百年構想リーグに昇降格は存在しないが、結果に加え、クラブの進むべき方向をはっきりと形にするための重要な時間となるだろう。在籍3年目となる渡邉りょうは「次の新しいリーグへのつなぎの期間ではありますけど、その中でも自分たちが目指しているのが1位というところは変わらない」と主張する。ここでタイトルを狙う戦いができないようでは結局、26-27シーズンでも昇格を勝ち取る流れを掴むことは難しいというマインドだ。

2025シーズンを前に、クラブは「J2優勝・J1昇格」という明確な目標を掲げた。当時のジョン・ハッチンソン監督のもとでは、攻守にわたり、自分たちからゲームの主導権を握るための“アクションフットボール”の実現に挑んだ。上位対決では高い勝率を挙げられたが、試合を積み重ねる中で浮き彫りになったのは、パフォーマンスに大きな波があったことだ。
それは自分たちの好不調に限った話ではない。徹底した“磐田対策”を施してくる下位チームから勝ち点を落とす試合が目立ち、特に失点の多さは夏場を過ぎても解消されなかった。体力、技術、戦術だけでなく、試合状況に応じたゲームマネジメントの課題とも深く結びついていた。象徴的な出来事として現れてしまったのが、監督交代に直結したホーム大宮戦の大逆転負けだ。
その後、リーグ戦7試合を残して、それまでU-18を率いていた安間貴義監督が指揮を引き継いだ。改めてJ1昇格を明確な目標に掲げた安間前監督は、リスクを承知の上で選手の体力強化やメンタル面の立て直し、プレーオフからの逆転昇格を狙うための現実的な戦いに舵を切る。V・ファーレン長崎との大一番で3バックに変更すると、アウェー鳥栖戦でのドラマチックな勝利によってリーグ5位に食い込み、残り1枠をかけた昇格プレーオフにすべてを懸けることとなった。

プレーオフ準決勝の徳島戦は前半から劣勢を強いられる中で、どうにか先制点を奪ったものの、試合終盤に隙を突かれクロスから同点に追いつかれた。90分で引き分けの場合はリーグ戦上位クラブが勝ち進むというレギュレーションにより、無念の敗退となった。その試合展開だけを切り取れば、終盤の失点場面でもう少し集中力を高く保ち、深く守れていれば、運命は変わり得たかもしれない。しかし、突き詰めてシーズン全体を振り返れば、長いリーグ戦で露呈した課題がそのまま反映された、必然の結果とも捉えられる。
新体制発表の場で、藤田俊哉SDは「攻撃面ではある程度の得点を重ねることができた一方で、守備面の課題が多く残り、その弱さが最終的な成績や結果に表れてしまった、非常に悔しいシーズンでした」と振り返り、志垣監督には守備のベース構築と、これまで積み上げてきたアタッキングフットボールの両立を求めた。
確かに昇格を狙う本番は、いわゆる“秋春制”がスタートする26-27シーズンだ。ただ、百年構想リーグから始まる1年半の戦いという認識は、クラブ内でも強い。もちろん、半年間の戦いの後にはオフが挟まり、沖縄県・糸満市と静岡県・御前崎市で予定される夏季キャンプからリスタートしていく流れになる。しかし、百年構想リーグを単なるチームづくりの期間と割り切るのではなく、タイトルを獲りに行く中で成長しながら、今のチームに不足している“勝者のメンタリティ”を身につけていくべき期間でもある。

渡邉も「昇格があろうとなかろうと、勝ち癖をつけていかなきゃいけないと思うし、順位もはっきり出るので」と語る。志垣監督も「昇降格がないから勝敗は二の次、ということには絶対にならないと思っています。プロである以上、勝敗にこだわり、結果を求めてやっていく」と前置きした上で、この期間に戦術的なトライや新戦力の組み込みにも注力していくビジョンを明かしている。志垣監督の選手起用の基準となるのは「なぜ、あなたでなければならないのか」という言葉。つまり、練習から価値を示した選手しか試合で起用しないという明確なメッセージだ。
若手もベテランも関係ない競争の中で、ユースから昇格した18歳の石塚蓮歩や甲斐佑蒼、全国高校サッカー選手権で活躍した、高卒ルーキーの増田大空(流通経済大学附属柏高)といった若手が、どこまで本格的に競争へ入り込めるか。夏には、いわゆる“ポストユース問題”の解決を目的に、高卒や昇格でプロ入りしたばかりの選手たちに試合のプレー環境を与えるU-21リーグが始まる。トップとユースをつなぐ位置づけになるはずだが、彼らがその環境に甘えることなく、まずは昨年の川合徳孟のように、シーズン序盤からポジション争いに割って入る姿勢を見せることが、チームの活性化につながる。
磐田は前述の3人に加え、一昨年から特別指定選手としてチームに帯同していた大卒ルーキーの吉村瑠晟といった新卒選手を除くと、新加入選手は横浜FCから移籍したセンターバックの山﨑浩介のみだ。一方で、昨季の磐田からはJ2の優秀選手賞にノミネートされた倍井謙が、名古屋グランパスからの期限付き移籍を延長。さらに、サンフレッチェ広島から夏に期限付き移籍していた井上潮音が完全移籍で正式に加わるなど、継続路線でチームを強化できる状況にある。
ただし、それは一歩間違えればチームのマンネリ化を生み出すリスクもはらむ。試合での一体感は重要だが、志垣監督が求めるように、練習から常に激しい競争が起なければ、百年構想リーグを戦うチームは26-27シーズンを待たずして停滞しかねない。渡邉も「去年のような雰囲気でできることもありますが、もう一回ピリッとしないといけない」と指摘する。ほぼ同じ戦力で臨むからこそ、志垣監督の指導による戦術的なアップデートはもちろん、個々が一回り、二回りと成長することが、百年構想リーグでの躍進には欠かせない。
もちろん、ここから半年間のパフォーマンスを踏まえ、夏には26-27シーズンに向けた補強も行われるだろう。ただ、渡邉が「去年の最後の悔しさがあったからこそ、みんなが残るという決断をしたと思う。彼らの判断が正しかったということを証明したい」と語るように、ここから始まる1年半の戦いの最初の半年間で、チームの成長を内容と結果の両面から示していくシーズンにしていくことが望まれる。


































































