【静岡大・浜松医科大の再編統合】合意から4年 なぜ膠着したままなの?

静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは膠着状態に陥っている「静岡大と浜松医科大の再編統合問題」。先生役は静岡新聞論説委員長の中島忠男です。
※SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」で放送したものを編集しています。

(山田)きょうは静岡大学と浜松医科大学の統合の話題ですね。この話が出てもう4年になるんですね。きょうは手元に実際の合意書の写しを持ってきていただいてます。

(中島)当時学長だった静岡大の石井潔さんと浜松医科大の今野弘之さんが署名しています。2つの大学が再編統合されるにしては非常にコンパクトです。

(山田)どういった形で今この2つの大学が統合するという話になっているんですか。

(中島)国立大学というのは名前の通り、以前は、国の機関、簡単に言えば文部科学省の1機関的な存在でした。ところが、大学が置かれてる環境、研究や教育、さまざまな世界の潮流の中で、いろんなことにチャレンジしないといけない、最先端の研究をしていかなきゃいけないというようになってきました。

そういう中で、国の機関であることが意思決定などの面で難しくなってきました。それで大学法人という法人格を得て、「自分たちのことは自分たちで決めてください」となったんです。それによって研究のパートナーを自前で探したり、自治体と連携をしたり、民間と連携をしたりして、大学の研究教育機能を活性化しようというのが狙いでした。

(山田)より大学の個性も出てきますもんね。

(中島)大学同士の再編統合というのは究極の政策判断と言えるのではないかと思います。2019年に静岡大と浜松医科大が再編統合するという一報を聞いたとき、私も「えっ」って思いました。

浜松地区では浜松医科大の医療部門と静岡大の工学部、情報学部が既に多様な面で連携し、特に民間を巻き込んで光を活用した医療機器の進展などで成果を上げていました。このため、静岡大と浜松医科大がもっと有機的に連携できるように、一体化したらどうかという声が、主に浜松から上がってきたということでした。

(山田)静岡大の工学部は浜松キャンパスですから、浜松医科大と連携しやすかったところはあると思います。

(中島)一方で、2つの大学が法人として一体化しても、静岡に1つの大学、浜松に1つの大学をそれぞれ新しく作るんですが、「静岡側って残り?」というふうに思う人が少なからずいらして、それが弊害になったのではないかと言われています。

静岡大内部に考えの差

(山田)なるほど。でも、再編統合しようという流れはあるわけですよね。なぜ4年もたっているのか、何が妨げになっているのか。

(中島)ここが非常に分かりにくいところなんですけど、静岡大と浜松医科大が法人同士で当初交わした文書について喧々諤々やってるわけではないんです。

(山田)静岡大と浜松医科大が喧嘩してるわけじゃない。ではなぜ。

(中島)静岡大の内部で、静岡キャンパスと浜松キャンパスの人たちの考え方に若干齟齬があるということが問題になっています。

ただ、大前提を申し上げますと、大学の当事者の皆さんは双方に大学の将来像を一生懸命考えているということは間違いない。間違いないけど、その思いがそれぞれ強いが故に、あるべき姿の大学像というのがなかなか一体化できないということだと思います。

(山田)僕はコミュニティFMで静岡大の学生とずっと番組をやってきたんですが、3年前にこの話題を学生が出してくれたことがありました。そのとき学生が言ってたのは「何で統合するのか分からない。統合したときのメリットなどを僕らにも教えてほしい」ということでした。確かにちょっと学生が置いてきぼりになっているのかなと思っていました。

(中島)国立大学に与えられる国の経費には限りがあります。(使い方には)2つの考え方があります。1つは富士山のように高い山のような研究を目指すのであれば、裾野を広くしなければ駄目じゃないかという考えです。特定の大学に一気にお金を集中させても、裾野が広くなければ大学って駄目になっちゃうじゃんという理屈があります。

もう一方で「広く資金をばら撒けば、世界と戦えるような大学になるんですか?」という理屈も成り立つ。難しいですよね。

(山田)確かに。

(中島)だから、静岡大と浜松医科大がこれからどうなっていくのかというのは、そういうお金をどれだけ国から獲得できるかということも関わっているんじゃないかなと思います。

あと1つ。私は最も大事なことだと思うんですけど、静岡県は人口が減り続けているんです。1番の理由に若者が首都圏に流れていってしまうということがあるんです。それは働く場所の問題が1つ。それからもう1つは、きっかけが大学進学になっているということがあるんですよね。

静岡大と浜松医科大は静岡県を代表する大事な大学です。ぜひ、この再編統合を機に両方の大学が輝いて、「ぜひ静岡で学びたい」という若者がいっぱい出てくるような議論になってほしい。そう切に願いながら5月16日の静岡新聞に掲載した論説「視座」を書かせてもらいました。

(山田)まさにその通りですね。それは今の大学生たちもそうですし、これから入ってくる子たち、そしてその町に住んでるわれわれがこの大学統合の行く末をどういうふうに見届けるかということも重要ですね。今日の勉強はこれでおしまい!

SBSラジオで月〜木曜日、13:00〜16:00で生放送中。「静岡生まれ・静岡育ち・静岡在住」生粋の静岡人・山田門努があなたに“新しい午後の夜明け=ゴゴボラケ”をお届けします。“今知っておくべき静岡トピックス”を学ぶコーナー「3時のドリル」は毎回午後3時から。番組公式X(旧Twitter)もチェック!

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