
【女子サッカーW杯開幕】なでしこジャパンの戦いをどう楽しむ?女子スポーツの未来はどうあるべき?

(寺田)20日に開幕したサッカー女子ワールドカップ(W杯)で、2011年以来の頂点を目指す日本女子代表なでしこジャパンには、藤枝順心高出身のMF杉田妃和選手とFW千葉玲海菜選手がメンバーに入りました。順心のサッカーに魅了され、藤枝で腕を磨いた2人が、それぞれの思いを胸に世界のピッチに立ちます。
杉田選手は前回に続き2回目の出場。千葉選手と3学年違って順心では重なってないんですけども、千葉選手は杉田氏に憧れて順心に入り、杉田選手の練習着の背番号を継いでいるんです。それで今代表チームで一緒にやっています。
(山田)何かぐっときますね。
女子サッカー人気に陰り?
(寺田)20日付静岡新聞には、冒頭で紹介した杉田、千葉両選手についての記事の横に、「日本戦などNHKが放送」という小さい記事が載っていました。この話、実は最後までもめていたんです。FIFA(国際サッカー連盟)が女子選手の待遇改善を掲げ、W杯の賞金総額を前回の4倍に増やし、それを放映権で補おうとしたんですね。
今まで男女セットで売っていた放映権を別々にし、女子W杯で放映権を買ってほしいという話になったけれど、なかなか買うところがなく、最終的に日本ではNHKが引き受けました。
日本の女子サッカーって、ちょっと今盛り上がりに欠けています。20日開幕ですが、そこまで話題になっていないですよね。
日本はW杯に第1回から出場し、2011年に初制覇しています。キャプテンの澤穂希選手が、得点王でMVP。このときが女子サッカー人気のピークだったのかなと思います。
15年は準優勝で、その後、先ほど出てきた杉田選手も出場した19年は、決勝トーナメントの1回戦負け。ということで、少し盛り下がっています。
ボニータ、清水第八、藤枝順心…
(寺田)男子はJリーグですが、女子は21年に「WEリーグ」が11チームで発足しています。WEリーグの下になでしこリーグ1部2部があり、県勢はリーグ1部に静岡SSUボニータ(磐田市)が入っています。静岡産業大の学生と社会人と半々ぐらいのチームですね。なでしこ1部2部は強いか弱いかで入れ替え戦がありますが、なでしこリーグからWEリーグに上がるには、スタジアムなど色々な環境が整っていないといけないんです。なでしこ1部の優勝チームがWEリーグに行くんじゃないんですよ。
(山田)そういうことなんだ、女子サッカーは。
(寺田)静岡はかつて女子サッカー王国でもありました。清水第八(現・清水第八プレアデス)は、女子サッカー創成期の強豪で、男子の天皇杯に相当する全国女子サッカー選手権で1981年から7連覇し、日本代表選手を数多く輩出しました。日本女子サッカーリーグができたときに不参加で、そこから主力選手が流出してしまいましたが、強いチームがあったんです。
藤枝順心は今年の正月も全国制覇し、歴代単独最多の優勝回数で、良い選手を輩出し続けているんですよね。
ただ、女子サッカー人気がなかなか高まらず、女子チームの経営は厳しいと聞いています。山田さんは、どんなところに原因があると思いますか?
(山田)男子と女子では迫力が変わってくる。ただ女子サッカーにはフェアプレーや、綺麗なパスワークがあって魅力はあるなと感じてますけれど。
(寺田)男子と女子では骨格や筋力など、どうしても性差が表れます。同じようなプレーにはならないので、女子サッカーは「男子に劣る」「マイナー」って捉える方も多いと思うんです。
もう一つ、環境面の原因もあると思います。小学生のときは少年団で女子も一緒にプレーしていますが、中学に上がると、女子サッカー部はほぼなく、限られたクラブチームしかなくなってしまいます。
根底には、ジェンダーの問題がないかなと思うんです。「女の子はサッカーなんか危ない」「サッカーは男のもの」というようなものがどうしてもあるんじゃないかなと。
ボニータの監督にお話を伺ったことがありますが、「男子とは異なる軽やかな身のこなしや小気味いいパス回しで女子サッカーの魅力を高めたい」と話していました。男子と張り合うのではなく、別の魅力がある。そこを見ていけば、女子W杯は面白いと思います。
男女一緒に楽しむ社会に

(寺田)女子スポーツの未来はどうあるべきかという話に行きたいと思います。男女どっちが優れてるという議論はあまり意味がないと思っていますが、オリンピックで男女の区別がない競技ってあるんですよ。
(山田)なんだろう…。
(寺田)馬術です。静岡でも、御殿場には乗馬クラブがたくさんあり、掛川のつま恋で国際大会をやったこともあります。「人馬一体」と言いますが、馬との関係をつくり、能力をどれだけ引き出すかにおいて男女差はないんですよね。
東京五輪では7競技で、男女一緒に行う種目が新設されました。卓球で水谷隼選手、伊藤美誠選手ペアが男女ミックスで優勝しましたね。
24年のパリ五輪ではさらに男女混合種目が増えるんですよ。今まで女性が主役だったアコースティック・スイミングのチームに、男子選手が入るんです。福岡の世界水泳で、男子選手が入って日本は銅メダルを取りました。水中のリフトの土台を男子選手が務めると、迫力が増し、男子の力を融合して独自の技ができたりするんです。
フットサルも、女性も一緒にやることがありますね。男女一緒に楽しむ競技も多いんです。今の男子サッカーはもちろん面白く、発展してほしいですが、別の視点として、男女関係なく一緒にスポーツを楽しめる社会をつくっていけたらいいなと思います。
(山田)そのきっかけとして、今回の女子W杯を見てもいいかもしれませんね。今日の勉強はこれでおしまい!


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