竜巻で被災した老舗織元・榛地織物の現在地 復興に向けて入れる"自社ネーム" 創業77年の歴史で初 2025年静岡県を振り返る③

9月の竜巻により伝統産業「遠州織物」の工場も大きな被害を受けました。海外でも評価される自慢の生地を未来へつなぐため、困難に向き合う織物会社を多くの人たちが支えています。

創業77年、世界的ブランドも認める品質の遠州織物が...

<榛地織物3代目 榛地研一さん>
「これは春夏物のおそらくアパレル向けだと思います。こちらは秋冬物なんですけど、作務衣の生地になります」

静岡県牧之原市細江にある、創業77年の榛地(しんち)織物。県西部で受け継がれる「遠州織物」を手掛けています。

豊かな風合いと耐久性がある生地は、国内外の有名アパレルブランドが買い付けるなど高く評価されています。

<伊豆川洋輔記者>
「創業70年を超える遠州織物の織元ですが、突風の影響で屋根をカバーをしていた瓦が飛んでしまい、織機は濡れている状態で、布にも土砂がかぶっています」

竜巻で屋根が吹き飛び、雨や土砂が流入。13機ある織機(しょっき)のうち10機が被害を受け、一時、操業を停止しました。

復興を支援しようとふるさと納税の注文相次ぐ

発災直後、3代目の研一さんのもとには友人たちが駆け付け、屋根の修理にあたりました。さらに、復興を支援しようと「ふるさと納税」の注文も相次ぎました。

<榛地さん>
「(ふるさと納税の注文者に)普段、普通に買ってくれる客の名前もあった。あえて市にお金が落ちるように気を遣って。行政も助かるし僕も助かるし、本当にありがたい」

創業以来初めて入れる予定の自社ネーム「榛地織物」

発生から3か月半、研一さんはクラウドファンディングの準備を進めています。取引先のデザイナーから支援やアドバイスを受けました。

<榛地さん>
「(工場の)修復修繕にかかるお金が保険も出るんですけど、やっぱり足りないので。賛同してくれたアパレルブランドの仲間が手伝ってくれたので、初心者の僕でも出来るような形でなんとか」

返礼品のひとつであるバッグのデザインは、有名ストリートブランドでデザイナーを務める仲間が担当しました。

77年の歴史で初めて、「榛地織物」と自社のネームを入れる予定です。

<榛地さん>
「(普段は)OEMの商品が多くて、自分たちの会社の名前を記すことはあまりなかった。縁の下の力持ちのように業界を支えていたつもりだったけど、クラウドファンディングのチャレンジを通して前に出させてもらおうかなと。

職人も従事する人も減っている、そんななかで『いいものは残していきたい』という思いはありますので、少しでも長く遠州産地が盛り上がるように頑張っていきたい」

伝統の産業を未来へとつむぎ、織機の音を牧之原に響かせ続けます。

「あしたを“ちょっと”幸せに ヒントはきょうのニュースから」をコンセプトに、静岡県内でその日起きた出来事を詳しく、わかりやすく、そして、丁寧にお伝えするニュース番組です。月〜金18:15OA

関連タグ

あなたにおすすめの記事

人気記事ランキング

ライターから記事を探す

エリアの記事を探す

stat_1