静岡県サッカー協会審判委員長・茶山暁志さんにペナルティ・ヒデが聞いた!奥深きレフェリーの世界

SBSラジオの静岡サッカー熱血応援番組「ヒデとキトーのFooTALK!」に、静岡県サッカー協会審判委員長の茶山暁志さんをお招きしました。パーソナリティのペナルティ・ヒデさんと鬼頭里枝さんがスタジオで話を聞きました。(2025年4月29日放送)

(鬼頭)サッカーの試合に欠かすことができない存在がレフェリーです。今日はスタジオに静岡県サッカー協会・審判委員長の茶山暁志(ちゃやまあかし)さんにお越しいただきました。よろしくお願いいたします。

(ヒデ)茶山さんは名字からして、やはりお茶どころのご出身ですか?

(茶山)両親は静岡市出身ですが、全然お茶関係ではありません。父親は静岡市葵区の北沼上、竜爪中辺りの出身です。

(鬼頭)普段はどういったお仕事をなさっていますか?

(茶山)私は審判委員長が本職ではなく、別の仕事を持ちながら、審判委員長も務めています。本業はサッカーに関わるNPO法人を運営しています。農福連携で障害者を雇用した農業を行っているほか、障害者スポーツの振興、あとは県の社会人チームも持っています。

1万人超の審判員が支える静岡のサッカー


(ヒデ)今、静岡県にはどれくらいサッカーの審判員がいますか?

(茶山)登録者数は現在、約1万1500人です。

(ヒデ)全国的に見ると多い方なんですか?

(茶山)昔は全国トップ3に入るほどでしたが、コロナ禍を経て3000人ほど減ってしまい、今は全国で5、6番目くらいでしょうか。

(ヒデ)それでも1万人以上の方がいるんですね。茶山さんも審判員をされていたんですか?

(茶山)はい。審判委員長は今年で2年目になります。

(ヒデ)障害者サッカーなどを支援しているということは、茶山さん自身もサッカーと深い繋がりがあるということですね。

(茶山)僕は小学2年からずっとサッカーをやっていて、今も社会人チームに登録しています。

(ヒデ)ずっとボールを蹴っているんですね!

(茶山)はい。先日も開幕戦でチームのゴールキーパーがいなくて、残り15分くらい出場しました。

(鬼頭)すごーい!茶山さん自身の出身はどちらですか?

(茶山)浜松市です。先日この番組に出演された静岡県ビーチサッカー連盟の澤田達哉さんは、小学生の時に同じ少年団で僕の後輩でした。

(ヒデ)審判の級は何級で、どこまでの試合で(ホイッスルを)吹けるんですか?

(茶山)私は2級なので東海地域で「地域リーグ」までは吹けます。Jリーグは1級審判員でないと担当できません。

(ヒデ)どうせなら今からでも「1級」を目指すということはないんですか?

(茶山)かつて1級にチャレンジできる可能性があったんですが、挑戦できるかどうかの審査の時にパフォーマンスがあまり良くなくて(笑)。「お前は指導者だな」と言われました。2級の審判員としては6〜7年やりました。

(ヒデ)レフェリーに対していろいろな意見を言う人がいますけど、本当に選ばれし人が吹いてるんですね。決して簡単な職業ではない。

(茶山)本当に難しい仕事だと思います。

(ヒデ)実際、レフェリーだけで生活していくことは可能なんですか?

(茶山)プロフェッショナルレフェリーの人は「職業」としてやってますから生活できると思います。

プロフェッショナルレフェリーは狭き門

(ヒデ)日本にはどれくらいプロフェッショナルレフェリーがいるんですか?

(茶山)今、全部で24人ですね。全国で主審が18人、副審24人です。

(鬼頭)少ない!本当に狭き門ですね。静岡県サッカー協会にもプロフェッショナルレフェリーはいらっしゃるんですか?

(茶山)1人います。今年から契約した大橋侑祐さんです。私が強化部長だった時に、大学1年の大橋さんが2級の審判に挑戦しに来ました。当時から背が高くて「久しぶりにいい人材が入ってきたぞ!」と。将来に期待できると思いました。

(ヒデ)屈強なプレイヤーに対しても威厳を保てそうですし、ピッチ全体を俯瞰して見れる可能性がありますからね。

(鬼頭)その期待に応えて、今年2月、大橋侑祐さんが静岡県初のプロフェッショナルレフェリーになりましたね。何がそんなに難しいんですか?

