静岡市出身で、ご当地ソングも手掛けるシンガーソングライターとして活動してきた静岡県の焼津市職員牧野憲人さん(34)が、CDデビューを果たした。19年越しの夢を叶え、晴れて焼津市から「公務」と「歌手活動」の兼業を認められた牧野さんに、日々の両立生活やこれからの展望を尋ねた。(聞き手はSBS・滝澤悠希アナウンサー)
滝澤:2024年12月に全国デビューを果たされました。どんな心境でしたか。
牧野:中学3年生の時に音楽を始めてから、19年間応援してくださった方もいるので、まずは安心したという思いが一番でした。
滝澤:デビューシングルに収録されている「三日月の晩」、心に染みますね。この曲はいつ作られたんですか。
牧野:24歳の時です。社会人になって2年目で、いろいろな葛藤を抱えて、一番苦しかった時期に作った曲です。「出会いと別れ」を自分のテーマにしています。恋愛的な「出会いと別れ」というよりは、どちらかというと「人の生き死に」「人生の哲学」のようなところをテーマにした曲です。
滝澤:「生きる意味」など、私たち人間がどうしても向き合わなければならない問題ですが、それを“深刻に”ではなく、穏やかな気持ちで考えられる曲で、すごくいいなと感じました。
牧野:まさにそのような思いで作った曲です。
全部で100曲以上 公務員として働く傍ら 自宅のスタジオで

滝澤:これまでにどのくらいの数の曲を作りましたか。
牧野:忘れてしまった曲もあるんですが、おそらく全部で100曲以上は作っていると思います。
滝澤:作曲を始めたのはいつですか。
牧野:最初は高校2年生の時です。
滝澤:今は自宅のスタジオで作曲されているということですが、どんなことを心掛けて作っていますか。
牧野:感覚だけに頼らない、しっかりとした音楽を作るようにしています。
滝澤:どんな時に曲を思いつきますか。
牧野:「作るぞ」と気合いを入れて作るタイプなので、自宅にこもっている時に思いつきますね。
滝澤:その時は自分の世界に没頭しているんですか。
牧野:でも、結構苦しいことの方が多いんです。
滝澤:メンタルコントロールはどうされていますか。
牧野:ものづくりをする人間は、苦しさや葛藤があるから生み出せるという側面があると思うので、そこから逃げないようにする。ただそれだけだと思います。
滝澤:苦しみさえも受け入れるわけですね。活動拠点を静岡市から焼津市に移した理由は何ですか。
牧野:ライブで全国各地を回っていて、焼津を訪れた時に、焼津の人たちの温かさに引かれたことが一つの理由です。人柄も景色もすごくいいところに、自分自身が救われていると感じます。活動拠点を移して初めて作曲した焼津のPRソング「やいちゃん日本一!」は、半年あまり焼津市内を歩いて作曲しました。
滝澤:私も聴いてみて、焼津の街を散歩しているような気分になりました。ところで、牧野さんは公務員として働く傍ら、シンガーソングライターとしても活動していますが、そのようなことが可能なんですね。
牧野:私のように、公務員の仕事をしながら、休日に音楽活動をしている人は全国にたくさんいると思います。ただ、公務外で収入を得ることは地方公務員法で制限されていますので、今回のデビューを機に正式に、市の兼業許可をいただくことができました。大変まれなケースです。
滝澤:想いがあったからこそ、許可されたのかもしれないですね。
普段は地元の産業PR 公務と歌手どう両立

滝澤:公務員として普段、どんな仕事をしていますか。
牧野:焼津市商工観光課に所属し、主に地元特産品の販路拡大支援や産業シティーセールスをしています。焼津の産業などを全国にPRしています。
滝澤:やりがいはありますか。
牧野:直接地元の方々と接することがあるので、すごくやりがいを感じています。地元の皆さんと接する時に、皆さんの気持ちや仕事ぶりに触れながら、焼津のこんな場面を曲にしてみたいなと思うことがよくあります。住民の方との距離感が近いので、音楽活動にもダイレクトな反応をいただいています。職場の雰囲気も温かいです。
滝澤:兼業は、大変ではありませんか。
牧野:大変なことももちろんありますが、あくまで公務第一としながらも、仕事と音楽のどちらかで得られたものをもう片方に還元していくような、相乗効果も狙ってやっているところがあります。その意味で、前向きにやれていると思います。
滝澤:休めていますか。
牧野:休めているんですかね(笑)。やはり、やりがいも、大変なこともありますが、それがすべて楽曲作りに生かせるので、前向きに受け止めています。
滝澤:2024年12月24日には、デビューして初めてのコンサートが開かれました。たくさんの方が来られましたね。特別な思いで迎えたライブでしたか。
牧野:デビュー後初めてでしたし、地元の焼津で開催できたことがうれしいです。自分がいつもお世話になっている方々もお招きしました。皆さんもうれしそうにしてくださっていたのが一番良かったです。
滝澤:これからの夢はなんですか?
牧野:デビュー1作目のCDでは、自分が大切にしてきた2曲をリリースさせてもらいましたが、次は焼津や静岡をテーマにした曲を全国リリースしたい。そんな夢を掲げています。
滝澤:牧野さんの活動を通じて、焼津の魅力がいろいろなところに広まっていく、そんなきっかけになってほしいなと改めて感じました。
(2025年1月17日にYouTubeチャンネル「SBSnews6」で配信した『ついに全国デビュー 記念ライブは満員御礼 焼津を愛し愛される公務員シンガー牧野憲人さんの素顔』を基に再編集しました)