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『マジンガーZ』は?『機動戦士ガンダム』は?“スーパーロボット”と“リアルロボット”に違いはある?


SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回はスーパーロボットとリアルロボットの違いについてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん

「スーパーロボット」は再命名されたもの?

今回のテーマは、青木(隆太)アナからのオーダーなんですが、真面目な話をすると、この2つは本質的には区別のつけようがないんです。

もちろん、一般的にスーパーロボットはヒーロー性を強調したキャラクター性の強いデザインで色もカラフルなものが多いです。一方、リアルロボットは兵器や重機などの延長線上として設定されていて、運用するための具体的な組織がある場合が多く、軍隊がバックボーンに置かれていることが多いです。

このような大雑把なくくりはあるものの、どっちに区別したらいいか微妙な存在もいろいろあります。なんでそんなことが起きるかというと、そもそも「スーパーロボット」というジャンルが、ある種の“レトロニム”になっているからなのです。

レトロニム(再命名)とは、新しいものが出てきたことで、古いものに新しく名前がつくことをいいます。例えば今でいう固定電話は、携帯電話が普及したことで「固定電話」と再命名されたわけです。

それと同様に、「このロボットはこれまでのロボットアニメのものと比べてリアルだ」とみんなが思った瞬間があり、その感覚を基準にして、それ以前のものと区別するために「スーパーロボット」というジャンルが漠然と想定されるようになったわけです。

まず日本のロボットアニメの流れを大きく決めたのは1972年の『マジンガーZ』です。現在では、スーパーロボットの代表格的な扱いを受けている作品ですが、実際に映像を見るとすごくリアルなんです。もちろんデザイン的にはヒーロー性も少なからずありますが、大きいロボットを運用するにあたって基地の必要性や、それを運用するためにバックヤードで働く人、ピンチになったら新兵器を開発する博士も必要である、とロボットを単体ではなく、それを支える仕組み込みで描いています。

こういう発想は1972年当時にはとてもリアルでした。「これは本物っぽい!」と思わせるディテールがそこにあったんです。また、マジンガーZが強い理由も、超合金Zという非常に強い金属で作られていて、光子力エネルギーという画期的なエネルギーで動いているからだ、とちゃんと説明がある。そういう意味で、マジンガーZはとてもリアルな存在として描かれていたのです。

『マジンガーZ』はそういう切り口を導入したこともあり、ロボットアニメというジャンルを大きく切り開きました。その後はここから当たった要素を抽出し、作品ごとに様々な切り口を模索しつつ、いろいろなロボットアニメが作られていきます。そうすると、あらゆる芸術がそうであるように、革新の後には様式化、パターン化が進んでいくのです。この様式化の結果が、世間にある「ロボットアニメってこういう感じだよね」という印象を生むことになります。

そこに次の大きな転機である1979年の『機動戦士ガンダム』が登場します。それまでにあった「ロボットが作られた背景」「強い理由」「バックヤードの存在」といった要素をリフレッシュして、今度は1979年の感覚でリアルに作り直しました。ここで、兵器=道具として作られた、という方向性が前面に打ち出されることになりました。『ガンダム』がヒットした結果、その後作られた多くのロボットアニメは、この「軍隊をベースに、兵器=道具としてロボットを扱う」というアプローチを採用します。

一旦成立した「ロボットもの」というジャンルの中で、新しいものを作ろうというときに、それまでの様式の再検討が行われ、リフレッシュされた結果、それまでのジャンル化したロボットアニメと差別化したほうがよくなり、「リアルロボット」というカテゴリーが生まれたわけです。

大きくはロボットアニメの革新と様式化のサイクルの中で起きたことで、「スーパーロボット」「リアルロボット」という言葉は、ジャンルの中にあるひとつの傾向に、便宜上のレッテルが貼られたものだと考えるとわかりやすいと思います。

SBSラジオTOROアニメーション総研(毎週月曜日19:00~20:30 生放送)全国のアニメ好きが集まるラジオの社交場。ニッポンのアニメ文化・経済をキュレーションするラジオ番組。番組公式X(旧Twitter) もぜひチェックを!/パーソナリティ青木隆太、澁谷海音、藤津亮太

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