(茶山)やはり語学力や体力が必要ですし、フィジカルチェックも毎年行われます。

(ヒデ)主審は1試合で約13〜15キロくらい走りますから、そりゃ体力がないと務まりませんね!

(鬼頭)サポーターにもいろいろ言われますし本当に大変な仕事だと思います。大橋さんはそれを乗り越えて、県内初のプロレフェリーになったんですね。大橋さんの年齢は?

(茶山)31歳です。

(ヒデ)本当にすごいことですよね。もちろんプロレフェリーとして、他にも仕事を抱えることもできるでしょうけど。海外、例えばイタリアなどで笛を吹いている有名なワールドカップ審判、コリーナさんなどは1億稼いでいると聞いたことがありますが、日本はまだまだでしょうか?

(茶山)そうですね。まだまだだと思います。

(ヒデ)そのためにJリーグはもっとレベルも人気も上げる必要がありますね。

未来を担う若手の育成に注力!

(鬼頭)先ほど、審判員の数がコロナ以降減ったという話がありましたが、県サッカー協会は育成にも力を入れているそうですね。具体的にはどのようなことを?

(茶山)10年ほど前からユース審判員を対象に育成に力を入れ始めました。現在、静岡県のユース審判員は4級審判員が2001名、3級が46名と、合計2047名が登録されています。県内の4市の大会、NTTカップ、しずぎんカップなどの大会でユースが経験を積める場を提供してもらえれば、静岡県ならではのいい取り組みになると思います。

(ヒデ)あれだけ歴史のある有名な大会で笛を吹けるわけですからね。その中で、県内の女性レフリーはどうでしょう。

(茶山)県内でサッカーの1級審判員は2人います。そのうちの一人は国際審判員の一木千広さんでフットサルにも女子の審判員が1人います。

(鬼頭)徐々に女性も進出していますね。さらに今年度からユースに加えて23歳以下の育成も始めたそうですね。より若い世代から審判に親しんでもらおうという狙いがあるんでしょうか。

(茶山)ユース年代に育成した子供たちをさらに継続的に育成しようということで、昨年11月からトライアル研修に参加してもらい、大きな反響がありました。35人以上のユース審判員が「学びたい」と声を上げてくれ、今年から本格的にスタートしました。若いうちに経験を積んで、早く上級審判員として全国で活躍してほしいですね。

(ヒデ)目も慣れるし、実際のゲームで学ぶことが大事ですものね。

(鬼頭)あと例えばですが、もちろんピッチに立つ選手も素晴らしいですが、その横で審判としてワールドカップに出場できる可能性があると考えたら、サッカー選手とは違うもう一つの道として魅力的ですし、夢が広がりますよね。

審判員という仕事の醍醐味、魅力とは?


(ヒデ)審判員は、選手の前に表彰されて、メダルもかけてもらえる。名誉なことですよね。そもそもレフェリーがいなければ試合は到底、成立しないですし。でもいろいろとご苦労もあるじゃないですか。茶山さんは「審判の魅力」についてどう思いますか?

(茶山)本当にねぇ…、よく聞かれるんですよ。「審判の魅力って、何なんですか?」ってね(苦笑)。

(ヒデ)だってやっぱり大変じゃないですか?「茶山ーッ!」とかって文句も言われるでしょう?

(茶山)そうですね(笑)。レフェリーは正しく判定して当たり前。ミスをすれば大きく取り上げられる難しい立場だと本当に感じます。だけどやっぱりゲームの中ではレフェリーが一番重要だし、本当にいなくてはならない存在だと思っていますけどね。

(鬼頭)おっしゃる通りです。間違いないです。

(茶山)よく言われるのは「誰よりも間近にプレーが見られる特等席だ」ということですね。あとは、両チームの誰よりも先にピッチに入れるのが一番の魅力だと。そしてやはり、笛の音に皆さんの注目が集まるということも醍醐味の一つだと思います。

(ヒデ)「ちょっと2秒くらい笛を吹かないで行こうかな」みたいなことも、レフェリー次第ですもんね。

(茶山)そうですね、はい(笑)。

(ヒデ)笛に始まり、笛で終わるわけですからね。責任重大だけど、やりがいもありますよね。どうですか?ご自身の中で一番、渾身のひと吹きだったのはありますか?

(茶山)JFLでは主審を務めたことはないのですが、ジュビロさんなどのトレーニングマッチを担当させていただいて、自分の中でサッカー観などが非常に深まったと感じています。

(ヒデ)同業者として、レフェリーとして、「この人は上手い!」という方は?

