女子W杯の悔しさを胸に、なでしこ千葉玲海菜(藤枝順心高出身)がパリへ飛躍するか

10月26日からウズベキスタンで行われる、パリ五輪のアジア2次予選に臨む”なでしこジャパン”22人のメンバーに、ジェフユナイテッド市原・千葉レディースのFW千葉玲海菜が選ばれた。“千葉の千葉”としても有名な千葉玲海菜(れみな)は福島生まれだが、静岡県の藤枝順心高で大きく成長し、3年時にはキャプテンとして第26回全日本高校女子サッカー選手権大会の優勝を牽引した。
筑波大から千葉レディースに加入した千葉はWEリーグでの活躍が認められる形で、今夏の女子W杯に“サプライズ選出”された。しかしザンビアとの初戦で後半アディショナルタイムに宮澤ひなたとの交代で出場しただけで、その後は出番なく大会を終えることとなった。

大会中は明るく振る舞っていた千葉だが、大会後には「出場機会も無く、とても悔しい思いをしました。この経験を次に活かせるのも自分次第」と語った。

“B代表”でゴール量産

杭州アジア大会の優勝に貢献した千葉(15)


“なでしこジャパン”にとってW杯後の初戦となった9月の親善試合アルゼンチン戦は招集外に。しかし、代わりに”B代表”で出場した杭州アジア大会では、狩野倫久監督が率いたチームのエースとして君臨。6試合すべてにスタメン出場し、7得点をあげて金メダル獲得に貢献した。しかも決勝トーナメントの3試合すべてでゴールを決めているというのは価値が高い。

今回のパリ五輪アジア2次予選はW杯から1人少ない22人となるが、大会中に肩を負傷していた浜野まいか(チェルシー)が外れただけで、全く同じメンバーとなっている。

そうした構成になった理由として池田太監督は中2日でインド、ウズベキスタン、ベトナムと3試合を戦うにあたり、チームの連携が鍵になることを挙げる。それに加えて大会の登録期限が早く、メンバーリストを作成する段階で、アジア大会の評価などを反映できなかった事情もあるようだ。

それでもアジア大会で千葉が示したパフォーマンス、そして存在感というのは池田監督も高く評価している。千葉の選出理由について池田監督は「アジア競技大会でのプレーもそうですけど、W杯でのしっかりとした準備、振る舞い、プレーのすべてにおいて、また力になってくれると思って招集しました」と説明した上で、今後の活躍への期待を語る。

「アジア競技大会でもチームを引っ張る姿が見られましたし、彼女の持っている良さというものでプラスなもの、チームに力を与えてくれるんじゃないかと思っています」

日本のキーマンになりうる存在

静岡県にゆかりのある選手としてはJFAアカデミー出身の三宅史織(INAC神戸レオネサ)や遠藤純(エンジェル・シティー)、千葉の藤枝順心高の先輩である杉田妃和(ポートランド・ソーンズ)が引き続き招集されているが、千葉は“なでしこジャパン”でキャリアが浅く、ここからチームを活性化していくキーマンになりうる。

千葉といえば重心の低いドリブルから繰り出す豪快なフィニッシュが武器だ。アジア大会の決勝で、日本は難敵の北朝鮮を相手に苦しみながらも、後半に得点力が爆発して4−1と勝利。その4点目は、千葉が左サイドをドリブルで鋭く突き進み、左足のシュートを突き刺すゴールだった。

さらに飛び出しやゴール前の動き出しがうまく、ボックス内でのワンタッチゴールも多い。アジア大会の準決勝・中国戦では塩越柚歩(三菱重工浦和レッズレディース)のサイドチェンジを起点に、山本柚月(日テレ・東京ヴェルディベレーザ)が出したスルーパスに内側からタイミング良く飛び出すと、スライディングしながらノートラップの右足で流し込む見事なゴールを決めた。

FWの熾烈なスタメン争い

女子W杯で5−4−1を継続的に採用した”なでしこジャパン”だが、ここからパリ五輪でのメダル獲得に向けた新たなチャレンジとして、アルゼンチン戦は4−3−3のシステムにトライした。FW枠は田中美南(INAC神戸レオネサ)と植木理子(ウェストハム・ユナイテッド)がセンターフォワードのスタメンを争うが、そこに千葉が割って入れるか。

もちろん終盤に勝負を決定付けるジョーカーとしての役割も期待されるが、アジア大会の全6試合でスタメン起用されて掴んだ自信を胸に”なでしこジャパン”でもエースに君臨することができるか。アジア2次予選は確実に首位突破することがノルマとなる中で、千葉の猛アピールに期待だ。

<河治良幸>
タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。 サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。著書は「ジャイアントキリングはキセキじゃない」(東邦出版)「勝負のスイッチ」(白夜書房)「解説者のコトバを聴けば サッカーの観かたが解る」(内外出版社)など。
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タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。

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