元浦和レッズの山田暢久さん(藤枝東高出身)がジュニアユースの指導で大切にしていること「人間的に成長する時期。大変だけど面白い」


藤枝東高から浦和レッズに進み2013年に引退したサッカー元日本代表の山田暢久さん(49)が3年前から、埼玉県幸手市を拠点にするRebola(リボーラ)FCジュニアユースの監督を務めている。この夏、チームを率いて初めて地元静岡で合宿を行った。

現役時代、高い身体能力を生かして浦和の中心選手として活躍した山田さんは今、どんなことを重視しながら中学生たちとボールを追いかけているか。話を聞いた。

山田暢久(やまだ・のぶひさ)藤枝市出身。藤枝東高時代は1993年高円宮杯全日本ユース大会優勝。県代表として国体連覇に貢献した。卒業後、1994年から20年間浦和一筋で活躍し、J1通算501試合出場25得点。2006年J1優勝や07年アジア・チャンピオンズリーグ制覇などに導き、日本代表では03年コンフェデレーションズカップなど15試合に出場した。引退後は浦和レッズのスカウトや社会人チームの監督も務めた。

ー静岡で合宿を行うのは初めてですか?
はい。今年はクラブ創設3年目で、初めて3学年そろいました。この夏は1学年ずつ順番に静岡で合宿を行い、県内で子どもたちを指導している藤枝東時代の同級生たちに頼んで、練習試合を組んでもらったり、県内のあちこちの大会に参加させてもらったりしています。

ー普段は埼玉でどのぐらい指導されているんですか。
ジュニアユースは週末を含めて週4日の練習があります。ほかに僕は小学5、6年生対象のスクールでも週1日指導しています。自分でバスを運転して遠征に行くことも。選手集めも忙しく、今はスカウト活動なども入ってきています。

ー選手は何人ぐらい?
3学年で70人ぐらい。1年生は30人ぐらいいます。小学生のスクールを合わせると、400近いですね。

ー中学年代の指導で重視していることは?
これから社会に出ていく重要な時期なので、挨拶などの常識についてはクラブ全体で大切にしています。ただ、学校生活や家庭で起きたことについては、どこまで介入していいか正直まだ分からず試行錯誤していますね。

サッカーに関して言えば、1年生の担当スタッフには基礎を徹底的に身に付けさせてほしいとお願いしています。選手個々の能力に差はあるので、1、2年生の頃は結果は気にしなくていいと思っています。勝負は3年生の時。そこで、ある程度サッカーになっていればいい。

今の3年生も最初は大変でしたが、今はリーグ戦などでも良い戦いができるようになってきました。まずはベースの部分を大切にしています。

ーベースとは「止めて、蹴る」のことですか?
それだけではなく、ドリブルしながら常に相手と味方の状況を確認できているとか。そういう段階まで、まだまだの子もたくさんいるので。

サッカーだけではなく、学校や家庭のことも絡んでくるので、この年代の指導は本当に難しいですね。

ー難しいとは。
例えば3年生は進路の問題があります。高校の監督や先生方に選手を見てもらえるようにお願いに回ったり、練習に来てもらったり。

全国優勝したこともある高校の練習会に参加して、来春入学する予定の選手も出てきました。

ー山田さんは現役時代はやんちゃなイメージでした。指導者になっても、選手にのびのびとサッカーをやらせている?
うーん(笑)。それでもやっぱりサッカーにおける規律は持たせようとはしています。自分勝手なプレーはチームにも迷惑をかける。ちょっと履き違えて自分がしたいプレーをした時には指摘しています。規律を守った中でプラスアルファのプレーをやる分にはいいと思いますが、一人だけ守備をしなかったりすれば…。

ー中学の部活の地域移行が進んでいます。サッカー人口が減っていくのではと心配です。
幸手市もサッカー部員が集まらなくて、隣の中学と一緒になって試合をやったりしている学校もあります。今はクラブでもいろいろな大会がありますが、僕らの時代は中体連の大会を目指して頑張っていたので寂しい気持ちはありますね。

ー山田さんは現役時代、どのポジションでも高いレベルでこなす器用な選手の筆頭でした。
今も子どもたちには、いろんなポジションをやらせています。小学生時代は前線の選手だった子を中学1年で入ってきた時からいきなり最終ラインにしたこともありました。「将来的に後ろのポジションの方が良くなるのでは」と思ってポジションを変えたりとか。

今の3年生にも190センチ近くまで成長しそうな選手がいて、大きなサイズでサイドバックがやれたら相手にとって脅威。いろんなところをやらせて能力を判断しながら、上につながるように適正なポジションを選んであげることができたらと思っています。

ー全日本少年サッカー大会がある小学年代や、全国高校選手権などがある高校年代と比べ、中学年代は注目度という点で劣りますが…。
中学年代は人間的に成長する時期ですし、やっぱりサッカーもすごく変わってくる。大変ですけど面白いですよ。型にハメないようにしながらサポートしていきたいと思っています。成長スピードがそれぞれ全然違い、いろんな子がいて、それぞれに個性があります。

ー今後はプロクラブの指導者も目指す?
まったくないです。ちょっと窮屈かな(笑)。それよりも今は子どもたちとの合宿も楽しいですし、いつかは地元の静岡の子どもたちの指導に携わってみたいなという思いはあります。

ークラブと自身の目標は?
これから何十年と継続できるようなしっかりしたクラブにしていくこと。Jリーグや海外クラブに選手を輩出できるようなチームになれれば理想的ですね。僕はサッカーに携われる限りは、選手時代の経験を生かして地域に少しでも貢献できればと思っています。
シズサカ シズサカ

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