
(写真左から)金子翔太、ペイショット、石田雅俊
ジュビロ磐田は東京ヴェルディとの試合で、ジャーメイン良が顔面陥没骨折という重傷を負って離脱して以降、サガン鳥栖と北海道コンサドーレ札幌を相手に2試合無得点が続いた。
しかし、エコパスタジアムで行われた浦和レッズ戦では途中出場の金子翔太が同点ゴール。ジャーメイン不在の中で、チームは3試合1得点という状況ではあるが、開幕戦以来のリーグ戦となった金子が突破口を開いたことで、ここから攻撃面が活性化していくことが期待できる。
横内昭展監督は「彼(ジャーメイン)と同じ立場でやってる選手はまだいるし、そういう選手からすれば、結果を残していくことで、またピッチに立てる。試合に出ている選手もそこに甘んじることなく、勝ち取っていく意識が芽生える。本当にいい競争が生まれるなと思います」と語る。
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スタンドで鳥栖戦を見守るジャーメイン(右上)
ジャーメインは無事に手術を終え、すでにグラウンドにも元気な姿を見せているが、負傷した箇所が顔であるため、横内監督は「本人の恐怖心などチェックするところはありますが、1カ月ぐらい」と本格復帰の見通しを語る。
ここから週末の湘南ベルマーレ戦はもちろん、6月の3、4試合まではジャーメインがいないことを覚悟して、戦っていく必要がある。その間に誰が磐田を勝利に導くゴールを奪えるのか。
ペイショットは2列目との連係がカギ
第一候補はFWマテウス・ペイショットだ。開幕戦から4試合は途中出場だったが、徐々にコンディションもフィットすると、ジャーメインとの“ツインタワー”で攻撃を引っ張り、4得点1アシストを記録している。ジャーメインを欠いた3試合では得点がないものの、浦和戦でもセットプレーからのヘディングシュートをGK西川周作のビッグセーブに阻まれるなど、惜しいシーンはある。金子もペイショットとの縦のコンビに手応えを語っており、この2試合でスタメン出場している山田大記を含めて、2列目の選手たちとの連係構築が鍵になりそうだ。
逆輸入アタッカー石田
ペイショットに次いでゴールが期待されるのは石田雅俊だ。ジャーメインを欠く1試合目となった鳥栖戦にスタメン起用されて、ペイショットとの縦の2トップで71分までプレー。2本のシュートを放ったが得点ならず、チームは0−3で敗れた。石田は「セカンドボールの予測は1つの武器」と語るように、ペイショットが落としたボールを拾ってシュートに持ち込む形を意識している。一方、ジャーメインがいない状況で、もっと裏を狙って飛び出すようなプレーも心がけていきたいという。
京都サンガでJリーグのキャリアをスタートした石田は2019年から韓国にわたり、Kリーグで実績と経験を積んできた、いわば逆輸入のアタッカー。
「Kリーグに比べてもテンポ感が早い」とJリーグの印象を語るが、試合に出ることで、そのテンポにも慣れてきている様子だ。韓国で1部と2部を合わせて5年間で44得点をマークしてきた決定力をここから発揮してくれたら、エース不在時の救世主になるだけでなく、ジャーメインが復帰しても重要な攻撃のオプションになっていくことは間違いない。

(写真左から)平川怜、上原力也、松本昌也
主力を担う平川怜や松本昌也といった2列目の選手たちも、より一層、チャンスメークだけでなく、ゴールを奪う仕事が求められてくる。
松本は3アシストしているが、ここまでリーグ戦の全試合に右サイドハーフでスタメン出場して無得点というのは寂しいものがある。
左の平川はサイドアタッカーというより、中央に流れてチャンスに絡むことの多いタイプだが、ここまでアウエーの札幌戦を除く試合にスタメンで起用されて無得点、アシストもゼロというのは物足りない。
平川は昨季、J2のロアッソ熊本で7得点9アシストと大暴れして評価を勝ち取った。左サイドハーフで、守備のタスクやビルドアップ、浦和戦の金子のゴールに絡んだシーンなど、仕事は多岐に渡る中でも、そろそろ目に見える数字がほしいところ。鳥栖戦ではクロスバー直撃のシュートを見せており、感覚的な部分ではフィットしてきているようだ。
上原のミドルは蘇るか
ここまでフル出場の上原力也は、昨季はボランチながらJ2で7得点。ただ今季は自慢のミドルシュートが鳴りを潜めているのは気になるところ。中盤の守備やパス出し、周囲のサポートなど横内監督も信頼する仕事ぶりで、現在の磐田に欠かせない存在になっているが、そこにゴールやアシストという結果を加えてこそ、という意識は上原も強く持っているようだ。
「得点を取ることが一番ですし、去年より攻撃の時間が少ない分、1つ1つ、1本1本のシュートのクオリティは大事になってくる」と語る上原は、ショートカウンターの重要性を指摘。グラウンダーのパスを駆使してゴール前に運んでいくことが、得点力のアップにつながることをイメージしている。
浦和戦の金子のゴールは上原のミドルシュートのコースを変えて、GK西川の逆をつく形だった。直接のゴールも時間の問題かもしれない。
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調子を上げるブルーノ・ジョゼ(左)
徐々に調子を上げているブルーノ・ジョゼは右サイドからのクロスだけでなく、カットインからゴールを狙っていくプレーも持ち味。
怪我で出遅れていた21歳のFWウェベルトンもようやく全体練習に戻ってきた。「体重はそんなに増えてないと言ってたんだけど、見た感じ大きくなった気がして。本当に楽しみにしている選手の一人」と横内監督。
藤田俊哉SDによると年齢的にも“成長枠”ではあるが、スピードとパワーを兼ね備えている。初めて対戦する相手にとっては情報がない分、後半戦で一気にブレイクする可能性を秘めている。

今後は数字が求められる古川(中央)
もちろん、ここまで主にジョーカー的な役割を担いながら、結果を出せていない古川陽介にはそろそろ“目覚め”を期待したい。前線で縦横無尽の動きを見せる藤川虎太朗にしても、数字がついてきていない現状をそろそろ打破してもらいたい。
セットプレーからの得点力という意味ではキッカーの藤原健介がキーマンだが、ターゲットマンとしてはDF西久保駿介の跳躍力とヘディングの能力にも期待したいところ。
面白いところでは浦和戦の翌日、怪我から復帰した伊藤槙人が、味方のクロスに飛び込んで合わせる練習で、一番得点を決めていた。「たまたまです」と本人は照れ笑いしていたが、そうしたセットプレーも、エース不在時には貴重な得点源としてこだわってもらいたい。