ジュビロ磐田、ラストワンプレーの衝撃!大宮を沈めた劇的逆転勝利が意味したもの

サッカージャーナリスト河治良幸

J2・J3百年構想リーグ第11節、大宮アルディージャとの一戦は、ジュビロ磐田にとって単なる逆転勝利以上の意味を持つ試合となった。内容面では課題を残しながらも、指揮官の修正力と選手たちの献身、そして途中投入されたゲームチェンジャーたちが噛み合い、26-27シーズンでのJ1昇格を目指すチームの成長に向けての重要な一歩を示したように見られたが、後日、志垣良監督の契約解除が発表された。

立ち上がりから試合は濃度が高く激しいゲーム展開となったが、主導権を握ったのは大宮だった。右サイドバック関口凱心を起点とした攻撃に押し込まれ、磐田側のミスを突いた大宮の中央攻撃から、泉柊椰のゴールで先制を許す。志垣良監督も振り返るように、前半途中から相手の[3-4-3]への変化に対応しきれず、特に自陣左サイドを攻略される場面が目立った。ただ、その中で崩れ切らなかった点が大きい。指揮官は「修正を少し加えたことで試合は落ち着いた」と語り、流れを完全に手放さなかったことが後半への布石となった。

実際、前半を1失点でしのいだ意味は大きい。前半ボランチ、後半の途中から右サイドバックに回って奮闘した植村洋斗も、うまくいかない時間帯でも「最少失点で抑えたことが逆転につながった」と指摘する。もし2点目を許していれば試合は決していた可能性もあり、この“耐える力”こそがこの日の勝因の土台となったことは確かだ。

後半に入ると、磐田は明確にギアを上げる。志垣監督はハーフタイムに「前への意識」と「前からの守備」を強調し、自分たちのスタイルを再確認させた。これに応える形で選手たちは運動量と強度を引き上げ、試合の流れを引き寄せていく。指揮官も「本当に選手が頑張ってくれた」と語るように、戦術的な修正以上に、ピッチ上の実行力が際立った時間帯だった。

そして、この試合の最大のポイントが交代選手のインパクトだ。まさしく投入された選手全員がゲームチェンジャーとなった。グスタボ・シルバ、佐藤凌我、川合徳孟といった縦に推進力のある攻撃的な選手たちが投入されると、チームは一気に前がかりとなり、相手を押し込む時間を増やしていく。

グスタボ・シルバはゲームチェンジャーとして起用された意図を理解した上で「試合の結果を動かす意識を持って入った」と語る。その言葉通り、川合のサイドチェンジに連動した絶妙な飛び出しから、佐藤の折り返しを決めると、同点で迎えたラストワンプレーのチャンスで自らシュートを選ばず、確実性を優先して佐藤へラストパスを供給。この判断についても「チームにとって勝つことが一番重要だった」と強調しており、個よりもチームを優先する姿勢が象徴的なプレーとなった。

決勝点を決めた佐藤もまた、その意識を体現した一人だ。「自分の得点というよりもグスのゴール」と語るように、得点以上に連動性を重視する姿勢が見て取れる。さらに、途中出場ながら守備のプレスやポジショニングにも意識を向けており、攻守両面で流れを変えた存在だった。

同点ゴールの起点となった川合も積極的な仕掛けで攻撃に変化をもたらした。「攻撃回数を増やすこと」を意識し、自ら違いを生み出そうとする姿勢がチーム全体の推進力を高めた。彼ら途中出場組に共通しているのは、「自分が試合を変える」という明確な覚悟であり、それが後半の運動量増加と攻勢につながった。

一方で、試合全体を通して見れば課題も少なくない。前半の大宮に対しては後手を踏むシーンは多く、ボランチの守備範囲やスライドの距離、ビルドアップ時の前進(プログレッション)など、26-27シーズンの昇格を基準にすれば、これから改善していかなければいけない要素は山積している。それでも、終盤に中盤を支えた藤原健介が語るように「勝って反省できる」状況に持ち込めたことは大きい。単なる内容の良し悪しではなく、勝利を伴った上で修正を重ねていくプロセスに入れた点に、この試合の価値がある。

この逆転勝利の本質は三つに集約される。ひとつは前半の劣勢を最少失点で凌いだ守備の粘り、ふたつ目は後半に向けた明確な戦術修正と強度の引き上げ、そして三つ目が途中出場選手によるゲームチェンジである。加えて、グスタボや佐藤が示した「チームのための選択」に象徴されるように、個々の判断基準が共有されていたことも見逃せない。

志垣監督が強調する「謙虚にひたむきにハードワークする」というベースは、この試合で確かに示されたように感じられた。それだけに、このタイミングでの監督交代は残念でならないが、三浦文丈新監督とともに、前向きに残りシーズンを戦ってもらいたい。(※本稿の大宮戦レビュー部分は試合後に執筆しました。結びは、監督交代のリリースを受けて加筆しています。)
(文:サッカージャーナリスト河治良幸)
シズサカ シズサカ

タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。サッカー専門新聞「エル・ゴラッソ」の創刊に携わり、現在は日本代表を担当。世界中を飛び回り、プレー分析を軸にワールドサッカーの潮流を見守る。

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