開催前日の生け込み現場に潜入!

10月29日まで松坂屋静岡店で行われている「静岡県華道展」(主催:静岡県華道連盟 静岡新聞社・静岡放送)。記念すべき70回目を迎えた今年は、県内27流派の選び抜かれた363作品を会期中3回に分けて展示しています(第1部:24、25日/第2部:26、27日/第3部:28、29日。各部で全作品入れ替え)。
アットエス編集部は開催前日の23日、生け込みの様子を潜入取材!27もの流派が一堂に会した豪華な舞台裏を紹介します。家の所々にお花を飾っているけれど、華道は習ったことがない...そんな"自称花好き"の24歳女、アットエス編集部・花島も、生け込みをする先生方にお話を伺ううちに"推しの流派"を見つけました。
午後2時、生け込み開始!
午後2時を過ぎると、続々と先生方が控室から大きな荷物を抱えて登場。各自の展示スペースへ着くなり、皆さん手慣れた様子で生け始めました。
制限時間は1時間半。この日は、第1部(24、25日)で展示される121作品の半数ずつを入れ替わり制で行いました。取材に応じてくれた数名の先生方の作品をいくつかご紹介します。
シンプルと思いきや、意外とお茶目!?な作品
まずお話を伺ったのは、草月流・丸林唱樹先生。もともと草月流で華道をしていたお母様の影響で華道の道へ進んだそうです。普段は自営業をされていて、今はお稽古ごととして華道を続けているのだそう。
花島:(完成後を取材)生け込み、お疲れ様でした!全くの初心者で恐縮なのですが、作品の特徴を教えていただいてもよいでしょうか。
丸林先生:この作品では、"塊と線"を意識しています。
花島:なるほど、下の部分が塊で、上の枝が線ということですか?
丸林先生:そうですね。ちなみに今回はオレンジの実がついた枝を使って、ハロウィンも意識してみました。
花島:本当ですね!華道って少し格調高い日本文化、というイメージがあったんですが、「ハロウィンを意識」と聞くだけでなんだか急に身近なものに感じてきました。華道初心者の私でも、気軽にできるものでしょうか?
丸林先生:お花屋さんで花を数本買って、ちょっと茎を裂いたり切ったりするだけでも、華道の入り口に立っていると思います。一度始めてしまえば案外気軽に続けられると思うので、ぜひ興味がある方は始めてみてください。
可憐で艶やか!小原流の作品
続いてお話を伺ったのは小原流・佐藤華風先生。色鮮やかな百合と柿が目に留まり、思わず声をかけてしまいました。
花島:こんなに綺麗な百合は初めて見ました。お花屋さんでも、ここまで繊細で可憐な雰囲気の百合は見たことがないです!

佐藤先生:ありがとうございます。柿も可愛いでしょ?
花島:そうですね。作品全体のカラフルな雰囲気が個人的に大好きです。小原流の作品には、どんな特徴があるのでしょうか?
佐藤華風先生(写真右)
佐藤先生:小原流の中にもさまざまな特徴があるんですが、この作品は「文人調」といって、中国の文人が好むような作品といわれています。百合や柿など、個性的なものを合わせながらもお互いを消さずに、それぞれの良さが引き立っている感じ。あとは、絵巻物や着物の裾に描かれるようなお花をイメージする「琳派調」もあります。花島:琳派の絵画ってどれも艶やかな印象があって、中学校の歴史で勉強した頃からからすごく好きでした。どうりで、この会場にある他の小原流作品にも惹かれたわけです!
百合と柿って、一見異色のコラボな感じもしますが、ひとつの作品としてのまとまりも感じられますね。小原流、ハマりそうです。
元気過ぎる!小原流3姉妹登場
右から川内貴美子先生、山本豊彰先生、吉田洋子先生。川内先生と山本先生が身に付けている、着物をリメイクしたエプロンとポシェットがとても素敵!
さまざまな流派の先生が集まる会場の中で、ひときわ輝く元気な3姉妹を発見。本当の姉妹ではないですが、なんとお三方とも小原流の先生でした。中でも川内貴美子先生は、華道のほかにも多彩な趣味をもっていて、この日も着物をリメイクしたお手製のエプロンを身に着けていました。吉田先生:高校の授業や部活で華道を学んでいても、進学を機にやめてしまう人も多いのが現状。もっともっと、若い子にも来てほしいわね。
花島:私は全く華道をやったことがないので、これからぜひやってみたいです。
川内先生:本当?それなら、ぜひ小原流へ!(笑)今度、静岡市のグランシップで90周年の記念イベントもあるから、ぜひいらっしゃい。
川内先生の作品は第1部(24、25日)、山本先生・吉田先生の作品は第3部(28、29日)に展示されます。パワフルな先生方が生ける美しい花たちの競演を間近で見れば、こちらまで元気をもらえそう!
最後はこうしてまんまと小原流の沼に吸い込まれていきそうな花島でしたが、実際に生けている様子を見ていると、どの流派の作品も枝の先や花びらひとつひとつに心が込められているものばかりだと実感しました。
多数の流派が集まる会場ですが、ピリピリした感じはなく、「これ、あなたの持ち物?そこに落ちていましたよ」「あら、私のだわ〜。ありがとう(笑)」そんな微笑ましいやり取りも。
アットエスでは他にも、県華道連盟会長で、本展の実行委員長を務める大羽見松斎先生(日本生花司松月堂古流)の生け込み過程をタイムラプスで紹介中!壮大な作品ができ上がっていく様子を見られる、"ここでしか見られない"貴重映像です。動画はアットエス公式SNSでも配信しています。
とはいえ、やっぱり生き生きとした花々のエネルギーをもらうには、生で見るのが一番。華道の経験に関わらず、お花好きならきっと楽しめることでしょう。ぜひ会場に足を運んで、自分の"推しの流派"を見つけてみてください!
詳細はこちら>>>第70回 静岡県華道展
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