
ウナギを下水処理施設で育てる日本初のプロジェクトが浜松市で始まりました。環境にやさしく、コストも抑える養殖の新しいかたちです。
浜松の名物・ウナギ。おいしくて栄養抜群、食べた人を元気にするパワーフードですが、養殖に携わる人たちはいま、苦しい状況と向き合っています。
<浜名湖養鰻漁業協同組合 徳増源登さん>
「ウナギを養殖している池の中には、約1万3000匹ほど養殖している」
この養鰻場では、重油ボイラーを使ってハウス内の水温を26℃から30℃に保って育てていますが、近年、コストの上昇に頭を抱えています。
<徳増さん>
「以前では1リットル50円程度で仕入れることができたが、昨年来は1リットル100円。以前に比べれば2倍…。もちろん水温を下げれば使用量も減るが、そうするとウナギにとって免疫が下がってしまって調子を崩してしまうので、しっかりと温度管理はしている」
また、水車を使って酸素供給なども行っているため、電気代の高騰も経営に響きます。
<徳増さん>
「以前、最盛期の頃には、浜名湖周辺で400軒以上ウナギの養殖場があったが、最近では30軒を切り、27軒ほどに減ってしまっている」
養鰻業を活気づけようと、4月、日本初となる養殖プロジェクトが始まりました。
浜松市最大の下水処理場「西遠浄化センター」です。
<浜松ウォーターシンフォニー 中村匡志COO>
「水槽には約55匹のウナギが入っている」
一般的にウナギの養殖は、石油などの化学燃料を使って水温を26℃から30℃に保ちます。新たなプロジェクトでは、化学燃料の代わりに下水処理の過程で発生する余熱を利用します。これまで使い道のなかった100℃以下の低温の余熱をすべて活用できた場合、3500トンの二酸化炭素を削減できる可能性があるということです。
<中村COO>
「非常に多くの熱が余っているところでなくてはできない。かけ流した水が適切に処理できないといけないということを考えると、下水処理場でなくてはできない新たな取り組み」
また、下水処理の設備を使い、新しい温水を絶えず流し入れながら、水槽の汚れた水を排出する「かけ流し式」にすることで、養鰻作業の負担軽減にもつながります。
<徳増さん>
「若い世代はスマート漁業を取り入れて、よりリスクを減らした養殖技術の確立を目指していかなければいけない」
<中村COO>
「日本国内には約2000か所の下水処理場があるし、100を超える焼却炉がある。今回こういった技術を確立できれば、他の下水処理場で、他の魚種等で実施することも十分可能な技術と考えている」
このプロジェクトは、2028年3月までに結果がまとめられる予定です。