(茶山)やっぱり元国際審判員の西村雄一さんなどは上手いなぁと思います。あとは今、JFLの審判マネージャー・佐藤隆治さんとかですね。

(ヒデ)前に西村さんにインタビューした時に、W杯ブラジル大会初戦のあの笛について聞かなければいけない場面がありました。石井さんは「自分に自信があるとかではなく、ちゃんとルールブックに基づいて笛を吹いたので間違っていないと思います」と。毅然とした態度とコメントに、実直に仕事に向き合い、笛を吹いているんだと心を打たれました。

(茶山)ファールにしろノーファールにしろ、レフェリーは考え、見極めて、判断します。そこは理解してもらえるとありがたいですね。

(鬼頭)番組のXに「サッカーのレフェリーは経験者でないとなれないんでしょうか」という質問が来ています。

(茶山)サッカー経験者でなくても、審判の資格は全然大丈夫です。誰でもなれます。ゲームには色々なドラマがあるので、そこに立ち会えるのは非常に魅力だと思います。

(ヒデ)もちろん公平に吹いている中でも、自分のジャッジで歴史を変えてしまう、変えられるポジションでもあるんですよね。

(茶山)そうなんです。本当にレフェリーの判定一つでゲームが変わってしまう、非常に重要な役割だと思います。

(ヒデ)たまに、僕なんか偉そうにレフェリーについて言うことがありましたが、こうやってお話を聞くと、僕が間違っていたかなと思うこともありますね。やっぱり本当に背負ってやられているわけだもんね。

(鬼頭)これからは何か言っちゃダメですよ(笑)。よく試合を見ながら「これは流すんだ」「これは含んだ」とか勝手に文句言ってますけどね。すみません!代表して謝っておきます。

レフェリーへの道は経験不問!まずは講習受講を

(ヒデ)今後、茶山さんはご自身として、そしてサッカー協会審判委員長として、どうしていきたいですか?

(茶山)「サッカー王国静岡」のさらなる発展を協会が目標に掲げています。委員会として審判の魅力や楽しさを発信し、普及育成や強化に繋げていきたいです。地域、国内、世界で活躍できる審判員が静岡からたくさん出ていくことで「さすがサッカー王国静岡だ」と思ってもらえると思います。

(ヒデ)審判の資格を持つと、サッカーの見方は変わるものですか?娯楽やスポーツの域を超えた特別な見え方ってあるのでしょうか?

(茶山)ルールが分かってくると、「そうか、レフェリーはそういう見方をしたんだ」とか、得点のチャンスになりそうだというアドバンテージをかけているなとか。やはり見方は変わると思います。

(ヒデ)「こいつ、ギリギリ上手いな、ファールが」みたいな選手も見えてくるわけでしょ?

(茶山)中にはいると思います。

(ヒデ)本当はもう吹いてもいいけど、その後のなんか態度とか。やっぱりちょっとあったりします?

(茶山)あると思います。

(ヒデ)あるでしょうねぇ。人が吹いているんですから。J1とかになると俯瞰でVARもありますからね。

(茶山)VARも最終的には人の目による判断で、機械が判断してるわけではないんです。

(鬼頭)最終判断はそうですよね。

(ヒデ)どこを見ますか?僕は家で酒を飲みながら試合を見ていると、(自分がやっていた)ディフェンス重視で見たりする瞬間があるんです。茶山さんもレフェリーばかり目で追っちゃいませんか?

(茶山)やっぱりレフェリーを見ちゃいます(笑)。

(ヒデ)レフェリーばかり見てたらゴールが入っちゃってた、みたいなね(爆笑)。面白いなぁ。

(鬼頭)今日の放送を聞いてレフェリーをやってみたい!と思った人は何から始めればいいですか?

(茶山)サッカーもフットサルもまずは審判員4級の講習を受けてからのスタートです。興味のある人は県サッカー協会のホームページをご覧ください。

(ヒデ)最後にリスナーにメッセージをお願いします。

(茶山)いろんなことを言われたりもしますが誰よりも近くでプレーが見られます。ぜひ私たちの仲間に入って一緒に審判をやりましょう!

(鬼頭)茶山さん、ありがとうございました。
シズサカ シズサカ

サッカー大好き芸人、ペナルティ・ヒデと、サッカー中継のリポーターとしても活躍する鬼頭里枝の2人がお送りする番組。Jリーグから海外サッカー、ユース世代、障がい者サッカーなど幅広くスポットを当て、サッカーを通して静岡を盛り上げます。目指すは「サッカー王国静岡の復権」です!

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