで17試合で7回のクリーンシートに貢献するなど、タレント力を生かして安定した守備を見せた。前半戦は住吉ジェラニレショーンとセンターバックのコンビを組んできたが、その住吉を欠く状況になると大卒ルーキーの高木践と盛り立てた。特に第23節、昇格争いのライバルと目された千葉との大一番で、多くの時間帯で押し込まれながらも2−0勝利に導く獅子奮迅の守備は見事だった。
濱は左サイドバックながら、J3のDFとしては守備面のパフォーマンスが突出している。ここまでリーグ戦の全試合でスタメンを担っており、中山雅史監督の信頼が裏付けられる。焼津市の出身で、藤枝明誠高から新潟経営大学を経て沼津に加入した。これからチームと共にステップアップしていくことができるか。
MF
左右ウイングバックはサイドバックも含めて選考対象とした。鈴木準弥(FC町田ゼルビア)はJ1の首位を走るチームで、右サイドから激しいアップダウンと効果的なロングボール、粘り強い1対1の守備を見せている。22歳の大型サイドバックである望月ヘンリー海輝とポジションを争うが、昨年のJ2優勝に貢献した多くの選手が移籍した中で、黒田剛監督の強い信頼を受ける鈴木の存在は貴重だ。
左は流れとセットプレーの両面で高精度のキックを繰り出す山原怜音(清水エスパルス)を選んだ。ここまでアシストは3だが、チャンスクリエートが多く、得点の起点になるパスやクロスを含めて42得点の多くに関わっている。
ボランチは菅井拓也(アスルクラロ沼津)と静岡学園の出身である名古新太郎(鹿島アントラーズ)のセットに。菅井は守備的なタスクをハイレベルにこなしながら、長短のパスとセカンドボール奪取力で、沼津のポゼッションを高めながら、厚みのある攻撃を支える。
名古はJ1の上位を争う鹿島で、主に4−2−3−1の2列目で起用されているが、高い位置のプレスとボランチを助けるカバーリングで素晴らしい働きをしている。もちろん攻撃の貢献度は説明不要で、ここまで5得点6アシスト。28歳にして数字面でもすでにキャリアハイとなっている。最終節まで、どこまで伸ばすか楽しみだ。
FW
前線は序盤戦から活躍が目立つジャーメイン良(ジュビロ磐田)と北川航也(清水エスパルス)、そして新天地で主力の座を掴んだ山下諒也(ガンバ大阪)というトリオになった。
ジャーメインは開幕から得点ランキングを独走していたが、第12節の東京ヴェルディ戦でゴールを決めた時に額を骨折し、リーグ戦5試合の離脱を強いられた。復帰後もすぐには結果を出せなかったが、7月6日の川﨑戦で復活のゴール。最終的に逆転負けした京都戦でも、松原后のクロスから今シーズンの13得点目を記録している。ブレイク後の試合ではヘッドギアも取れるという。横内昭展監督が掲げる目標の“勝ち点40以上”を達成するには、残り14試合でジャーメインのゴール量産は不可欠だろう。
清水のキャプテンを務める北川は9得点4アシストという結果の通り、攻撃面で重要な役割を果たしている。そして効果的な前からの守備も見逃せない。ここ5試合ゴールは取れていないが、前節の大分戦では相手ディフェンスを中央で引き付けながらのラストパスで、ルーカス・ブラガの先制ゴールをアシストした。その2人に乾貴士、カルリーニョスジュニオを加えたJ2最強のカルテットは、清水を自動昇格に導くか。終盤戦の戦いに注目だ。
ユースまで地元の磐田で育った山下は日本体育大から東京ヴェルディに入団。そこから横浜FCを経てJ1のガンバ大阪に加入した。持ち味は抜群のスピードとダニエル・ポヤトス監督も高く評価する戦術理解力の高さ。昨シーズン終盤に負った怪我の影響で、開幕時はうまくフィットできなかったが、4月20日の浦和戦で新天地デビューを果たすと、3−1で勝利した第15節の川崎戦から右サイドの主翼として抜群の存在感を放っている。そこからチームは7勝1分2敗。4アシストという目に見える結果も出ているが、前線の一角を担う以上は得点が課題だろう。
シーズンは半分を過ぎて、すでに残り3分の1に迫ってきているが、夏場から秋の終盤戦にかけて、ここで取り上げた11人のさらなる活躍はもちろん、名前をあげられなかった選手たちの奮起にも期待して、今後も静岡の4クラブや静岡県勢の活躍に注目していきたい。
タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。